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~新聞記事その4 なぜトラブルは起きるのか~

平成24年8月2日付独立法人国民生活センター報道発表資料より
平成24年8月2日付独立法人国民生活センター報道発表資料より抜粋

 


あん摩マッサージ指圧師として、いわゆるマッサージ(ここでは徒手による療法一般を指す意味で使っています)でどのような原因でトラブルが起きるのか書いていきます。平成24年に国民生活センターが出した資料によれば、被害部位の1位は腰部、殿部(164件21.7%)で、続いて首(135件17.8%)、胸部・背部(125件16.5%)、大腿・下腿(96件12.7%)、腕・肩(64件8.5%)と続いています。被害内容は神経・脊髄の損傷(177件21.6%)、骨折(79件9.6%)、擦過傷・挫傷・打撲傷(78件9.5%)の順で多かったと報告されています。この資料はカイロプラティック、整体など徒手による医業類似行為全部に対する報告で新聞記事がいう“マッサージ”がどこまで含まれているかは不明です。

具体的にどうような状況で起きているか、それまでの報告された事例、他者からの話、自らの体験を踏まえて書いてみます。


①粗暴な手技によるもの
力任せに押す。骨の直上、神経が体表面に出ている部位を強く押す。強い捻りを入れる。関節を強引に曲げ伸ばしする。

②利用者の身体状況が関与
骨粗鬆症を患っている場合、軽度の力で骨折を起こしてしまいます。また病的骨折という言葉があり、骨折しやすい疾患を患っている患者さんは、健常者では何も問題のない外力でも骨折、それに伴う神経・脊髄損傷を起こす場合があります。

③利用者に関心が無い、もしくは術者の思いこみ
マッサージを受ける相手に興味がなく問診などせずに機械的にこなしていってしまう。マニュアルにおいて肘で押す、体重をかけるとあるので誰でも同じように行ってしまい、刺激に弱い人が傷めてしまう。また身体が大きい男性なら強く押さなければ効かないとグリグリ押してしまう、といった思いこみ。

①は技術不足が大きな原因です。どこを強く押したら危険かは研究により検証されています。とくに背中、腰を押したときに肋骨骨折が起きやすいです。
②は持病があるにも関わらず、その疾患の知識がないため身体を傷めてしまうことが多いです。またお年寄りになると内出血しやすくなる、皮膚が弱くなるという症状が自然に出てくるのですが、知らずに行えばトラブルになる可能性は高くなります。
③何も聞かずに黙々とマニュアル通りにマッサージをする場合や、痛いと訴えても無視して行うなど、ホスピタリティが無い場合に起きます。

こういった例は国家資格の免許を取る過程で学校で教えられ防ぐことができるはず。新聞記事で言わんとしたいことは無資格の場合このような危険があるとしているのだと思います。しかし、免許を持ったベテランでもトラブルになることがあります。実際記事では被害を与えた疑いのある店の110店が国家資格のあるとしています。私としては、その原因を以下の2つが考えられます。


④利用者の指示によって過剰に押してしまう
マッサージを受ける側が強く押せばそれだけ効果があると思い、もっと強くと指示することがあります。このとき言われたとおり強く押して後で痛くなったというケース。これは私自身2回経験していますし、国家資格持ちの知り合いも同様なパターンで起こしました。

⑤利用者に集中できない
これは院長を務めている人から2例聞きましたが、現場全体を管理しなければいけないため、患者さんがお年寄りであったにも関わらず、つい力が強くなってしまい骨折させてしまったということ。今自分がみていている患者さん意外に他のスタッフ、その患者さん、受付さんといったその場にいる全体に気を使うために集中力が散漫になってしまったことが原因。

他にも特殊な例がありますが、全体的に言えることは、『受け手のことを第一に考えること』、で未然に防げるはずです。マッサージを受ける人が良くなって欲しいと願えば、勉強するし練習します。強さが的確か聞くし、既往歴も気にします。これ以上は危険と判断すれば相手のために刺激を強くさせないようにする。今触っている相手を一番に思う。こういった根本的なことが疎かになったときにマッサージによるトラブルが起きてしまうと考えます。

甲野 功

 

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