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~シャドー制度~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 学連の競技会
学連の競技会

 

 

学生競技ダンス連盟、通称<学連>。競技ダンス界において特異な世界を築いています。

特に学連特有のシステムといえるのが<シャドー制度>でしょう。シャドー制度について書いていきます。

 

学連の基本4原則に「競技会は学校を背景とする団体競技を主体とすること」があります。
私が現役の頃は「学校を背景とする団体競技であること」だったように記憶しています。とにかく競技会の構成単位は大学であり、大学対抗の団体競技(が主体)という前提があります。そのためプロやアマチュア競技会では存在しない学校背番号があります。これは各大学に割り当てられた最大3桁の背番号をつけて競技会に出るというもの。背番号には大学名が入っており、デザインは自由になっています。そして大学内でカップル(男女一組になって競技会に出る組み合わせ)を組んで競技会に出場することが前提となっています。女子大学や反対に女性がとても少ない大学の場合は共同加盟校といって最大3校まで一緒に活動できる、別の大学と一緒に活動することができます。リーダー校と言われる代表校と一緒に複数の大学が集まり団体を構成する学校が多いです。

 

私の母校東京理科大学も現在は学習院大学、東京音楽大学、女子栄養大学2部(夜間部)と一緒に活動しています(別の大学と加盟していた時代あり)。それを例にとると
団体名ALL東京理科大学舞踏研究部
代表校東京理科大学
共同加盟校学習院大学、東京音楽大学、女子栄養大学2部
となります。この4大学内で競技会に出るカップルを構成することが原則となります。

 

それでも男女部員の人数に差が出るもしくは何らかの理由で組むことができなかった選手が出たとします。この選手をシャドー選手とよびます。シャドーとはもともと、一人であたかも相手がいるように練習するシャドー練習(影:シャドーと踊る)という言葉から来ています。シャドー選手は2年生以降に同じように他大学のシャドー選手とシャドーカップルを正式に組み競技会に出ることができますちなみにシャドーカップルに対して母校及び提携校内でカップルを組むことを<正規カップル>とよびます。

 

私が学連世界に足を踏み入れた1996年当時、このシャドー制度は存在していませんでした。学連に所属しながら他大学(共同加盟校はもちろん除く)の選手と踊ることは許されていなかったのです。もちろん遊びで踊ることやちょっと練習することは構いませんが正式にカップルを組み競技会に出ることは禁止でした。理由は原則にある<学校を背景とする団体競技>によるものです。そのため、男女差が出た場合は、組めないもしくは他の学年の選手と組むしか選択肢がありません。当時の東京理科大では組めない女性(パートナー)は結構存在していました。それは他大学でもそうです。正規カップルを組めないとなると、退部するか別のやりがいを見つけて部活に残るという選択肢しかありません。他大学では理事という学連全体の役職に就くことでやりがいを見出したり、アナウンスに専念したりする方もいました。またフォーメーション競技という8組同時に踊る種目もあるのでそのフォーメーションメンバーに専念する例もあったようです。
なお、男性(リーダー)が余った場合は下級生のパートナーと組むことがほとんどでした。競技ダンス界はリーダー優先ですのでリーダーの学年が基本となります。ですから4年生のリーダーと3年生のパートナーというのはさほど珍しくありませんでした。この場合、パートナーは4年生になると相手が卒部してしまうのでシャドーになります。

 

1996年当時はパートナー部員が全体的に余っていた時代でした。今ほどテレビやアニメで競技ダンスを放送していませんでしたから、男性は恥ずかしくて入部したがりません。反対にパートナーは華やかなドレスに憧れたり、ジャズやバレエからの転向組がいたりで入部しやすい傾向にありました。結果、女性は余りがちになっていました。同じように部活に入り、練習をしても2年生以降競技会に出ることができないパートナーが多数いて不遇な環境でした。私が3年生の時にはシャドーパートナーのために、東京理科大学を含めて3校集まり、そのときだけ別のリーダーと組んでミニ競技会を行う3大学合同大会を企画したことがありました。

 

状況が変わったのは私が大学4年生の頃、1999年だったと記憶しています。ある大学のリーダーが他大学のパートナーと恒常的に練習していることが発覚し、問題視されました。その2名はもちろんシャドーであり大学内でカップルを組んでいません。リーダーは他大学の選手と踊ることを許してほしいと嘆願し、アマチュア競技会に限り学連に籍をおいていても出場することが許可されることになります。これが学連のシャドー制度の始まりのはずです(かなり前のことなので若干記憶が曖昧ですがそうだったはず)。
私はこの制度を使い、大学を卒部したあと、他大学の3年生シャドーパートナーとカップルを組みました。この場合、社会人(学連OB)と他大学現役3年生のカップルとなり、2回ほどアマチュア競技会に出場しました。当時のパートナーは学連に所属したままで母校のフォーメーション競技に出場しましたし、パートナーが4年生のときには大学の卒部デモの企画で一緒に踊りました。デモを見たパートナーの同期達はシャドーになったのにドレスを着て踊っている姿に感動して泣いていました。それくらいシャドーになると学連には活躍の場がない時代でした。なお私自身がこの仕事に就くため勉強や修行に専念するため2年半くらいで競技会活動を終えて、競技生活から引退しました。

 

それから時代が進みアマチュア競技会に限らず、学連の公式戦にも出場することができるようになりました。現在も続くシャドー制度のはしりです。当時、つける背番号はリーダー校のものだけでした。制度ができた当時は色々曖昧な部分がありましたが時間が経つにつれて以下のようなルールになりました。
選手権大会(レギュラー戦)はリーダーが4年生のシャドーカップルのみ出場可能
3年生まではリーダーの所属大学に出場権利のある、レギュラー戦以外の大会に、出場可能(部内戦など場合によってはパートナーの所属大学に出場権利がある大会に参加できる)
団体成績に(原則)反映されない(点数が入らない)
背番号はリーダーの所属大学のものを使用(過去はパートナー側でも良かったが2018年度からはこの形に)
前期の東部戦において決勝まで進んだ場合、東部推奨枠として全日本選抜戦(夏全)に出場が可能(東部ブロックに関して)
後期の東部Ⅰ部戦において準決勝まで進んだ場合、東部推奨枠として全日本戦(冬全)に出場が可能(東部ブロックに関して)

 

競技会出場に関しては、

4年生までレギュラー戦に出ることができない

全日本戦(夏、冬ともに)に出場するには高いハードルがある

の2点が大きな縛りです(※ブログ作成時の状況です)。

 

夏全は学生個人日本一を決めるための大会であり団体成績上位の大学か個人で上位の成績の選手が挑む大会である位置づけですので、出場選手は最初から選別する大会ですが、冬全は日本全国の学連加盟校に出場権がある大会であり4年生最後の舞台になります。冬全に出場できないことは学連選手にとって大きいのです。先に行われた東部1部戦においても、東京理科大学のシャドー選手は全員予選落ちをし、競技生活引退となりました。これが正規カップルであれば実力に関係なく出場できます(4年生の正規カップルがとても多い場合は出られないことがありますが)。

 

毎年東部Ⅰ部戦でシャドーカップルの悲しい状況を目にします冬全出場を決めることはシャドー選手にとって狭き門。大多数のシャドーカップルが1部戦で競技引退になります。シャドー制度ができたことで数多くの選手が競技会で活躍する場を得ましたが、最後の最後(冬全)を出場できず会場で応援、という形で終わることがままあります。最終学年まで部活を頑張って続けておきながら、4年間の集大成を出す舞台に立てない。これが見ていて一番つらいことです。

 

シャドー制度により多くの部員が競技会に出るチャンスを得ることができるようになりました。私の時代であれば数多くの選手が陰で競技生活を諦めていたものでした。良い面も多々あるのですが、シャドー制度によりそれまでなかった困難も出てきているのが確かです。シャドーになって選手がなるべく冬全に出場できるようにする。それを本気で行動するようになりました。

 

甲野 功

 

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