開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
以前ブログで紹介した森岡毅氏は、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)が業績をV字回復するための立役者です。森岡氏の考えや手法が私にとって腑に落ちるもので、私には珍しく著書を揃えたことを前に書きました。
森岡氏がUSJを復活させるために実行したことの大きな柱が、ブランド定義を変えたことがあります。
それまでのUSJは「映画だけの専門店」でした。それを「最高の感動を届けるブランドを世界中から集めたセレクトショップ」
に変えたのです。
それまでのUSJは、映画にこだわり過ぎていて来場者層が狭まっていたことが業績不振と考え、調査をしました。すると、それほど映画の市場規模が無いことやテーマパークのメインターゲットになる子連れファミリー層が弱いことなどが判明しました。
もともと首都圏よりも商圏規模が小さい関西にあるUSJでは、来場者層を広げなければいけないと判断。結果、映画コンテンツにこだわらず、厳選した上質のエンターテイメントコンテンツを披露するテーマパークに舵を切ったのでした。
この方針転換に、当初はUSJ内部から大反対を受けたそうです。
まず、映画と言うコンセプトが無くなっては東京ディズニーリゾート(TDR)と差別化ができない、という声。さらに何でも手を出すことで方向性がぶれて結局何がしたいのか分からなくなるのではないか、という声も。
差別化というのは経営戦略の常識といえるくらい基本的なことですが、森岡氏は東京と大阪には3万という交通費の壁があり競合するものではないし、映画コンテンツでは老若男女取り込めるディズニーコンテンツに比べてターゲット層が小さ過ぎるとしました。また映画にこだわる、いや囚われることを止めて、これまで通り映画も大切にしながらも集客が見込めるコンテンツを取り入れていくべきだとしました。
また気付いたことに、現場スタッフの「方向性を間違えたこだわり」があったそうです。海賊船を作ったのですが、あまりにリアルに作り過ぎてお客さんにボロボロでみずぼらしいと不評だったとのこと。高度な職人技術が自己満足に行ってしまい、顧客満足に向いていない例だと指摘するわけです。
もともととても素晴らしい技術を有した職人がいるわけですから、来場されるお客さんが楽しめる方向にすれば大きな武器になります。そのために、ワンピース、きゃりーぱみゅぱみゅ、進撃の巨人、モンスターハンター、サンリオキャラクターといった人気のあるコンテンツを、集客に結び付くか事前調査した上で、選択しました。そして、その世界観を崩さずにUSJのイベントやアトラクションへ職人・スタッフらの手で作り上げていったとのことです。
例えどれだけ素晴らしいコンテンツを持ってきても現場で作品にしなければいけません。作品化できるだけの能力を持っていたからこその、映画以外のブランド導入だったわけです。
従来の映画に関してはハリーポッターという世界的メガヒット作のライセンスを取り、新しいアトラクションを作り上げました。創業以来の映画を捨てたのではなく、映画を活かしつつ更なる選択肢を提示したということになります。
この「セレクトショップ」という考えが、とても納得できて私と同じ方向性であり、改めて治療院のコンセプトを考えるきっかけになりました。
周囲には鍼灸優位主義者というか、鍼灸の方が徒手療法(あん摩、指圧、マッサージ、他民間療法を含める)よりも上と考える人が少なくありません。母校でも鍼灸を優位に考えているように感じますから、卒業生が考えるのは当然だと思います。
しかし、現在の我が国において鍼灸の受診率が4%と言われています。最新のデータでは更に下がっているという話もあります。街を歩いて100人に声を掛けて質問したら、4人くらいしか鍼灸治療を受けたことがない、という計算。
対して町中に溢れたマッサージ店、整骨院、整体院、エステ、リラクゼーション店、などなど国家資格、民間資格を問わず徒手での施術をする店舗の数をみれば、世間から需要があるのは徒手療法の領域です。
鍼灸専門学校に通って資格を取る過程で周囲には鍼灸を受けたことがあるひと、鍼灸に興味があるひとばかりと接するので気が付かなくなりますが、世間はそこまで鍼灸治療を受けたことがありません。開業するにあたって、鍼灸院として鍼灸にこだわるのは素晴らしいことですが、4%の層を取り合うのはいかがなものか、と思います。
確かに、鍼灸好きな患者は熱狂的な信者とも言えるくらいのひとがいますから、一度ファンになればずっと来院してくださり安定した経営をもたらすことがあります。ですが、そこまで安定するまで経営が持つかは話が別でしょう。
あじさい鍼灸マッサージ治療院院長はコースが10種もあり、異例の選択肢の多さです。業界一般的には、何がしたいのかわからない、何でもできるは何もできないと同じ、という評価となります。
開業する前から時間をかけて考えていたことですが、いざこの方法で始めてみたものの悩み不安になることがありました。もっとやることを減らした方が分かりやすいのでは、社交ダンス専門と謳った方がいいのでは、という葛藤がありました。
それが、森岡氏の著書を読み、USJが「最高の感動を届けるブランドを世界中から集めたセレクトショップ」に変えたことで大盛況になったことを知り、私も「患者さんのためになる治療技術を選択したセレクトショップ」を目指すべきだと考えるようになりました。
たくさんのコースはどれも、実際に臨床で何例も行い、対価を頂いた上で磨いてきた技術です。学校で習ったからはい始めましたというものはありません。
タイ古式やリフレクソロジー、整体などは鍼灸よりも以前からやってきたものです。社交ダンスは20年してきました。母親の肩もみから数えれば30年以上身体を揉んできました。
何でもするのではなく、私自身が納得した技術で患者さんに勧められる「セレクトしたもの」を提供しているのだと。堂々と商品として店頭に出すべきだと。世間の流行だからといって技術が追いつかないものをメニューにしてはいけません。USJに技術があったからこそ様々なブランドをコンテンツに昇華できたのと一緒で、まず自信を持って提供できるものをセレクトする。
反対に「セレクトしなかったもの」も多数あります。例えば、吸い玉、刺絡、醒脳開竅法、皮内鍼、くるみ灸、などです。
学校で習いそれなりに練習しましたが、患者さんに提供するほどの質を確保できない、自分自身があまり好きではない、という理由で導入していません。うちは何でもかんでもやっています、というわけではないのです。ただし、これらの技術、手法も状況や希望によって導入することが今後あるかもしれませんが。
「セレクトショップ」の考えを導入して、これからも患者さんのためになる技術、手法を私自身が選んで習得して提供していこうと、考えを改めました。
将来はもっとコースが増えているかもしれません。
紫陽花の花言葉は「移り気」。従来の技術を深めながらも、来ていただいている患者さんのためになる新しいものを、責任を持って選んで提供していこうと思います。
甲野 功
コメントをお書きください