開院時間

平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)

: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)

 

休み:日曜祝日

電話:070-6529-3668

mail:kouno.teate@gmail.com

住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202

~臨床はライブだ~

少し前のこと、商人大学校というセミナーに参加したときのことでした。

全5回のセミナーでは、毎回着席する場所が変わるのですが、その回はオーナー美容師さんが正面にいました。その方は男性であり、独立してスタッフを雇わずに一人で美容院を経営しているそうです。


その彼と、ワークで話す機会がありました。名刺交換をして互いの素性を明かすと、私と年齢も状況も似通っていることもあり、親近感がわきました。


どちらも接客業であり、技術を売りにしたサービス業。男性一人で独立しながら、過半数の顧客は女性である。スタッフを雇わず一人でできる範囲の業務にしていること。他業種ならがらとても興味が出てきました。

 

会話の中で、ふと質問してきました。

カットの前にお客さんの希望を聞いて、このような感じにしようと頭の中で考えて入るのだけど、いざやってみると想像と異なる感じに仕上がることがあるのですよ。鍼灸とかマッサージでもそういうことってありますか?

 

とても興味深い質問であり、体験談でした。

私の場合でもうなずける内容だったのです。


確かに電話や問診にて事前に患者さんの情報を得て、指定した時間から治療の組み立てを頭の中で行います。30分なら30分の、60分なら60分の中で治療の起承転結を作ります。メインとなる刺激(治療方法)は鍼なのか、指圧なのか、運動法なのか。このような想定を事前にしてから治療に入ります。

 

ところがたまに、事前に考えていたことと異なる方向に行くことがあります
・患者さんの身体を触ってみて想像以上にこわばった肩
・治療途中で判明した常備薬の服用の事実
・実は本当の主訴は別にあったが、ここでは対応してくれるはずがないと決めつけていていた
・体の不調よりもメンタルの問題が根本的な原因と思われる
など。

 

実際に患者さんの身体に触れながら治療をし、話をしていくと、机越しの問診では出てこなかった情報が多々出てくることがあります。そうなると、事前に想定していたやり方は適さないと判断し、変更していきます。その時の状況で流れや方法が変わってしまいます。特定の治療方法を希望している患者さんには、優先順位を考えますが、身体の状態によっては希望している方法とは異なったものを提案し、説得して行うことも。

 

当然、変えた方がいいと考えても敢えて変えずに事前に考えていた方法でやり切る場合もあります。患者さんの強い希望があるときなど(鍼だけはどうしても怖いの止めてほしいなど)。

 

そのとき、そのときの流れで変化するという意味では美容師さんのカットと相通ずるものがあると思いました。対人サービスは言わば“生もの”、ライブです。

 

鍼灸専門学校のある講師が言いました。臨床の「臨」は臨機応変の「臨」だ、と。臨床現場に立つと、患者さんを前にして想像していなかった新しい展開があることがあります。

 

甲野 功