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ビジネス書籍でヒット作となった、西野亮廣氏の著書「革命のファンファーレ」。鍼灸業界でもこの本から学ぶ人が出てきており、一部で盛り上がっています。
既にここで書いたように「革命のファンファーレ」が縁で繋がった方や実現できた希望もありました。
この本の内容を私のいる治療院業界(もしくは鍼灸業界)に置き換えて考えることで様々なことが見えてきました。実際に行動して効果が出そうなこともありました。
そこで何回かに分けて「革命のファンファーレ」から学んだことを書いていきます。
第一回目は「認知」と「人気」の違いについて。
「革命のファンファーレ」では認知タレントと人気タレントの違いを説明していました。
認知タレントにはファンと信用が無い、あるのは好感度だという。
人気タレントにはファンと信用があるという。また好感度が無くても人気タレントになる。
※この場合の好感度とは世間一般の人がおぼえる良い印象を指しています。
著者の西野亮廣氏は芸人でありキングコングというコンビで活動しています。若くして売れっ子芸人になりゴールデンタイムのテレビ番組に多数出演していたそう。その後テレビ出演をほとんどしなくなり、独自の方法で活動をしています。
一番テレビに出ていた時期を私は知らないので、ほとんど知らないタレントでした。たまにアメトーーク!やゴッドタンに嫌われ芸人として出てくる人という印象でした。まさに私にとって認知されていない、好感度も無いタレントでした。
ところが現実には西野氏を支援するファンが多数存在し、絵本も書籍も売れるしライブも大盛況。SNSの分野では日本トップクラスの影響を与える人物なのです。本人は自らを人気タレントだと定義しています。なお作中では具体的な名前を挙げており、認知タレントはベッキーさん、人気タレントはゲスの極み乙女。を例にしています。ニュアンスが伝わるでしょうか。
この認知と人気を分けて考えることは大きな発見でした。
「革命のファンファーレ」ではタレント活動を例に挙げて持論を展開していましたが、<鍼灸>に置き換えると興味深くなります。
何度か触れていますが、わが国の鍼灸受診率は人口比3%程度と言われており、日本人のほとんどが鍼灸治療を受けたことが無いという統計結果になっています。鍼灸業界はこの現状に危機感を持ち施策を練っている最中であり、巷の鍼灸師も色々案を出して行動しています。
では鍼灸にとって認知と人気はどうでしょうか?
私の考えでは一般的に鍼灸は認知があるが、人気が無いと考えます。
世間一般で鍼灸を知らない人はほとんどいないと思います。
幼児は別として鍼灸は一般常識に入るでしょう。印象は別にして誰もがドラマや本、テレビ番組で鍼灸はどのようなものか見たことがあるでしょう。最近では芸能人が美容鍼をする画像を載せますし、オリンピック選手も鍼を受けますし。
もしも道行く人に「KINGレイナ知っていますか?」と聞いたとしたらどうでしょう?ほとんどの人が誰それ、と応えるでしょう。「ユッカ・ハパライネン凄いよね!」と人に言っても誰もが、それは何?と疑問に思うだけでしょう。なお、KINGレイナとは去年ブレークした女子総合格闘家でユッカ・ハパライネンは有名な社交ダンスの選手です。格闘技を知っている人にはKINGレイナね、知っているよ。社交ダンス愛好家には古い選手だけど懐かしい、となります。
このように知る人ぞ知る存在では鍼灸はありません。
世間に認知されているものです。
しかし人気はありません。
多くの印象は「痛そう、恐い」です。
よくあるのが、注射が嫌いだから無理、という意見。注射と鍼では刺す目的が違うので似て非なる物で、「卓球が嫌いだからテニスもしない」くらいの暴論なのですが、世間には「卓球も英語にすればテーブルテニスでしょ!どちらもスポーツだし!」というくらいの勢いです。
世間の人気は無いです。鍼灸師の身分で言うのもあれですが、鍼灸は“世間一般には”認知されているが人気はありません。
なかなかこのことを認めない、もしくは見ようとしない鍼灸師がいますが、これが現実です。
では鍼灸業界はお先真っ暗なのでしょうか。そうとも言えません。“世間一般には”と条件を敢えて強調しました。これが鍼灸を受ける人にとっては状況が逆転するのです。
鍼灸を受ける人にとっては、鍼灸は人気があるが認知が無い
そう私は考えます。
先ほどと認知と人気が逆ですね。どういうことでしょう。
まず受診率3%なのに、鍼灸師がたくさん存在して養成学校には学生が入学し毎年新しい鍼灸師が増えているのはなぜかという疑問があります。答えは鍼灸師ととしてやっていけているからに違いありません。
大多数が資格を取っても廃業してしまう業界ではないのです。もちろん資格を持っているだけでほとんど鍼灸によって生計を立てていない人や足を洗った人がいるのは確かです。ですがグラビアアイドルやプロ格闘家よりは遥かに生き残れる業界です。理由の一つに鍼灸は人気があるからなのです。
世間一般には人気が無いと断言しました。しかし鍼灸の効果を実感した人は鍼灸が大好きです。
当たり前のこと言っていますかね?言い方を変えると鍼灸で効果を感じた人はずっと鍼灸を受け続けるということです。例えばうちではリフレクソロジーやタイ古式マッサージ、骨格矯正なども行っておりますが、鍼灸目的で来院された人はほぼ鍼灸コースをリピートします。たまに他のコースを受けてみても鍼灸を外して別のコースに変える人はほぼゼロ。信者が多いのが鍼灸の特長です。
鍼灸を受けて効果を感じた人には鍼灸がとても良いものと頭にあります。そのため何度もリピートしてくれます。そう考えると鍼灸は人気タレントでありファンも信用もあるのです。
つまり受診率が低くても全体としては少ない熱狂的なファンが多くの鍼灸師を支えている構造です。
そう、鍼灸は世間一般には人気がありませんが、患者側からすると人気があるのです。
では認知が無いとはどういうことでしょう?
鍼灸を受ける人は当然鍼灸の事を知っているわけで認知していますよね。認知が無いはずがないのでは、と考えがちです。
その答えは鍼灸のもつもう一つの特長によります。それは幅が広いということ。汎用性が高く適応範囲がとても広いのが鍼灸なのです。
歴史は数千年を数え、時代を生き残り、変化と進化を繰り返し来た鍼灸。その全貌をうかがい知ることは困難です。鍼灸を受ける患者さんにはこの膨大な鍼灸全体を認知できないのです。
鍼灸もしくは東洋医学の原点は黄帝内経を筆頭とした古典にあります。その古典ですら時代とともに改良が加わり変化しています。そこから現代医療の発展とともに現代派の鍼灸が生まれ、中国では中医学派が生まれました。スポーツ鍼灸や美容鍼灸といった現代のニーズに合った分野もできています。
ここで去年の忘年会の話を一つ。
鍼灸専門学校時代の同期と忘年会をしました。参加者は6名。そのときに「さんしん」の話題になりました。しかしどうも話がかみ合いません。一方が三鍼(さんしん)のことを話しているのにもう一方は散鍼(さんしん)のことだと思っていたのです。私も散鍼の方だと思っていました。
参加者は全員、鍼灸師歴10年で開業したり養成機関で教員を務めたりしたような人間ばかり。そのようなメンバーでも勘違いがあります。更に私が知らない鍼灸の手法が話題にあがり驚きました(教員資格持っているのに)。
それほど鍼灸の分野は広範囲にわたるのです。
一般人である患者さんにとっては鍼灸とは自分が受けたものが全てなのです。そのため、異なった手法をすると「そんなものを求めていない」と言われてしまいます。
初めての患者さんで「以前受けたのはどのような鍼でしたか?」と聞くと「普通の鍼ですよ」との返事。その「普通の鍼」が何を指しているのかが問題です。
信頼して思い入れがある分、同じ鍼灸の分野であるのに他を認めないことがあります。そういった意味で認知が無いというのです。
まとめると
鍼灸は“世間一般には”認知されているが人気がなく、“鍼灸を受ける人には”人気があるが正確に認知されているとは言い難い
というのが私の意見です。
ここを踏まえないと鍼灸の受診率を上げよう!と頑張っても空回りすると思うのです。
結構、鍼灸師側には鍼灸信者がいて鍼灸は人気があるのだ!と思っている人がいる気がします。それは鍼灸に慣れ親しんだ患者にはそうでしょうが世間一般のイメージはまた違うと思います。
また鍼灸ファンだからといって、何でも鍼灸で治せるのでしょ、とか、経絡なんてニセモノで中医学が本家に決まっている、などの偏った考えを持っている患者さんは鍼灸を間違って認識しており周囲に不正確な情報をまき散らすこともあるでしょう。
「革命のファンファーレ」を読んで鍼灸界のことを考えました。何回かに渡って「革命のファンファーレ」から得た視点を書いていきます。
甲野 功
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