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~問題発見力へ~

長女の小学校で入学前プログラムを受けてきました。親子が分かれて別々の講習を受けます。


テーマは子どもの力を伸ばす


親はコーチとして子の力をどのように伸ばすか、というもの。前回同様コーチングの技術を保護者に教えていました。
そこで子供の能力として伸ばす項目に問題解決力とありました。大小様々な問題を解決できる子供にしましょうということでしょう。
この項目に私にはちょっと違和感がありました

 

私が幼少期の頃ぐらいまでは頭が良いというのは暗記ができている、ということだったと思います。物知り、博学であることが重要でした。よりたくさんの本を読み、正解を覚える。試験では主にそができているかを問われたように記憶しています。
今よりも情報量が少なく(インターネットが無い時代)知識量が多いほど人より秀でることができたものでした。この頃は<あばあちゃんの知恵袋>ではないですが、知識量は年齢にほぼ比例するので、お年寄りがより重宝されていたと思います。


知っているか知らないかの二択で問題が解決できるかどうか決まっていたように思います。知らないことがあれば知っている人に聞けばいい。自身でカバーしきれない分野の事は他人に任せるしかなく、接待や交友で広い人脈を持つことが、仕事をする上でも、知識面を良くする方法でした。

 

私が小学校に進む頃にはどのように問題・課題を解決するかが重要になり、問題解決力をいかに育むかが学校教育のメインテーマになっていったようです。パソコンが進化し、通信環境が変化していきます。知識を得る労力が格段に下がっていきました。映像で勉強することができるようになっています。
ただ記憶しておけば足りなくて、知識をどのように目の前の問題に使うかがカギになっていきました。


どれだけ物事を知っているかからいかにして問題を解決するかに変わていったと言われています。

 

単に記憶することが好きになれなかった私は、理科系教科に傾倒しました。しかもまず記憶ありきの化学や生物(最低限、元素記号や細胞構造を知らないといけない)よりもその場で考えて解くことができる数学や物理が好きになりました。

大学の研究室ではすでに答えが出ている事例を研究することなく、誰も答えを知らないことを知るために研究することになります。当時世に出たばかりの青色発光ダイオードの研究で、ダイオードの生成過程を把握するために赤外線波長で温度を解析できないかが研究テーマでした。

 

就職した2000年当時はソリューションという言葉が大流行でソリューション事業部やITソリューションという用語が至る所から聞こえてきました。ソリューションは問題解決とか解決策という意味で使われていましたから、問題解決が重要なキーワードだったのです

 

時代が進みインターネットが普及し、ノートパソコンにスマートフォン、タブレット端末と情報を得る機器が身近になりました。今や幼稚園児・保育園児がスマートフォンやタブレットでYouTubeに夢中になり、若者はテレビを視なくなりました。テレビ、ラジオ、新聞といったマスメディアよりもネットの方が情報を早く伝わるようになります。個人が動画で情報を発信できるようになり、検索すれば何でも(それなりに)分かるようになりました。

専門家の知識を得ようとするならば書籍を買うか、その人に接触して教えを乞うしかなかった状況から、Google検索するば事足りるようになったのです


私が取り組む競技ダンスで言えば、私の学生時代では海外のトップ選手のダンスを見るには、国際大会が日本で開かれるときに会場に見に行くか、パーティーのデモンストレーションを見に行くか、一本1万円以上するビデオを購入する、くらいしかありませんでした。海外まで習いに行く、見に行くという選択肢ももちろんありますが、どれを選ぶにせよ高額な出費が必要でした。
今の大学生はスマートフォンで手軽にYouTubeで無料動画を無制限に閲覧することができます。ちょっとした隙間時間で上質なダンスを研究することができます。

 

このような情報化社会では問題解決方法のほとんどはネット検索することで知ることができます。物知りに越したことはありませんが、それよりも効率よい検索ができて、集めた情報をきちんと処理できることが重要になっています。


テレビ番組に出たホリエモンが収録中にスマートフォンで調べて発言をして周囲のスタッフも演者も引いてしまったことがあったそうです。ホリエモンからすれば気になることはその場で調べた方が時間の無駄にならないという考えで、スタッフが用意した資料を台本通りに進めることを良しとするテレビ番組制作が理解できなかったと言います。

ホリエモンは今必要な能力は問題解決力ではなく、検索力だと言います。いかに効率よく情報収集できるかが重要であると。

情報量が膨大な分、フェイクニュース(嘘情報)も多数あります。誰の発言なのか、信用できるものなのかを精査できて必要な情報をまとめられることが実社会に有効だとします。

 

確かに検索力は重要でしょう。ネットに頼ることが正解では無いこともあります。電話で問い合わせた方が早くて正確な情報を得られる場合もあります。きちんとした発言をしている個人を探し当ててアポイントを取った方が効率がよいこともあります。検索力が高いことは重要です。
そういった意味で今の大学生は自然と効率の良い情報収集をしています。

 

ある識者によると、更に進んでこれからは問題発見力が重要になると言います。

 

そもそもその問題は本当に重要なことなのか?目の前の課題は乗り越えるべき課題なのか?という問題解決以前の事を考えろということ
問題を解決する方法はネットを検索すれば大体分かるし、解決できそうな人間にメールやラインなどで教えてもらうということができます。大事なのは問題の本質を理解し、何を問題にすべきか理解できるかということなのです。

目の前の表面的な問題に気を取られて隠れた本当の問題を見過ごしていては物事が解決しない。


いじめをなくそうと啓蒙活動してもいじめはなくならず、いじめよりも楽しいことを提供しないといじめはなくならない。そうキングコング西野氏は述べます。いじめの本質は娯楽だと西野氏は考えています。いじめを無くそうと禁止することが解決方法にはならず、娯楽である以上それよりも楽しめることを与えることが解決につながる。
問題の本質がずれていれば問題は解決しない。本当の問題は何か発見できるかが重要という意味では西野氏の考えは同じと言えるでしょう。

 

問題発見力は臨床現場において重要です
例えば肩が痛い、と患者さんが来たとします。肩の痛みを取ることが問題解決だとするならば、鍼をする・マッサージをする・運動法をする・病院に行ってもらい痛み止めを注射してもらう、といった方法を選択し提案します。こちらはプロですから肩の痛みを取る術を患者さんよりも習得していますし知っています。


ただし、肩の痛みを取ることが問題解決なのか?と考えなければいけません。言い換えると「問題は肩の痛み」なのか。


肩が痛くなる要因は何か探り当ててそれを解決する方が大切ではないでしょうか。
例えば大けがをして耐え難い肩の痛みを訴える患者さんは病院に行きます。もしもうちに来たとしても、救急車を呼んで緊急搬送させた方が患者さんのためになるでしょう。この場合の問題は肩の痛みであり、解決方法は早急に肩の痛みを取り除くことになります。


治療院に来る患者さんの肩の痛みはほとんどが緊急性を要さない慢性的な痛みです。問題は「肩の痛み」ではなく「どうして肩に痛みが出ているのか」であり、問題解決は「肩の痛みを取り除く」と同時に「肩が痛くならないようにする」となります。

 

このように専門学校では問題を解決するための方法を学んぶことができますが、臨床の場では目の前の問題の裏にある本当の問題を見つけることが必要です。問題発見力は見えない問題を発見する力ですから簡単に身につくものではありません。応用能力です。問題解決力から問題発見力へ。これは臨床家にとって必要不可欠なステップアップでしょう。

 

学校で教えることはこれから「表に出ていない問題を発見するためにどうすればいいのか」、「解決すべき本質的な問題を決めることができるようになる」といった方向に変わっていくという予測があります。これは一般教育の話ですが、臨床現場でも自然とそちらの方向に意識が変わっていることを実感しています。

 

甲野 功

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