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先日、理学療法士さんが主催する、骨盤と股関節に関するセミナー、に参加してきました。これは産後の女性のための骨盤学セミナーのアドバンス講座といったもので、講師も参加者も女性ばかり。会場にいた男性は私を含めて2名だけ。女性にとって骨盤がどれだけ重要なものか、改めて気付きがありました。
これまでの経験上、骨盤矯正というものに興味をひく女性が多いです。男性よりもはるかに女性の方が多く、問い合わせで骨盤矯正をしていますか、ということがあります。特に産後の骨盤矯正は皆さん、大きな関心があります。
私が骨盤矯正を習ったのはもう10年以上前のことで、民間資格の整体学校でした。それから、鍼灸マッサージの専門学校で座学を学び、就職した鍼灸整骨院で実践を積み、柔道整復師の専門学校でより詳しく解剖学を学びました。更には鍼灸マッサージ教員養成科での授業でも学ぶ機会がありました。足掛け13年くらい経過しました。
その間、世間一般の知名度は上がる一方で、骨盤矯正は若い世代の女性には一般用語になっていると言えるでしょう。ですが、この骨盤矯正については賛否があります。業界内でも全くの無意味、イメージ先行に過ぎないといった声もあるのです。
ここで骨盤矯正についての意見と私の見解を紹介しようと思います。
まず、骨盤とは何か。
人体の腰の部分にある、骨がベルトのように一周している部位。大腿骨と股関節を形成し、骨盤内には各種臓器が入っています。
骨盤を構成している骨は左右の寛骨、仙骨、尾骨です。
寛骨は左右一つずつあります。生まれたときは上部の腸骨、前下部の恥骨、後下部の坐骨の3つに分かれていますが、成長とともに癒合して一つの寛骨になります。
仙骨は身体の後面で左右の寛骨を繋いでいる逆三角形の骨でお尻の中央に位置します。
尾骨は仙骨の下にある小さな骨で動物の尻尾に相当します。
寛骨と仙骨は互いに耳状面というところで合わさり関節を作っています。寛骨の耳状面は腸骨にあるので、寛骨と仙骨の関節を仙腸関節と呼びます。形状としては半関節に分類されます。この仙腸関節がとても重要でここの部分を研究する学会があるほどです。
骨盤矯正とは、基本的に、この仙腸関節がずれてしまうのを戻す操作となります。仙腸関節炎や仙腸関節痛というものがあり、仙腸関節に負担がかかると腰痛になることがあります。ですから、仙腸関節を整えることは一見、理にかなっているように思われます。
先に、否定派の意見を紹介しましょう。
・仙腸関節は強い靭帯で固定されていて動かない。
・関節を動かす筋肉は存在しない。
・実際に解剖したが動くことは無かった。
→だから仙腸関節に動きはなく、「骨盤が歪む」ということはあり得ない。矯正するということ自体がおかしい。なお長期間負荷がかかれば(股関節疾患などで片下肢だけに体重がかかるなど)骨盤が歪むことはあるかもしれないが、そうだとしたら徒手で正せるようなものではない。
というのが、私が聞いた意見です。柔道整復師専門学校でははっきりと仙腸関節は動かない、と習いました。
続いて肯定派の意見です。
・解剖した骨盤は腐敗しないように固定処理されているので固まっている。
・解剖に充てられるご献体のほとんどは高齢者であるので、加齢によって骨盤に動きがなくなっている例が多いのでは。
・MRIなどの画像検査機の発達により、仙腸関節の動きが確認できるようなってきている。
・臨床現場では、骨盤操作をすることで効果を他覚的にも自覚的にも認められる。
というものです。
否定は解剖学者の意見が多かったようです。
解剖学とは字のごとく人体を解剖してその機能を観察研究します。人体には機能に応じた形状が見受けらるものですが、仙腸関節を動かすような形状は認められないので動きがあるとは考えられない、ということらしいです。ただ近年、能動的に動きはしないが僅かに動きがあると認めらてきているようです。
賛成は臨床現場の人間からの意見が多いようです。
トレーナーや治療にあたる臨床に立つ人間は、解剖学を基本にしますが、運動学も重視します。生きた肉体がどのような動きをするかを見ないといけません。そうなると上前腸骨棘や上後腸骨棘といった指標となる部位を探って動きを観察すると、確かに動きがあるようだと思うわけです。
ただし、本当に徒手で仙腸関節を動かせているのかは別問題です。関節がパキっと鳴る音がすると分かりやすいしすっきりしますが、仙腸関節が動くと考える以上、すぐにまた変わってしまって矯正できないのでは、とも言えるのです。
同業者でも意見が分かれますので、絶対的な結論はまだ出ていないように感じます。
ただ効果があるかどうかで考えれば、ありだと私は考えています。
自らが社交ダンスをするので、骨盤矯正の前後で股関節の動きや足底の体重のかかり方が違うことを実感します。
何でもかんでも骨盤矯正すれば腰痛が治るだとか、産後は絶対に必要とは言いませんが、状況によって役立つものだと解釈しています。
骨盤矯正というものを実際に臨床で使いながらも、どこかで「本当にいいのか?」という問い、警戒心、研究心を持ち続けないといけないでしょう。
信じていたことが実は全くの嘘でした、ということはこの世界よくありますから。
甲野 功
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