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~学連ダンサーの障害 首の痛み~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 ホールド
近年、WDSFの影響でネックをより外に出すホールドが目立つ

 

これまで学生競技ダンス連盟(学連)の競技ダンス選手の故障について何件か書いてきました。
医学的な症例集などでは、

性差(発症頻度に性別つまり男女差があるか)、

年齢差(年代によって発症頻度が変わるか)、

好発群(よく発症するグループ・カテゴリーはあるか)、

好発部位(よく傷める箇所はあるか)

などを統計的に取ることが必要です。

 

学連ダンサーの場合、特定の条件で多い故障があるのか?と考えたときに「首の痛み」が挙げられます。そして、スタンダード専攻のパートナーに多い(好発する)。更にアマチュア戦に出たときに傷めることが多い。
今回は他のものと違って、結構条件が狭い話です。

スタンダード専攻のパートナーさんは種目の性格上ネックを後ろに使う状態で踊ります。WDSFの影響により、学連ダンサーも以前よりも後ろにネックを置くことが増えてきました。このことが、ラテン種目に比べて首を傷める要素が強い原因の一つです。
学連の大会ではラウンド数(予選の数)が少ないし、種目が絞られることが多いため、首を傷めるケースが比較的少ないと言えます。

 

これがアマチュア戦になると、特に5種目になるA級、B級クラスの大会に学連選手もしくは学連OBOGが出て上位まで勝ち残ったときに、大会中首が攣ったとか首にが痛くなってネックが保てなくなったとか、もしくは大会後に首に痛みが出た、という話を何例か見聞きしてきました。学連の大会では聞いたことがないのですが、アマチュア競技会になると見聞きするわけです。

プロ選手でも、当院のサポート選手である倉橋さら先生によれば、スタンダードパートナーは必ず一度は首を傷めるそれは職業病のようなもので仕方ないこと、と大先輩の先生に言われたことがあるそう。


この違いは学連特有の競技会システムと関係していると考えています。 

学連の競技会はシニア(専攻分けが終わったあと)での4種目戦が少ないです。
私が現役の時代は理工戦、松前杯、天野杯、つばめ杯の招待試合(シニア部門において)が4種目戦でした。
現在では、春理工戦は4種目ですが単科上がり、秋理工戦も4種目戦でありますが単科上がりの総合順位となっているので、上位の数カップルしか4種目全てを決勝まで踊りきることはありません。
松前杯は単科2種目戦。
天野杯は予選が2種目で準決勝から4種目となり、予選は4種目踊りません。
つばめ杯だけが昔も今も1次予選から4種目総合戦です。
出場者数の増加と会場を借りられる時間の問題があるため4種目戦が減ってきました。レギュラー戦となると夏の全日本選抜だけが4種目戦のみ。
学連は全体的に単種目勝負の傾向が強い競技会形式です。

アマチュア戦においては、低い級では2種目での競技会ですが級が上がるにつれて種目数は増えていき、B級あたりから4種目総合で、かつ、規定のラウンド(予選)から5種目に増えます。また学連よりも予選数が多いことがほとんどで、フロアーに立つ時間が長くなります。プロも同様です。

 

単科勝負、少ない予選に慣れた学連選手がアマチュア戦に出ると競技している時間が長くて最後の方に首が耐え切れなくなると私は考えています。

 

リーダー、パートナー選手どちらにも要因はあると思いますが、実際に見た例ですと、体力が無くなってきてリーダーが膝を曲げて低い位置を保つ必要があるところが、低く保てなくなる。するとパートナーをホールドで吊り上げてしまう。そのときパートナーは不安定な体勢になるが、トップを保とうと無理してネックを張って踊り続ける。そして頭の重みに首が耐えきれなって傷める。そういった流れがありました。
疲労により踊りが不安定になってくるとパートナーのネックが立ってきてしまいます。

 

これがアマチュア選手の場合は下の級から段階を踏んでアマチュア競技会に慣れていくし、競技会形式にも馴染んでいきます。
学連選手はある程度上達して、学連オフシーズンでの大会慣れや腕試しの意味合いでアマチュア競技会に出る、もしくは学連を卒部してアマチュアで続けるという例が多いわけです。その場合、それなりに実力があるのでいきなり上位級の大会に出場したり、すぐに昇級したりして、4種目を何回も踊ることになれないまま、競技会で上位に残ることがあります。
そうなったときにスタミナ(というより経験でしょうが)が無くなってパートナーの首に負担がかかるように考えられます。また学連では競技種目にないヴィニーズワルツ(ウィンナーワルツ)を踊ると、慣れていないため首を傷めやすいようです。

 

同じ競技ダンスですが、畑が違うことで意外な故障が起きることがあります。アマチュア競技会に出る学連スタンダード選手は気を付けてみてください。

 

甲野 功

 

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