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先日行われた東都大学学生競技ダンス選手権大会を見にいったこと、東京理科大学舞踏研究部に入部して20年経ったいったことを載せましたが、もう一つ重要な出来事がありました。それは母校が初めてフォーメーション競技において予選会を突破し、次の東部日本学生競技ダンス選手権に出場することが決まったことです。 学生競技ダンスにはスタンダード種目4種、ラテン種目4種の計8種目で争われます。さらにレギュラー戦と言われる大会では、これらにフォーメーションが追加されます。フォーメーションとは8組で同時に踊り、ラインや構成を競うもの。個人種目では複数組が同時に踊り、周囲に立つジャッジが審査を行うのに対し、フォーメーション競技では、各大学一校ずつ演技を行い、ジャッジは2階席から見下ろしながら審査を行います。なお東部ブロックではスタンダード種目のみと決められています。
このフォーメーションが伝統的に理科大は苦手でした。何年も結果が残せず、私の記憶では一度も予選会を突破したこはありません。一度もないはずです。かつて一度だけ秋の予選会でギリギリ落選したことはありましたが、それ以外は惜しいところまで行ったこともありません。個人種目で全日本優勝しても、全日本で団体3位をとっても、一部校という上位校になっても、理工戦という大会で団体優勝3連覇を果たしても、フォーメーションでは結果を残せませんでした。フォーメーションは得点が2倍になるため、団体成績を上げるためには重要なのですが、全盛期の理科大はほぼ個人種目の得点のみで強豪校に駆け上がった珍しいパターン。
私もフォーメーションメンバーで競技会に出場したことはもちろん、技術部長としてフォーメーションを作って仕切った経験があります。現役時代、ほとんどの役職を経験しましたが圧倒的にこのフォーメーション技術部長がきつかったです。技術部長が上手くできてもメンバーができなければ意味がなく、汗をかいて必死に踊るのをみてあれこれ指示を出す。だんだんメンバーがイライラしてくるのが伝わります。メンバー決めも、本人はやる気があるが技術が伴わない、もしくは出たくないが技術が十分ある、といった問題がありました。
歴代の先輩方も成功体験がないため、どうしたらフォーメーションが上達するのか分かりません。自身が野球やサッカーといった団体競技の経験がないため、どのようにまとめていいのかも。
卒部してからずっと後輩を見守ってきましたが、苦戦しかありませんでした。私が2年生の時はフォーメーション中の動画に苦笑する他大学の声が入るほどひどかった。この頃は単純にダンスレベルが低すぎました。それから選手の技術レベルが向上し、最盛期にはほとんどのメンバーをレギュラー戦で決勝に残る部員で固めてもうまくいきません。構成には、今ならば冗談としか思えないことを入れていました。夜女性を尾行するストーカー、美人パートナーを担いでジャッジに投げキッスをする、最初にメンバー全員で円陣を組んで「理科大ファイ、オー」と叫んでから演技が始まる。迷走してエンターテイメントに走るが、その分野の絶対王者千葉大学には足元にも及ばず、失笑されるだけ。反対に優秀なスタンダード選手を技術部長にしてステップを高度にしてはみたもののメンバーが踊りこなせない。そんな試行錯誤が何年も続きました。一番低迷期では、できるメンバーがそろえられずフォーメーション競技を欠場。それぐらいひどかった時期もありました。
光が見えてきたのが、数年前あるラテン選手が技術部長になって、合理化を進めたときからでした。8組だから合わせづらいので6組に減らして作る。メンバー選抜をオーディション形式にして決める。練習動画をネットにアップして各自確認させる。フォーメーションはスタンダードではないと割り切り、表現方法を変え、メンバーもラテン選手を増やしていった。歴代の技術部長が考えてはみたものの実践できなかったことを推し進めて、1位を入れてくれるジャッジが現れるくらいの質まで向上させました。
そして去年、現役生は音楽、構成、表現、どれも質の高いフォーメーションを完成させます。間延びしないスピード感のある構成で、動き続けるものでした。今年も基本的に同じ内容にすることで完成度を高めました。フロアーに立つメンバー以外にも、ラインを確認する、決まった場所で声援をする、競技中にメンバーを煽って盛り上げるといったサポートメンバーに役割を割り振り実行しました。メンバーは2年生も含めてラテン選手を多く登用し、スタンダードにこだわらない布陣。
会場で実際にみたときに、私が知る限り最高水準だと思いましたが、まさか東部戦出場を決めるとは予想できませんでした。結果を聞いたときは、耳を疑うとはこのことか、というくらい驚いてしまいました。何年もかけて失敗を繰り返しながら今回、結果を残したことに、感慨深い思いがあります。個人的には、開業してから様々な策を練って、実践して、ほとんどが結果でていない現状があるため、とても勇気づけられました。ひとりで考え、ひとりで実行して、思っているほど上手くいかない。もがく日々に大きな光をみせてくれた出来事でした。
甲野 功
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