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~鍼の話 疼痛緩和~

日本ペインクリニック学会誌 第48回大会号
日本ペインクリニック学会誌 第48回大会号

 

 

病院(医療機関)における鍼灸はどのよう存在なのでしょうか。灸に関しては病室で火を使う、煙が出るということが問題になりやすく、あまり取り入れられていないようです。東洋医学的見地から温熱治療をする例はあるかもしれませんが、お灸そのものを使用している例は少ないと思います。そして鍼ではどうかというと、「疼痛緩和に効果がある」とよく聞きます。疼痛とは痛みのことで、平たく言えば、「鍼は痛みを取り除くことが得意」という認識があるように思えます。それは私が過去・現在とリニック病院で働いた経験において、鍼に興味がある医師の多くが、こう考えていたからです。

 

世界が鍼に注目する大きな契機は、1972年に米ニクソン大統領(当時)が訪中した際に、鍼麻酔によって意識覚醒下での開頭手術を行っているニュースがアメリカで報道されたことでした。 当時としては(現在もですが)常識を遥かに超えた出来事に大きな話題となりました。 1973年にはオピオイド受容体という物質が発見され、鍼によって生じる疼痛緩和はオピオイド受容体を介して起こっていることが分かってきました。鍼が及ぼす生理作用を実験した研究結果が発表されると、医師側も西洋医学の観点から見ることができ、鍼に対する垣根が低くなったことでしょう。 気血津液、五臓、経絡といった伝統的な東洋医学思想はとても独特であり、西洋医学と相通じる部分もありますが、その根幹は非常に理解しづらいものなのです。医師が学んできた同じ土壌で理解できることが重要です。

現在、神経系疾患・運動器疾患などWHO(世界保健機構)で認められている鍼の適応疾患は多数ありますが、病院における最も馴染みのある効果は疼痛緩和である場合が多いようです
医師が行う疼痛緩和は薬剤を使う麻酔がほとんどです。そこには少なからず副作用があります。鍼にも副作用が無いとは言えませんが、薬剤による麻酔に比べればとても小さなもの。そのため、麻酔科ペインクリニックに鍼を導入している病院が幾つかあります。

 

余談ですが、医師免許を持っていれば鍼治療を行うことができます。医師が鍼を覚えて自ら鍼治療を患者さんに行っている例もあります。

 

現在の日本では医療は西洋医学が基本であります。東洋医学を基盤とした鍼灸が病院に必要かどうかは患者さんが決めることだと思いますが、選択肢が増えることは患者さんにとって決して不利益ではないと考えています。

甲野 功

※鍼が疼痛緩和を起こす機序について、現在研究されている結果から書いてみました。興味がある方はご覧下さい。

鍼を受けると、施術された身体の特定領域の痛覚閾値が上昇することにより疼痛緩和が認められます。痛覚閾値とは、それ以上の刺激だと感じるボーダーラインのようなもの。例えば100点満点の試験で60点以上を合格、59点以下を不合格とします。そうすると、0点だろうが10点だろうが50点だろうが不合格です。逆に100点満点でも90点でも60点でも合格。60点が合格・不合格の境界線ですね。もしも合格点を80点以上に設定するならば、どうでなるでしょうか。いままで合格できた60点から79点の範囲の人は不合格になります。合格する基準が高くなったということです。痛覚閾値も同じ考えだと思ってください。60点以上の刺激で痛みを感じていた身体が、痛覚閾値が80点に上がったときに、今まで痛みを感じていた60点から79点の刺激は痛みとして認知しなくなります。鍼を受けると痛みが取れるというのは、「痛いと感じるハードルを上げたため」と言えます。
ではどのようにして痛覚閾値が上がるのでしょうか。まず痛みの分類をしてみましょう。痛みには侵害受容性疼痛、神経性疼痛、心因性疼痛があります。前の2つは痛みの機序がはっきりしていますが、最後の心因性疼痛は、身体にはっきりとした原因が無いのに出る痛み、もしくは多少の身体疾患があるがそれだけで説明できない痛み。精神的な要因による痛みといっても良いでしょう。心因性疼痛については鍼治療を受けることで気持ちがリラックスすることで痛みが和らぐと考えられます。
次に侵害受容性疼痛、神経性疼痛に対して説明します。鍼を刺すと身体の中では、CGRP(カルシトニン関連ペプチド)を含む第1次知覚神経終末が刺激されます。簡単に言えば痛みを感じる神経が鍼によってわずかに傷つけられということ。そこに軸索反射という生体反応によって、コリン作動性神経の末端が働きます。するとアセチルコリンの遊離を増大し、筋血管を拡張して筋血流が改善または増大します。(アセチルコリンというのは筋肉の血管を広げる神経に作用する物質です)。要約すると鍼を刺すと、生体の反射機能によって筋肉の血液がよく流れるということ。そうすると痛みの原因となるもの(発痛物質)が血液で流され、排除されることにより痛みが解消すると考えられているのです。
更に、鍼刺激によるポリモーダル受容器を介しての求心性の興奮は脊髄後角に入り、前側索を上行し中脳中心灰白質(脳幹)を通って視床下部に至ります。視床下部では下垂体を刺激し、β‐エンドルフィンを遊離するルートと更に上位の情動を支配する大脳辺縁系を経由するルートに分かれる。両者は最終的には1つのルートを形成して脊髄へ下行する下行性痛覚抑制系に作動させることにより、脊髄内で求心性神経を介する痛覚情報の入力を遮断する。
解説をすると、鍼を刺した刺激はポリモーダル受容器という痛みを感じる部分が反応します。痛みの情報は脊髄を通って脳に伝わり視床下部というところに到達します。そこから下垂体という部分にβ‐エンドルフィンという物質を分泌させます。その後、脳幹というところに指令を出して脊髄の部分で痛みを感じる情報をブロックする生体機能(下行性痛覚抑制系)を発動させるのです。痛みの情報は脊髄を通って脳に伝わり、脳が痛いと認知してはじめて痛みの感覚になります。よって、痛みの刺激があっても脊髄の部分で痛みの情報を止めてしまえば痛みは感じないのです。それが鍼を刺した刺激に起こるのです。鍼で生体を刺激することによって、もともと生体に備わっている鎮痛機構を活性化します。
これらの生体の機序によって、鍼を受けると痛みが取れるのです。

 

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