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~584~

先月末に東京理科大学舞踏研究部50周年記念パーティーが開催されました。その際、同期および後輩のプロダンサーのデモンストレーションを見て、改めて思いました。デモをした者の多くが、現役の4年生当時に背番号580番や584番をつけていたなと。

学生競技ダンスでは上級生の大会(主に2年生以上)では大学が持っているゼッケンを使用して大会に臨みます。
指定番号が各大学に割り振られており、各自でその背番号のゼッケンを作成します。東部ブロックでは、東京理科大学は580~589番、500~509番が割り当てられ、全日本ブロックになると120~129番です。
通し番号と言われる、エントリー名簿順に割り当てられるものとは違い、大学内で自由に背番号と選手を組み合わせることができます。
東京理科大学で言えば、出場選手が10名いたら、A選手が580番、B選手が581番、というようになります。これは学生競技ダンス連盟(学連)独自のシステムであり、アマチュアやプロフェッショナルの競技会にはありません。

更に、背番号の1桁にも意味があります。東部ブロックの大体の(暗黙の)共通ルールとして、主将が0番、モダン(スタンダード)部門のエースが4番、をつけるということ。

 

東京理科大でも、私が入部した時から現在までこの慣習が続いており、その年の主将を担う者が580番の背番号をつけます。また、そのときのモダンエースが584番をつけて競技会に出ます。
最上級生である4年生が出ない大会ではこの限りではありませんが、4年生が出場する大会(レギュラー戦)において、主将以外の選手が580番をつけて競技会に出ることは、まずありえません。ラテン部門の選手がレギュラー戦で584番をつけることもまず無いのです。

 

なぜ主将が0番をつけるのかの理由は定かではありませんが、先輩に聞いた一説には背番号順に開会式で並ぶので先頭に立つのは主将であれ、という意味があるとのこと。
明確な理由は分かりませんが、共通認識となるため、580番をつけて競技会に出ることは名誉であり、同時にプレッシャーにもなります。


私が1年生の頃、OBの先輩に「580をつけて出る以上、大したことのない成績では許されない」という声を聞きました。そして入部当時の主将は全部員の中で一番強く、最後に日本一になりました。
580番をつけるということは、東京理科大学の主将であり、それなりの成績が出せる、という認識を下級生にもOBOG達にも、更には他大学からもされるということです。

 

580番と並び、モダンエースの584番も特別な背番号になります。


580番はモダンでもラテンでも主将となった選手がつけますが、584はモダン限定の番号。それ故にモダン専攻になった選手にのみ、584番への思い入れが出てきます。ラテン専攻にはあまりピンとこないことかもしれませんが。


50周年記念パーティーでデモンストレーションをしてくれたプロダンサーでモダン選手の半分は現役当時(大学4年次)に584番をつけていました。そして全員が全日本ファイナリストでした。まさに当時のエースばかり。

 

画像には大学卒部後プロになった後輩が、学生の前でデモンストレーションをした際に、企画として学生と同じ衣装で踊りを披露したものですが、選択したゼッケンは背番号584。卒業して10年以上経過しても、やはり584番をつけることが当然というものでした。当時を知っている観ている側の私からしても。

 

私もモダン専攻の選手でしたから584番には強い憧れがありました

 

東京理科大学には(他の大学でも共通しているところもありました)もう一つローカルルールがあり、連盟委員は589番をつける、というものです。
連盟委員とは各大学から大学間の会議に出て大会運営をするために働く役職で、連盟委員がいなければ競技会を開催することは不可能なのです。各大学を一つの国とするならば、連盟委員とは外交官であり法の門番であるといったところでしょうか。
私は連盟委員を2年生からしていたので2年生から3年生の終わりまで589番をずっとつけていました。それも一つ連盟委員としての誇りでもありました。

 

4年生になるときに、連盟委員の役職が終わり589番も後輩に譲ることになりました。最上級生になったら584番をつける選択があったのですが、後輩に譲って、当時の伝統であった副主将がつける587番をつけることにしました。その頃は副主将(Ⅰ部生主将)が587番をつけることが慣習であり、副主将の役職とともに背番号も1つ上の先代から引き継いだ形でした。

 

最上級生の権限で584番をつけても良かったのですが、4番をつける自信がありませんでした。3年生の夏にパートナーが変わり、それまでカップルで積み重ねてきたものが一度リセットされました。パートナーと解消した大会で、ある後輩が正カップルとして組み、それから快進撃を続けます。
彼らを差し置いてモダンエースを担う自信がなく、何より584番をつけるプレッシャーに勝てないと、4年生でつけることから逃げました。


そのことを後悔しないくらい、584番というものは大きな存在で、東京理科大学で一番モダンが強い選手がつけるできだと当時も考えていました。

 

ゼッケンを長く使っていれば古くなり、そのうち作り替えます。ですが、思い入れというのは変わりません。
各時代の選手が伝統と誇りを受け継ぎ、584番をつけていきます。事情を知らなければただの選手を識別する番号表記だけですが、当事者たちには深い意味合いがあります。

 

そんな意味合いをもてる何かを私自身生み出したいと願っています

 

甲野 功