～鍼の話　鍉鍼～

鍼といえば「体に刺すもの」と考えがちですが、刺さない鍼治療もあるのです。その一つが鍉鍼（ていしん）です。鍉鍼はステンレス、金などの金属でできた棒状のもので、体を押したり擦ったりして使用します。形状もいくつかあり、先が細いものから太いもの、バネが入っているものなどがあります。

私が使うのはステンレス製のものとバネが入ったものを使用します。体に鍼が刺さることが怖いという患者さん、小児や若いスポーツ選手で鍼を刺すと刺激が強すぎる場合、鍼を刺すと化膿して危険が高いとされる耳たぶなどに使用します。バネが付いた鍉鍼はバネの跳ね返りを使って頭部全体を刺激するのに有効です。他にも経絡治療で使用することがよくあり、決まった経穴（いわゆるツボ）に当てて補瀉（ほしゃ）という手技を使うことがあります。

私自身元来鍼を刺されることが好きではないせいか、鍉鍼は安心して使える好きな道具であります。指ではできない刺激を、特に点での刺激を与えられる利点があります。
そして、自分の家族に対してや患者さんのお宅に行ったりする状況において、小さなお子さんが周りにいる状況で治療を行うことが多いため、通常の鍼より危険が少ない鍉鍼は重宝しています。

鍼治療は痛いそう、刺されるのが怖い、などネガティブなイメージがある方もいらっしゃいますが、刺さない鍼の技術は結構あります。鍉鍼はその一つです。鍼治療に興味があるが恐怖心がある方は、まず鍉鍼治療を受けてみてはどうでしょうか。

甲野　功

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