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~学連ダンサーの障害 コーチャーの言葉を翻訳する~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 社交ダンスのデモ
社交ダンスイメージ 坊迫有紀・倉橋さら組

 

学生競技ダンス連盟(学連)の選手を診るときに必ずすることの一つに

コーチャーにはどう注意されているの?

という質問があります。

 

当然の事として、主訴(痛み、体の不調、来院目的など)を聴くことや選手の身体状態を把握することがありますが、ダンスを指導している人がどのように言っているかを重要にしています

 

学連選手が身体に不調を起こしている場合、多くはオーバーユース(練習のやり過ぎで体が耐え切れない)かミスユース(間違った使い方をしている)のどちらか、もしくは両方です。アクシデントによる怪我の場合もありますが、それは自明なのである意味で簡単です。

 

問題はミスユースなのですが、コーチャーが求める動きを選手がすることができなくて障害が出ることもあります。またコーチャーの指導を間違って理解しているためおかしくなっていることもあります。そもそも理解していないこともあります

 

そういった場合、コーチャーの言葉を「翻訳」もしくは「言い換えて」あげるようにしています

 

 

私は学連から始めた競技ダンスも20年以上携わってきました。それなりに理解できる部分があります。ダンス界の流れもある程度把握できます。

 

何年も毎日研究し練習してきたコーチャーの言葉には裏に多くの意味があるはずです。それを学生に伝える際に言葉や動きを介して行いますが、受け止める学生はキャリア数年足らずですと、そのほとんどを理解できないことがあるようです。

 

そのときに私が身体のプロフェッショナルとして筋肉や骨の名前を出してこういうことだよ、と説明する。私が見て基本動作の弱点が見えると、「ああ、ここが気になっているからこのように言っているのだな」と判断し、ここを直すためにこのような表現をしているのだよ、と解説します。

 

有名なコーチャーですとその人が持つダンスの傾向も知っていますし、複数の生徒さんの話からどこを注目しているか情報が入ります。

さらに世界のダンスの流れというものがあり、現在2つのポリシーがぶつかり合っている状況でもあり、学生は両方から影響を受けています。

 

その背景を踏まえ、今の学生が知らないこれまでの流れを説明したうえで、コーチャーはこのような意図をもって指導しているのだと思うよ、と補足します。

 

 

例えば、あるスタンダードパートナーの例。

 

前のコーチャーにはヒップが抜けるからもっと入れなさいと言われたのですが、今のコーチャーにはもっとヒップを出しなさいと言われている。どちらが正しいのか判断できないし、もともとヒップが抜けやすかったら入れ気味で踊っていたので、腰が痛くなってきた、ということがありました。

このときも、

「以前のコーチャーはこのような考えでヒップを入れるように言い、今のコーチャーはこういう表現をさせたいからヒップを出すようにさせたいのだと思うよ」、

と説明しヒップが入ったときと出たときのポイズを別々に行って解説しました。

 

これは身体の構造を知った上でのことと、ダンス界のトレンドをどう捉えているかの知識の2つが必要でした。

幸いどちらのコーチャーも、なんとなくこだわるところを情報として持っていたので、できました。それらの指導に対して理解が乏しいため腰に負担が掛かっているので、緊張した筋肉を緩めるとともにバランスを少し変えることを提案しました。

 

 

別の例です。

 

先月、ラジオ番組の収録で日本トップ選手である金光進陪先生や長島大志・中尾友美先生のダンスレクチャーを横で聞く機会がありました。先生方のダンスに対するこだわりを強く感じました。

そして、「この先生方が語る内容を、学生が聞いてどこまで理解できるだろうか?」とも思いました。

 

どの先生もそれなりに解剖学の知識を持っていて筋肉や骨のレベルで話をしています。具体的な名称も出てきました。

具体的な解剖学用語を聞いたときに、果たして学生はどこを指しているのか聞いて理解できるだろうか、ということ。またトップ選手が長年の鍛錬のすえにたどり着いた感覚を言葉で表現した時にそれを理解しきれるのか。

そのようなことを頭に浮かべながら話を聞いていました。

 

私は知識と経験から、体を触ることで筋肉や骨格バランスの状態を把握し、基本動作から身体の癖を解析することはできます。そして選手からコーチャーの言葉を聞いて、コーチャーはこの選手に何を教えたいのだろうか推理していきます。可能な限りコーチャーが考えているであろうことを別の表現や体の動かし方をして説明していくことで、選手のパフォーマンスが上がるように努力します

 

 

ダンスを習う際には、非言語でテクニックを盗むことも必要ですが、いかに言語化された指導内容の意図をくみ取って理解するかも重要です。コーチャーの言葉をきちんと理解していない、間違って理解する、ことで身体を傷めることがあります。そうなったときにコーチャーの言葉を翻訳して選手に伝えてあげるのことも私の仕事だと考えています

 

 

甲野 功

 

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