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以前に~歩くということ~というブログを書きましたが、今回は歩行そのものについて書いてみたいと思います。
股関節疾患の患者さんのリハビリをする機会に恵まれています。その際に歩く姿を見て、総合的にどれだけ回復しているのかを判断します。歩容(gait pattern)という言葉があり、人の歩いているときの身体運動の様子を指します。ちなみに、歩様ですと競馬業界で使用されます。患者さんの歩く状態や様子、歩容を観察することは臨床面でとても重要です。歩き方には様々な情報が隠れており、その人の個性が出ます。人工知能は行う人認識システムには、歩行パターンで区別するものもあるそうです。
臨床的には異常歩行と言われる、疾患特有の歩行があり、ごく基本のスクリーニングに使用されます。例えば、硬性墜下性歩行、逃避性歩行、鶏歩、ラクダ歩行、トレンデレンブルグ歩行、大殿筋歩行、分回し歩行、はさみ脚歩行、突進歩行、踵打ち歩行、酩酊歩行など。細かくは触れませんが、疾患により正常な歩行動作ができないために代償して行う歩行になります。更にはモンローウォークという異常歩行ではないのですがメンタル面の影響でする(起きる)歩行もあります。
私は大学から始めた競技ダンス(社交ダンス)で、散々歩く練習をしました。ウォーク練というものです。ただ歩くといっても奥が深く、歩くことの延長にダンスがあるのだ、と先輩に習いました。
未だに歩くという動作については研究しています。
そういった関係で、リハビリテーション学で習う前から「歩行」動作に興味があり、学術的に勉強すると、より理解が深まりました。患者さんの歩き方をすごく観察しますし、ダンスの師匠に言われた「ジャッジは歩き方からその選手のレベルが分かる」という言葉を大切にし、ダンサーの歩き方にも注力するようにしています。
治療の実務面で言いますと、歩容という歩行動作全体を見るのが大事なのですが、定量的に判断する指標も必要になります。以前に比べて何がどれくらい変わったのか?ということを、何となく改善されました、ではなく、ここがこれくらい変わりました、と説明しなければいけません。具体的な歩行のパラメーターとなるものの一部が以下になります。
●一歩(step):一側下肢の踵が接地してもう一側下肢の踵が接地するまで。
●重複歩(stride):踵が接地して、同側の踵がまた接地するまで。2歩にあたる。
●歩行周期(walking cycle):重複歩の一連の動作。
●歩隔(steride width):歩行時の左右の足の間隔。
●歩幅(step length):一歩の幅。
●歩調(歩行率)(cadence):単位時間当たりの歩数。
歩行に障害があるならば、当然一歩の距離が出ないので歩幅が狭くなります。バランスが悪ければ左右に足を広げて歩くので歩隔が広くなります。歩行スピードが遅いというのは歩調(歩行率)の数字が下がるということです。これらを指標として、どれくらい歩行が良くなったか数値化することができます。そうすると、患者さんも変化が目に見えて分かるのでリハビリをする意欲が上がります。自身の臨床経験ではここまで細かく図りませんが、理学療法士では大切な指標になることでしょう。
他にも足角というつま先の向きを見ることがあります。つま先が外側を向いて歩くことは色々意味があります。特に競技ダンスにおいてはとても重要なことで、つま先の向きは個人的に気にしてしまいますね。私の場合、最初は健常者がダンスをする上でよりパフォーマンスを上げるために意識したこと、それから疾患を持った患者さんのリハビリと回復過程の指標として観ること。目的は変われど歩行動作を大切にすることは不変です。
次回の~立脚相と遊脚相~でももう少し歩行について書いてみたいと思います。
甲野 功
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