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~料理と治療~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 スパイス各種
各種スパイス

 

 

妻は料理が得意。 先日、新大久保の専門店を回って調味料を買い込んできました。ミャンマーカレーを作るために。カレーと一緒にタンドリーチキンも作ったのですが、これがよく行くネパールのカレー屋サイノで食べたタンドリーチキンとほとんど同じ味なのです。自宅の電子レンジで作ったことに感動しました。それを伝えるとまあ、これだけスパイスがあれば、できるよ。」との答え。はっきり言って、その言葉が理解できません。スパイスあればできるという前提は何?料理ができる人には普通のことなの?

 

私は料理ができません。私の父親は、男が料理をするな、という考えでした。正確には食べに行ったり買ってきたりして料理に使う時間を別のことをして有効活用しろ、という考えなのですが。そのせいで親から料理を習ったことはほとんどありません。大人になって少し料理の基本を習い、作ることもありますが、圧倒的にセンスがありません。レシピを見てもやることなすこと慣れていないため、時間がかかるし何かが足りません。

料理ができる人の「適当に何となくやったらうまくいった」が理解できないのです。調味料をどう組み合わせ、隠し味に入れるもの、何を加えてどの作業をすればいいのか勘が働かない。最近も冷蔵庫で硬くなったご飯が勿体ないので炒飯にしてみようと試みましたが、フライパンに焦げ付いた塩辛い肉と卵とネギが混じった炒めたご飯が出来上がりました。味が悪いので塩辛さでごまかしたという苦肉の策。以前炒飯の作り方は習っていたのですが、何がどう失敗したのか。これでは父の言う通り外食する方が時間も資源も有効活用です。

 

買ってきたたくさんのスパイスを見て、自分の仕事も料理に似ていることなと思いました。
料理は材料、調味料、切り方、焼き方、炒め方、煮方、順番、盛り付け、温める、冷やす、など複数の選択肢から一品を作り上げます。私の仕事は、鍼、灸、徒手、オイル、といった道具の選択から、刺す、擦る、燃やし切る、温める、押す、揉む、叩く、撫でる、動かす、などの動作の選択、刺激量の選択、どの部位をどれくらいの時間をかけるかの時間の選択、東洋医学(もっというと経絡か中医か)、西洋医学の考え方の選択、筋、神経、靭帯、腱、関節、骨などアプローチの選択、といった多くのものを選んで時間内で治療を完成させます。できないですが料理と通じるものがあるのではないでしょうか

 

患者さんの希望で治療コースが決まりますが、細かいことは任されるわけです。鍼をお願いしますと言われた場合、何ミリの太さの鍼を、何本、どの経穴(ツボ)に、どの方向に、どれくらいの深さ入れるのか、までは指示されません(するのは専門学校の試験官くらい)。更に、すぐに抜くのか、刺したままにするのか(置鍼)、鍼に電気を通すのか(パルス)もこちらで決めます。揉む動作一つとっても、筋肉に対してアプローチするのか、経絡(気の流れ)を考慮するのか、リンパを意識するのか、補瀉(エネルギーを入れると余計なものを抜く)まで考えるのか、で色々です。相手の状況によって調整していくのですが、いまいち説明できない部分がありながら行うことが多々あります。「適当に何となくやったら効果が出た」ということがよくあります。料理が得意な人と同じでした。

 

料理はできませんが、料理が上手な人には、自分の場合と同じような勘があるように思います。(本当はいつか料理ができるようになりたいです)

 

甲野 功

 

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