開院時間

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~やはりここが原点だった~

連続で今年の夏合宿について書いています。

 

8月12日と13日に母校の東京理科大学舞踏研究部夏合宿に参加してきました。
練習の合間の時間、足が痛い、腰が痛い、肩が痛いなど訴える1年生、2年生に鍼、マッサージ、ストレッチ、テーピングをしているときでした。


こういう技術はどこで習うのですか?


と1年生に聞かれました。


長くこの活動をしていますが、このような質問は初めてでした。今までこの仕事に興味を持った現役生はほとんどいませんし、どうしたら技術を習得できるかと問われたことはありません。
質問に、

「専門学校に通って国家資格を取るのだよ」

と答えると、

「そうですか、こういうのできると良いですよね」

という反応。

特に深い意味は無かったと思いますが、春に大学に入学した1年生が興味を持つことがちょっとした驚きでした。

 

更に合宿から帰る日の午後、別の後輩から

 

どこでテーピングなどの技術は勉強できますか?

 

と聞かれました。


一度ならずも二度も同じような質問をされ、偶然は重なるなと内心あきれる感覚でした。この後輩は今年1年生の体調不良が目立ったので何か対策をしておくべきだと感じたため、質問したようでした。その心意気に感心したものです。

 

今でこそ治療院を開業していますが、私が大学1年生の頃は、この仕事に就くなど考えてもいませんでした。


高校2年生の頃にスポーツ医学を学びたいと考えていましたが、物理学(特に宇宙物理)を学びたいと気持ちが変わり、応用物理学科に進みました。大学1年生の夏には、漠然と研究職や企業に就職するのだろうと考えていて、治療業やまして開業するなど、絶対に頭に浮かばない発想でした。今の大学生が身体をケアすることに興味を持つのは意外でした。

 

そこで、いつから今現在の自分の状況を具体化しようとしたのか?と帰りの電車の中で自問したときに、この夏合宿が原点だった、と改めて気付きました。

 

小学校低学年の頃から、母親が肩こりに悩まされていたため、ずっと母親の肩もみをしてきました。この世界に入るきっかけはこの経験です。

自然とマッサージが上手になっていた私は、大学の部活に入り、他の部員にマッサージをするようになっていました。

特に夏合宿は今も昔も身体を酷使しますから、周りから喜ばれました。謝礼としてジュースを貰うようになります。真夏の汗をかく夏合宿でほぼ自費で飲み物を買った経験が無いことが密かな自慢でした。自らの技術で、家族以外の他人から報酬を得た、人生初めての経験でした。

 

大学卒業後企業に就職するものの、会社勤めが嫌で、大病を患い入院。会社から逃げたいという気持ち、健康に関わる仕事に就きたい、学生時代に合宿でマッサージをしたら喜ばれた、そのような気持ちが入り混じり親に一言も相談せずに会社を辞めてしまいます。
そこから専門学校に通いながら後輩を練習台に実技や実践を学びました。特に夏合宿は貴重な臨床経験を積んだ現場でした。

 

今私が普段いる東京都新宿区に比べると、合宿所は何もありません。


病院、クリニックには車を使わないとたどり着けません。テーピングや湿布が買える店は近隣に存在しません。指導してくる教官、教えてくれる先輩、手伝ってくれるスタッフ、誰もいません。持ち込める器材はたかが知れています。参考書や書籍もほとんど持っていけません。本当に何もありません、そして足りません。

 

器材も人も医療機関もそばにない状況下で、一人で考えて判断して処置していく。最初は不安で怖くて仕方無かったですが、やるしかないので、やりました。夏合宿で起きた出来事を復習して次に繋げる。学校で習った知識と技術を夏合宿で活かしていく。その繰り返しを何年か続けたことが、現在の開業治療家である姿の原点になりました。


夏合宿を経験しなければ、また自身から後輩をケアしようと行動しなければ、今でも誰かに助けてもらえる場所にいたかもしれません。一人でやっていく覚悟を作ったのはこの環境でした。

 

今年も新しい発見と貴重な臨床経験を積むことができました。私のしていることに興味がある後輩がいたことも驚きでした。夏休みで休診した日に予約を入れようとして断った患者さん達をはじめ、周囲の皆様にこの体験を還元していきます。原点を思い出したところで。

 

甲野 功