開院時間
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前回ブログ~吸玉の話 概要~に続いて、今回も吸玉について書きます。
今回は吸玉の大きな特徴でありデメリットとも言える溢血斑(いっけつはん)についてです。
吸玉をすると皮膚に内出血のような跡が残ります。日本吸玉協会ではこれを溢血斑としています。吸玉をすることによって毛細血管が破綻し小出血が起きます。その結果、玉の大きさの跡が残ります。これが溢血斑というわけです。
施術後、皮膚に跡が残る。
これは大きな問題であり、そして利点でもあります。
まず美容面ではかなりマイナスとなります。
吸玉の吸引力、留置時間、患者さんの体調にもよりますが、長くて10日くらい皮膚に跡が残りますから、夏場のプールや肌を出すときには問題になることもあります。
どちらかというと、受けた当人よりも事情を知らない周囲の人が気にしてしまうようです。私も腰に吸玉をするとかなり色が濃く残るので、授業で受けた後は家族に驚かれます。本人は目に入らないのですし、これも勉強のうちと割り切っていますが、家族にはちょっと気持ち悪がられます。
開業時に導入しなかった一番の理由がここにあります。
効果があれば見てくれは気にしなかった時代と異なり、患者さんに外見の負担をかける治療方法は主流から外れていきます。かつては弘法の灸と言われ、江戸時代には普通だったとされる打膿灸も、今ではまず見かけられなくなりました。開業する際にトラブルを未然に防ぐ意味で吸玉には手を出しませんでした。
ただし、吸玉による溢血斑は一概に欠点とは言えず長所でもあるのです。
まず見た目で体調が分かるということ。
一般的に調子が悪い部分には色の濃い黒い溢血斑ができます。これは老廃物をたくさん含んだ血液があるからとされています。
血液は酸素、栄養素、熱など大切なものを全身に運び(動脈血)、二酸化炭素、老廃物などの不要なものも回収します(静脈血)。身体に不調があるところは大体、静脈血が滞っており、静脈血は黒っぽい色をしているので吸玉の跡も色が濃くなります。
画像は、腰が悪いモデルにしたものです。デモ撮影なので1分ほどの留置でこれだけ色が付きます。10分ほど置くともっと濃い色になります。そして部位によって色の濃さが違うので部分部分の調子が視覚で分かるのです。
このことは、視覚という客観的データなので患者さんとも共有しやすくなります。脈診や腹診などは術者の主観によるものですから患者さんの実感と合わないこともあります。見た目でわかりやすい指標を持てるのが吸玉の特長と言えます。
もう一つ良い点は、上記と似ていることですが、血(けつ)の動きを可視化できることです。
どういうことかと言いますと、東洋医学の考えでは気血水(きけつすい)といって、気(き)と血(けつ)と水(すい)の状態をみて、それらの流れを整えることで治療するという考えがあります。
気(き)とは経絡に代表される、身体機能をつかさどるエネルギーの様なもの。一般の方には一番分かりづらいものです。
血(けつ)とはそのまま血液と考えてよいもの。
水(すい)とは体内にある正常な体液という捉え方で具体的にはリンパ液、間質液などを指します。なお血液は血(けつ)として扱うので別にしています。
医師が行うメスなどで外科的に体を切る治療を観血療法と呼び、医師免許がない人間には許されていません。鍼師と言えど、現代の日本では意図的に血を出す方法は原則禁止です。
※刺絡という方法は一応除外されていますが。
ですから溢血斑で血液の状態を目で見ることができるのは東洋医学をするものにとっては助かります。東洋医学では血の滞る状態を血瘀(けつお)といい、その滞った血を瘀血(おけつ)と呼びます。瘀血を目で見て分かる状況にできるのが吸玉の利点といます。
なお、瘀血は体外に出した方が効果が高いため、皮膚に傷をつけて吸玉で瘀血を吸いだす方法があります。瀉血(しゃけつ)と言われます。
かつては鍼灸師や一般の資格を持たない人でも民間療法として行っていたようです。私も以前、映画のシーンで、近所のおばちゃんが剃刀で皮膚を切った上で吸玉をして血を抜くシーンを見たことがあります。機械式のポンプで持続的に吸引して血をどんどん出していくやり方もあります。
これらは厳密には観血療法として医療法に抵触するのですが、伝統医療ということで見逃されている部分があります。個人的な見解としては、血液が出る以上、感染症のリスクが上がりますから、それなりの整った施設でなければやるべきではないと考えています。大量の体液がついたもの(ガーゼ類)は医療廃棄物になりますから専門業者が処分する義務がありますし、使用した器具も滅菌しなければいけませんので。
吸玉の長所であり短所である(と考えられる)溢血斑。
考え方しだいでどちらにも捉えることができます。余談ですが同級生は吸玉後の溢血斑を早く消失させることをテーマに研究をしていました。吸玉をするときは跡が残ることを念頭に入れてもらいたいです。
次回はその跡をつけない方法について書きます。
※吸玉療法を受けてみたい方はこちらをご覧ください。オプションコースのみとなっております。
甲野 功
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