～感謝～

タイ古式マッサージではマッサージの前に「ワイ」と言って二度合掌しながら神様と患者さんに感謝を祈ります。ワイをしてからマッサージを始めましょう、とタイ人の先生に習いました。タイではお坊さんがお寺で行うものであったため、このような決まりになったそうです。

そのことを知ってから数年経ち、鍼灸マッサージ師となった私は鍼灸整骨院の副院長をしていました。役職がついてから目に見えて患者さんが減って四苦八苦していたときのこと。スタッフにどのような指示を出したらよいか悩みました。 経営戦略的として、新規患者さんが興味を持つようさせようとスタッフに新しいチラシ作りを頼み、院の前に置きました。同時に、院内整備として、とにかく清掃をして院内を清潔にしようと提案しました。

そして、自分自身に課したことが、患者さんに治療を行う前に合掌して感謝することでした。当時を思い返しても何故それをしたのかはよく覚えていません。ガラガラの院内で、患者さんが来てくれることが有難かったのでしょう。 また、タイ人の先生に“身体を触らせてくれる相手に感謝の気持ちを持って接しなさい”という教えが、頭のどこかに残っていたのでしょうか。
“患者さんを良くしよう”という「意気込み」の以前に“来てくださってありがとう”という「感謝」が前提になければいけないのだ、という考えに至りました。
チラシと清掃と感謝によって何かが変わったのかわかりませんが、患者さんがかつてのように増えて院内に活気が戻りました。

治療効果がいまいちだな、と思った時は、感謝することからやり直すようにしています。

甲野　功

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