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少し前の国会中継で行われた質問とそれに対する回答です。答弁のごく一部のやり取りですが、個人的に考えさせられる内容でした。紹介します。
◆室井邦彦、石井苗子(日本維新の会)【国会中継 参議院 予算委員会】平成29年3月15日◆
30分くらいからのところです。
Q.石井苗子議員の質問
『
~略~
柔道整復師に施術を受けた患者さんなのですが、半年くらい過ぎたあと健康保険組合から調査票を受けることがありまして、何月何日にどこの部分の施術を受けましたか?と。
記録が無いので忘れてしまってほおっておきますと、また、期間内に回答しないと全額負担になります、とか質問に答えないと会社の人事に通知しますと、いような連絡がきてとまどうケースがあると。
こうしたことは、施術をした、した側に聞けばいいのに、どうしてこっちにくるのだという、何か不正でも巻き込まれているじゃないか、という不安があるそうなのですが、こうした行き過ぎた患者調査としてはどうして起こるのでしょうか。厚生労働省としてどんな改善策があるのかお教えください。』
A.厚生労働省鈴木保険局長の回答
『
~略~
中には疑義となる保険請求もありますことから患者調査を行っております。
~略~
患者調査にあたっては患者の方々にご負担かけないように行うということが非常に重要だというように思っておりまして、もしご指摘の事例が事実であれば、行き過ぎた内容であるように思っております。指導すべきであるというように考えています。
今後とも引き続き、健康保険組合が実施する患者調査が適切なものになるように指導していきたいと思っております。』
これは整骨院(接骨院)で保険を使った施術を受けると、健康保険組合(保険者)から患者さん(被保険者)へ送られる患者調査について話しています。
回答書、アンケートなどとも呼ばれますが、整骨院側から保険請求を受けた際に、適正な施術を受けたかを確認するために、保険組合が行うものです。なお、絶対にするとは限りません。内容な石井議員の質問にあるとおり、何月何日にどこの部分を負傷して施術を受けたか答えさせるものです。問題は、患者側は整骨院にかかったのが数か月以上前でいちいち正確に覚えていないこと。答えないと脅迫めいた文言で追加調査が来る。そういうことはカルテを残しているであろう整骨院側に聞けばいいわけで、なぜ患者側に求めるのか、という苦情。このことについて質問しているわけです。対する厚生労働省側の回答は、平たく言えば善処しますというものです。
このやり取りは、2つの意味で重要なことです。
まず一つ目は、保険請求業務に関することが国会で話題にあがったこと。
厚生労働省担当者は答弁ではっきりと言及しませんでしたが、保険請求に対して不正請求・不正受給の事実があります。そのために必要な調査を行っているわけです。不正請求の方法としては来院していない日も請求する、施術していない部位まで請求する、という架空請求・水増し請求があります。そのことを調べるために患者さんの意見と整骨院側の請求に整合性があるか確認を取ります。そもそも、不正請求を疑っているわけですから、患者側に調査がいくのは当然であります。整骨院で保険対象になるのは急性外傷(骨折、脱臼、打撲、捻挫、挫傷、いわゆるケガ)ですから、どこを負傷したかを明確にする必要があります。数か月前の話でもケガをしたならばそのことは忘れないことが多いでしょう。それがケガをしていない部位を施術して請求しているとするならば水増し請求ですから、保険対象にはなりません。肩こりや慢性腰痛などは保険対象外ですから、きちんと外傷の処置をしているかを確認します。不正請求の多くは外傷以外の症状を、あたかも捻挫をしたかのように請求することがあるため、このような調査を行います。
その際に会社のデスクワークで肩が凝っただとか、仕事がハードで腰が痛くなった、といった理由によるものですと、業務による外傷ということで労災適応になる可能性があります。そうなると企業側はきちんと対処しなければなりませんから、会社が原因で整骨院に行き保険適応になることは注意しなけばいけないのです。そういった意味で調査に参加しないと人事に報告するぞ、という警告が出てくるのです。保険組合が企業の場合は、保険負担をするのは企業側ですので見過ごすことができません。
このように保険組合側が不正請求を防止策の意味も含めて患者調査を行っている実態が、国会で話題にあがる。業界関係者としては大きな出来事です。「行き過ぎた調査」が問題となるならば、なぜそのようなことをしなければいけないないのか注目されますから。
もう一つの意味は、患者側にも責任を強いることがあります。保険適応で施術を受けるならば、その自覚を持たなければいけない、そう取れるのではないでしょうか。窓口3割負担だった場合は残りの7割分は企業なり自治体なり保険者が支払います。それは不特定多数の人間から集めた公費です。困ったときに個人の負担を軽減するために、皆さんから集めたれたお金です。企業に属する人は、ほとんどが給料から天引きされたお金です。その公費を使って施術を受けたのですから、調査に協力しなければならない。できないならのこりの保険負担分も実費で払いなさいと警告する。このことが国会で話題になったのは、使う側の意識も必要だと考えさせるきっかけになるかもしれません。
保険という公費を扱う側も、使用する側も、その意味を考えるべきだと私は思います。
何か不測の事態が起きたときに個人負担を軽減させるシステムとしての保険です。簡単に売り上げを上げるためにあるわけではありません。個人が得するためにあるわけでもありません。大きな組織になると額が大きくなるので実感がわきませんが、保険負担分はみんなのお金です。例えば中学校のクラスでクラス費として100円を集めて何か教材を買おうとしたとします。そのとき誰かがクラス費を使って私物を買っていたら、他の生徒はどう思うでしょうか。クラス費を払う気が失せますよね。クラスメイト全員が出したお金を誰かの利益のために使われてしまったわけですから。税金、年金、保険、会社の積立金など、公費を扱う場合は性善説でなければいけません。誰かが不正をするに決まっていると性悪説でするならば成り立たないのです。整骨院の場合でも、全額実費で施術を受けるならば患者調査は行われません。全て自己責任の範囲です。整骨院側は全額実費(自由診療)で好きなように値段設定をして保険請求をしなければ、調査を受けることがありません。
保険に限らず、公費を扱う・使用する以上、最低限意識することがあるはず。私は扱う側にいましたから、このようなことに感度が高くなっています。使用する患者側も公費を使っている意識があるべきではないでしょうか。
甲野 功
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