開院時間
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今回は障害と言えるほどのものではありませんが、東洋医学的な表現でいう未病にあたることについて触れます。
東部日本学生競技ダンス連盟(もしくは全日本学生競技ダンス連盟)、通称「学連」。
加盟する大学の部員によって構成される競技ダンス団体です。プロの先生ともアマチュア選手とも違う競技ダンス界・社交ダンス界にある独特な団体です。
かつては風営法の関係で幼少期から社交ダンスに接する機会がほとんどなかった日本。その当時は、10代最後から20代前半の若者が社交ダンス、ひいては競技ダンスを行っているのは学連選手くらいしか存在しませんでした。ダンス教室に生まれた子供や親が愛好家で習っていた、といったケースを除くと、まず若い人が社交ダンスを踊ることは無かったわけです。
平成がもう終わろうとしている現在でも、学連ダンサーは独特な存在であるでしょう。学連ダンサーに特有な症状として、地味で見過ごされがちなのが慢性的な肉体疲労です。
私はこの仕事をしているので、後輩の現役選手からマッサージを受けてみたいと言われることが少なからずあります。そして多くの後輩が、終わったあとに「体が軽い!」と感想を述べます。半分くらいは先輩に対するお世辞でしょうが、確実に本音がこぼれている後輩もいるわけです。
そのとき私が思うのが、「軽くなったことを驚くより、いかに重たくなっているかを認識してほしいな」、なのです。
練習を積み重ねていけば自ずと体に疲労が蓄積していきます。
十分な休息を取れば、疲労は抜けて超回復によって更なるパフォーマンスアップが望むことができるでしょう。しかし疲労が抜けきれないまま練習を重ねていけば、日常的に体に重さが残り、それが当たり前の状況になります。ついには自分が疲れていることに気付かなくなります。
身に降りかかる疲労が本人の回復力を上回ったときに、障害として体に現れます。
既に挙げたオーバーユース障害やミスユース障害の前段階として慢性疲労が隠れていると言えます。
肉体に疲労が残れば筋肉が固くなってきます。
筋肉は能動的に収縮することができますが能動的に伸長はできません。弛緩するだけです。他動的に伸ばさないと伸長できないのです。筋肉が伸長する際にもエネルギー(ATP)が必要になりますから、疲労が溜まった体では筋肉が収縮したままに。
そうなると血行が悪くなるので余計に固さが増すこともあります。筋肉が固くなれば、それが体を動かす際に重さとして現れるのです。
こういった機序はスポーツ選手ならば誰でも起こり得ること。では学連ダンサーは何が違うのか。それは学連の環境に影響します。
学連は現役大学生が自ら運営する組織。
大学生が大会を運営し、管理し、開催します。連盟委員という各大学の代表者は毎週会議に集まりますし、大会の準備から後片付けまで学生の自主運営。採点も学生が行います。競技会において、選手に専念できるプロやアマチュアとは大きく異なります。大会に出場しなくても朝早くから会場入りし、終わりまで帰ることができません。
学内においては、原則上級生が下級生を指導し、部活に外部コーチが入ることはありません。OBOGが頻繁に練習をみるとしても、技術部長を外部の人間にすることはなく、現役生が担います。
私が現役時代、学内ではモダン技術部長、フォーメーション技術部長、Ⅰ部主将、全体副主将を、学外については連盟委員、評議委員をしました。経験上、学内の仕事も学外の仕事も、かなりの量になります。ここに挙げた以外にも多くの役職と役割があり、細かい業務も沢山あります。学連ダンサーは練習以外にもすることが山積みです。
そこに本業の学業が入ります。
私は大学生時代は理科系だったので、授業数は多いですし実験もレポートも毎週ありました。生物化学系の実験ですと数時間かかるのは珍しくありません。学科によっては終電ギリギリまで実験にかかることもあります。むしろ泊りがけで実験ということも。
大学生は暇で遊んでばかりいるというイメージがありますが、理工学系や薬学、医学系の学生は甘くありません。
更にはバイトが入ります。
お金が無くては大学生活を送れませんしダンスも続けられません。
中高生ならば遊ぶばしょはコンビニ、ファミレス、ファーストフード店などで済むかもしれませんが、大学生ともなれば遊びに行く場所もそれなりの場所に変わります。
ダンスを続ける費用も安くはありません。
そうなると効率よく稼ごうと肉体労働、深夜バイトなどに手を出すこともあるでしょう。
学業、ダンス、そこにバイトが入ることで肉体疲労が積み重なっていきます。
若いから、みんなそうしているし、ちょっと眠れば大丈夫、そういった言葉でだましだまし過ごしている選手が多いのです。
私自身、学生の頃はこれが普通だと思っていて、休むとか体を労わる時間があったら別の事をしなきゃいけないと、思い込んでいました。今振り返ると、部室で少し横になろうと寝たら金縛りにあって苦しんだ、4年生の冬全直前に肉離れを起こした、といった問題が表に出てしまったのでした。
今の大学生は、少しの時間があればスマホを触っています。
ダンスレベルも飛躍的に向上しています。
私の頃以上に体に負担が掛かっていると思います。
中高生ならば深夜まで練習することはありません。指導者や保護者がやり過ぎないように管理します。社会人になると社会的責任から休むことを覚えます。お金もまとまって入ってくるので金銭的余裕ができます。
中高生ほど子供ではなく、社会人ほど大人でもない。
学連ダンサーの慢性疲労が溜まるわけです。
ダンス障害となる前に体に目を向けること。そうすることで予防だけでなくダンス向上にも繋がると考えています。
甲野 功
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