開院時間
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プロ野球、巨人軍澤村投手に対する鍼施術ミス報道を受けて、鍼灸業界団体が連名で巨人軍に質問状を出した件ですが、このたび巨人軍から回答が得られたと報道がありました。全日本鍼灸学会のホームページに回答文全文が掲載されております。
↓★以下、巨人軍からの回答文始まり
公益社団法人 全日本鍼灸学会 会長 久光 正 様
日本伝統鍼灸学会 会長 形井秀一 様
公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会 会長 伊藤久夫 様
公益社団法人 全国病院理学療法協会 会長 平野五十男 様
公益社団法人 東洋療法学校協会 会長 坂本 歩 様
公益社団法人 日本鍼灸師会 会長 仲野弥和 様
公益社団法人 日本あん摩マッサージ指圧師会 会長 安田和正 様
社会福社法人 日本盲人会連合 会長 竹下義樹 様
日本理療科教員連盟 会長 栗原勝美 様
冠省 貴団体から9月21日付文書「はり治療による長胸神経麻痺に関する報道についての照会」が当球団に送達されたことを受けて、当球団は当該選手を診察した複数の医師から、あらためてお話をうかがいました。
いずれの医師も、選手の症状等から長胸神経の不全麻痺であり、
それに伴う前鋸筋の機能低下であるとの診断に変わりはないと話されています。また、発症時期や当該選手の問診等から、長胸神経の麻痺は、当求団のトレーナーが行った鍼治療が原因となった可能性が考えられると答えられました。ただし、鍼治療以外にも、強いカがかかる他の外的要因によって長胸神経の麻痺が生じた可能性もあるとの意見も出ました。
お話をうかがった医師はいずれも、 経歴や專門分野における実績等に秀でており、当該選手に関する診断は信頼に値するものと当球団では考えています。
当該選手の長胸神経麻痺はすでに回復しております。また、当該選手を施術したトレーナーは、現在も当球団のトレーナーとして勤務しています。当球団は鍼治療が有効であることを十分認識しており、現在も多くの選手やスタッフに対して鍼治療が行われています。今後も引き統き鍼治療を活用していく方針に変わりはありません。
末筆ながら、 貴団体の益々のご発展を祈念しております。
草々
2017年11月7日
株式会社読売巨人軍
↑★以上、巨人軍からの回答文終わり
この文を読んでまず思ったことは
全く質問に答えていない
ということ。
仮にも各業界団体がまとまり代表者の名前を公表し、かつ巨人軍オーナーの個人名を出した上で質問状を送ったにも関わらず、質問に答えていないということに、とても常識を疑います。
改めて鍼灸界側が出した質問内容をみてみてましょう。質問状にある質問項目を抜粋しております。
↓●以下、質問状内容始まり
質問状①
本件におきまして、診察ならびに診断されました医師の先生にお聞き致します。
Q1.報道によれば長胸神経麻痺とありますが、本件の正確な診断名とその理由(所見)をお聞かせください。
Q2.報道によれば、はり治療が長胸神経麻痺の原因とありますが、これは事実でしょうか?もしも事実であるならば、はり治療を原因とした理由(因果関係)と他の原因を除外した理由をお聞かせください。また、はり治療前から長胸神経麻痺を疑う所見がなかったかお教えください。
Q3.患者の転帰についてお聞かせ下さい。
Q4.もしもはり治療が長胸神経麻痺の原因であると考えであるならば、どのような安全対策を施せば、今回の事故を避けることができたとお考えでしょうか?ご意見をお聞かせ下さい。
Q5.上記に加えて、本件に対するご意見ご感想をお聞かせ下さい。
平成29年9月21日
質問状②
本件におきまして、はり治療を行われたトレーナーの先生にお聞き致します。
Q1.本件に関するはり治療の詳細(主訴と治療の目的、使用鍼のサイズ、刺鍼部位・方向・深度・強度、等)についてお教え下さい。
Q2.報道によれば、はり治療が長胸神経麻痺の原因とありましたが、刺鍼時あるいは刺鍼後に神経を傷害したことを示唆する現象(強い鍼響、痛み、シビレ、筋の単収縮、等)はございましたか?
Q3.上記の質問を踏まえて、はり治療が今回の事故の原因とお考えでしょうか?
もしもそうであるならば、どのような施術行為が原因であったか、どうすればこれを防ぐことができたとお考えでしょうか?ご意見をお聞かせください。
Q4.上記に加えて、本件に対するご意見ご感想をお聞かせ下さい。
↑●以上、質問状内容終わり
医師と施術をしたトレーナーへ合計9個質問をしています。この質問に対する回答は無いのでしょうか?。答えられません、答えたくありません、回答不能です、などの返答も無く、完全に触れていません。どういうことでしょう。
私の意見は、何度も書いていますが、どのようなことが起きているのか情報が無さ過ぎるので情報公開をしてもらいたい、ということです。
本当に鍼によって長胸神経麻痺が起きたとするならば、発生機序を検討し、二度と起きないように予防策を講じ、臨床現場に周知させ、教育現場に浸透させる、といったことが必要になるわけです。だからこそ、鍼灸業界の臨床、教育、研究の3分野の団体が連名で質問したのです。
診断した医師が、
・画像診断をした上で診断したのか
・症状から判断したのか
・他の要因を除外していって結論を出したのか
によって意味が変わってきます。
施術方法についても、この方法ならば確かに麻痺が起きるかもしれない、だから気をつけよう、といった未来に繋がることが見いだせるかもしれない。情報が開示されなければ何も進みません。しかし重要な情報は一切出していません。
回答文が出される前には、月刊「医道の日本」誌では、この件について大々的に特集が組まれています。
この雑誌は最大手の業界誌。医師の意見を聞いていますし、動画も用意しています。それも情報が無い中で特集を組んでおります。それだけ業界は本腰を入れて取り組んでいる問題です。
何も出てこないと結局、憶測・希望的観測・思い込み・決めつけなどが溢れるばかり。
回答文には「鍼治療以外にも、強いカがかかる他の外的要因によって長胸神経の麻痺が生じた可能性もあるとの意見も出ました。」と鍼だけが原因ではないかもしれません、と一文を入れており、
「当球団は鍼治療が有効であることを十分認識しており、現在も多くの選手やスタッフに対して鍼治療が行われています。今後も引き統き鍼治療を活用していく方針に変わりはありません。」と鍼治療を擁護する文面があります。
(個人的に「鍼施術」ではなく「鍼治療」としているところに妙な気遣いを感じてしまいます。)
臨床上重要な情報は出さず、鍼に対して印象を良くしよう、だけど診断した医師の事も持ち上げておきます、という全方位的に気を遣ったものになっていると思います。
この回答文を受けて学会側(どの学会をさしているのでしょうか?)はこれで終わりにする方針であると記事にありました。
巨人側に鍼治療に対する前向き(?)な回答を引き出し、それでも鍼を取り入れていくと明言させたのでよしとするのでしょうか。色々と腑に落ちませんが、これでこの件は終わったことになるかもしれませんね。
最期に澤村選手が回復しているということを嬉しく思いまし、メジャースポーツの王道であるプロ野球で鍼治療が取り入れらていることに誇りを持ちたいと思います。
※~はり治療を責めず~に続く
甲野 功
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