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~誰に向かって仕事をしているのか~

私自身がフリーで仕事をしているから目につくのでしょうか。ここ数年周りで独立してフリーで働くひとが増えたように感じます

 

企業を辞めて独立する。個人事業主になる。新しい店舗を構える。仲間と起業する。イベントを立ち上げる。
そのような人々の情報が入ってきます。以前は特に気に留めていなかっただけかもしれませんが、それにしても増えたように思うのです。同世代だけでなく、もっと若い世代でも私よりも年上の方でも。
なにか理由はあるのでしょうか?

 

リーマンショックで多くの企業が業績不振になり、企業勤めに不安が出てきたのかもしれません。
政府が企業希望者に手厚い支援をするようになりました。10年前に比べて起業することは容易くなっています。
スマートフォン、SNSなどIT環境の充実により情報を届けやすくなったため、フリーに有利に働く時代になった。
終身雇用が無くなり、かつ人生100年と言われるようになり、年金も貰えるか分からないため、定年後も収入を確保できるよう個人で稼げるようにしておく必要が出てきた。


ざっと、こういった理由が考えられます。

 

話がずれるかもしれませんが、今年は芸能人の引退、事務所退所が盛んです。先の、安室奈美恵さんの来年引退、元SMAP三名の事務所退所、結婚による芸能界引退など、最前線で活躍していたタレントが引退したり事務所を辞めたりしています。こういった芸能界の動きと何か関係するのでしょうか。

 

 

翻って、何故私が独立開業の道を選んだのか、改めて考えことがありました。それはビジネス本を読んでいて、頻繁に顧客目線という言葉を目にすることがきっかけです。
業績が悪いのは企業が顧客目線に立っていないと、多くの書籍に書かれています。そこで思うのは、そもそも顧客目線に立たない企業などあるのか?ということ。一般消費者向けでも企業相手でも、売る側のことを考えないで商売ができるわけないでしょう、と思うわけです。何を当たり前のことを書いているのだろうか。

 

そこで過去の経験を振り返ってみると、確かに顧客目線になっていない自分がいたのでした。
会社員時代は、顧客なんかよりも社内の上司方を向いて仕事していました。社内から頼まれる業務をこなすだけで顧客など考えていませんでしたし、そもそも誰が顧客かなど知りませんでした。言われたことをこなすのが精一杯の日々。
脱サラ後、リラクゼーション店で働いているときは、お客さんの立場に立てるよう気をつけていました。なるべく自ら他のお店に出向きマッサージを受けて勉強し練習し、どうすればいいのか考えていました。
それが、国家資格取得後の職場では患者さん第一にはなりませんでした。職場(院)の方針、業務成績、後輩育成、社内資料作成、会議、セミナーなどなど、必ずしも患者さんに目が向いていないまま臨床現場に立っていました。クリニック勤務したときも医師に対して目が向いていたように思いますし、大学病院のときは臨床の上に「研究」があるため患者さんに鍼治療をするよりデータを取ることが上位に来ていたのが実情でした。

 

これは確かに顧客目線になっていなかった。
会社員時代は全くその考えは無かったのです。今の私の場合だと患者目線ですが、雇われている時代にも患者目線ではなかった。本来給料の元は患者さんが支払うお金なのに上司や数字や組織に向けて仕事をしていたようです。

 

独立した理由の一つが、
余計な雑音を無くして患者さんにしっかり向き合いたい
、というもの。自営業となったことで治療以外の業務はたくさんありますが、少なくとも患者さんを前にしたときは目の前のことに集中できる環境にいます。

 

もしかしたらフリーを選択した人は、より純度を高くして顧客に向かって仕事がしたくなったのではないか。そう考えてみました。意見を聞いたわけではありませんが、フリーになることはそれまでの仕事の向き合い方を変えるためなのではないかと予想してしまいます。

 

そういえば以前あった、「俺はこいつらのために仕事をしているのではない!患者さんのために治療をしているのだ!」というイライラが無くなっていました。

 

甲野 功