～成功とは～

去年のことだったと思います。”大富豪が教える成功の秘密”のようなテーマの本を読みました。開業して今よりもずっと収入が少なかったので、大富豪と言わないまでももっと収入が欲しいと願い、本屋で手に取りました。その本は世界の大富豪に分類される人々と会話をして、彼らの成功の秘訣を聞いたある日本人が書いた本でした。この本を読んでとても感銘を受けたことが成功の定義についてです。

「君に５億ドルあげよう。そのかわり一生独房に入っていなければならない。君は受け取るかね？」
成功は多額のお金を得ることだと考えがちであるが、莫大なお金を手にしても
・自由になる時間がない
・誰とも話せない
・狭い場所に閉じ込められるから身体を壊していくだろう
それは本当の成功なのか、と問うわけです。

本当に成功したものは、自由なお金と、健康な体と、素敵な家族友人に、恵まれていて、自由に過ごせる時間がある状態なのだと。そして４つの自由の中で最も誰にでも平等であり、消費した後で買い足すことのできない時間を可能な限りお金で買うのだと。プライベートジェットを持つのは見栄ではなく、移動時間をいかに短縮して快適なものにするか考えてのこと。また、お金があることが大切なのではなく、自由になるお金があることが大切である。どれだけ高給取りでも大部分を借金や浪費といった活きたことに使えなければならない。健康でなければ何もできない。億万長者であるがベッドから起き上がれないのであれば無意味である。お金も時間も自由になったとしても、分かり合える友人や信頼できる家族がいなければ成功とは言わない。そういった内容でした。

この本を読んで感じたことは、成功を「幸せ」と言い換えてもいいだろうということ。何がその人にとって幸せなのか。独立開業して頭の中で大きく占めるのは、収入が安定するのか、暮らしていけるくらい稼げるのか、といったお金に関することでした。しかし、成功することはお金だけではないことを知り、何が自分にとって幸せなのか改めて考えます。大学を卒業して就職した会社員当時、勤務先は東証一部上場企業でしたから、もちろん給料も保証も安定していました。昨今のブラック企業の話を聞けば何とも恵まれた職場だったと思います。しかし、そこで働くのは苦痛であり、最終的に麻疹に罹り９日間の入院。お金があっても心と体の健康はありませんでした。
鍼灸整骨院で働いていたときは、修業の場でもあり同僚と切磋琢磨し自分が成長できましたし、やりがいもありました。しかし毎日拘束時間が長く、あれだけ好きだったダンスからどんどん遠ざかり体が衰えていくことへの悔しさがありました。
クリニックに入ったときは給料もそこそこ、保険もある、定時に帰宅できる、有休があるし家から近い、そんな一見素晴らしい環境でしたが自分を成長させることは少なく、教員養成科進学を決意します。そしてそのクリニックは不祥事を起こし閉鎖することになります。

常に何かが足りませんでした、圧倒的に。

現在二人の子供と両親と妻と暮らし、家族と過ごす時間がしっかり取れています。業界内の友人や気になる人に会いに行ったり、イベントに足を運んだりする時間があります。子供の世話があるため、夜更かしはしないし早起き。健康に気を付ける心の余裕があります。残るは自由なお金を得れば本当の成功（＝幸せ）になると気づいたのです。大きな借金をして素晴らしい内装、良い立地、従業員を雇うなどすれば、もっと売上はあったかもしれません。しかし家族を犠牲にし、健康を損ない、売り上げ分はどんどんローンと人件費に消えていく環境があったかもしれません。それでも良かった？と自問自答したときに答えははっきりＮｏでした。家族と自分を大切にしながら、ゆっくりと稼げるようになることが成功＝幸せへの道だと考えるようになりました。悩んで悩んで苦しかった時期に、この本を読んですごく楽になりました。

甲野　功

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