開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
テレビ東京で放送している番組で「カンブリア宮殿」があります。毎回企業のトップや重要人物をゲストに呼び、事業内容について司会の村上龍さん、小池栄子さんとトークをする経済番組です。
鍼灸マッサージ師になってから、職場の先輩に言われてずっと視聴している番組なのですが、先日やっと出てきてくらたという企業が登場しました。
それは鈴廣です。
鈴廣は小田原の蒲鉾(かまぼこ)メーカーです。150年の歴史を持つ老舗企業。蒲鉾メーカーのトップランナーといって過言ではないでしょう。
実は鈴廣は私が模範とする企業の一つなのです。鈴廣から受けた影響は大きなものでした。
私が鈴廣を知ったのは、2011年のゴールデンウィーク、初めて「鈴廣かまぼこの里」を訪れたときでした。
それまで何となく名前は小田原・箱根に行くと看板を目にしていたのですが特に認識していませんでした。妻がかまぼこの里に行ってみたいということで小田原と箱根湯本の間にある風祭駅で下車しました。
そのときは3月に起きた東日本大震災の後。震災の影響で静まり返った箱根が、賑わいを取り戻そうとしていた時期でした。震災直後には観光客が激減し日本そのものが先行き不明でした。そこから自粛していても仕方がない、元気になっていこうという時期。人が消えていた伊豆、箱根、小田原にもゴールデンウイークで人が戻りつつありました。
私は柔道整復師国家試験を終え、新しい職場に移っていました。そして子供がなかなかできず妊活に取り組んでいた時期でもありました。退職、国家試験、東日本大震災、転職、不妊と色々なことに悩み迷い決断を迫られる数か月でした。このような目まぐるしく変化していた時期に受けた「鈴廣かまぼこの里」での衝撃は忘れられません。
鈴廣かまぼこの里は鈴廣本社があるとともに、かまぼこ博物館、えれんなごっそ、すずなり市場、千世倭棲がある複合施設でまさにかまぼこのテーマパークでした。
かまぼこ博物館では蒲鉾作りに資料館であり、蒲鉾作り体験もできます。さらに蒲鉾の下に置く板絵を加工したギャラリーまであります。小学生の子どもと来たら、夏休みの自由研究がここだけで済んでしまうことでしょう。
えれんなごっそはバイキング形式のレストランで美味しい食事を好きなだけできます。キッズスペースもあり、後に父と妻、娘と入りましたが、三世代でも楽しめる場所でした。
すずなり市場は鈴廣の商品を売る店舗ですが、蒲鉾に限らず揚げ物、ジャム、関連商品を多数取り揃えています。そのほとんどが試食可能で試食するだけでお腹いっぱいになるほどです。食事スペースもあります。
千世倭棲は古民家を移築した4つの食事処の総称です。書院造り、合掌造り、総漆塗りの土蔵と都会では目にすることがない昔ながらの建物で食事をすることができます。建物自体が文化的価値を持ちます。
このような幾つも施設を有する鈴廣かまぼこの里。そこで見て感じたことは、伝統と革新、求心力と遠心力、二つの異なる方向性を徹底的に行っている百年企業の姿でした。
まず本業である蒲鉾作りに真摯に取り組んでいるということ。
機械化するところはそうして生産効率を上げているのでしょうが、手作業にこだわるところは妥協せずに職人技を継承しています。聞いた話ですと人工の旨味(平たくいうと味の素)を使わずに蒲鉾を作れる数少ないメーカーだそう。一本数千円の蒲鉾があり、かつては宮内庁に納めていたとも。
更には新月・満月のときにしか作らない最高級品があるそうです。新月と満月のときは海水の成分が変わり一番味が良くなるとのこと。本店と小田和店でしか販売しない幻の蒲鉾。ここまで突き詰めるとほとんどオカルトのレベルです。
それほど蒲鉾作りに執念を燃やしています。カンブリア宮殿では最先端の計測機器で蒲鉾を研究し、職人技を科学的に解析していることも伝えられました。
どれくらい違いがあるのかはすずなり市場内にある蒲鉾バーで食べ比べすることができます。確かに高級品は違うと納得できました。最高級から大量生産まで、どのゾーンも網羅しています。
そして蒲鉾の可能性を常に追求しています。
蒲鉾に絵や文字、写真をプリントする「ぷりかま」。結婚式の引き出物や孫の描いたイラストをプリントしておじいちゃんおばあちゃんにプレゼントするなどしています。他にもトミタのミニカー(通称トミカ)とコラボしたトミカかまぼこ、リカちゃん人形とコラボしたリカちゃんかまぼこ、などの子ども向け商品もあります。
ドライブ中のおつまみ用の蒲鉾、ワインや日本酒に合う蒲鉾、といった細かいシチュエーション毎の製品も開発しています。更にフランス料理や高級料亭などに営業をかけて蒲鉾を使った新メニューを提案したり開発したりしています。
これらの企業努力のおかげで蒲鉾の消費量は年々減少しているにも関わらず、鈴廣の売り上げは上がり続けているのです。加えて地元小田原の同業他社メーカーにも技術を教え、小田原かまぼこ桜祭りというイベントにも手伝い小田原の蒲鉾を盛り上げようと尽力しています。
本業の蒲鉾作りだけでなく、派生する事業展開も目を見張るものがあります。
例えば、蒲鉾に作る際にでる魚の皮や骨や内臓から良質の肥料を開発し、農業に還元する。育った野菜を鈴廣のレストラン(えれんなごっそ)で提供する。また蒲鉾作りで出る廃棄物を利用した箱根ビールの開発。蒲鉾以外の料理も楽しめるレストラン経営。正月の風物詩、箱根駅伝への協力。
職人集団のマニアックな視点にならず、様々な手段を使い世間に打って出ています。
カンブリア宮殿では先代が周囲の反対を押し切り、手作業のみだった生産工程に機械化を進めたこと、本社を小田原から風祭に移転したこと、などが放送されていました。
<老舗であって、老舗にあらず>
守るべきところは大切に守るが、それにすがってしまってはいけない。常に挑戦していくことが大切だと言います。
まさに「伝統と革新」。変化を恐れず時代に合わせてきたところだけが生き残り老舗と言われるようになる。そのことをはっきりと示していました。
そして求心力と遠心力、二つの力がとてつもなく強いのです。求心力と遠心力はかなり前にプロレスメディアで頻繁に使用された表現で比喩です。
求心力→伝統を追及して本分を全うする
遠心力→蒲鉾を軸にどれだけ外に広げていくか
このような意味になります。内に内に深堀りする力も外に外に出ていく力も必要で、そのどちらも大きい。そのような印象を受けました。
鈴廣の取り組みは、伝統医療たるあはき(按摩指圧マッサージ鍼灸)にも言えることです。軽く千年はある伝統を守りつつも、いかに現代に合わせて変えていくか。
時代遅れではいけないし、昔ながらの技術を疎かにしてはいけない。時代に合わせて積極的に変化をしていき、常に治療技術の研鑽を積む。
どちらの力もつけていかないといけないでしょう。
2011年のゴールデンウイークから、鈴廣は私が理想とする企業の一つとなりました。
治療をすることを追求するも、適応範囲を広げていく。治療、機能回復訓練からリラクゼーション、美容など。正反対に見えてそれは地続きである。どちらの方向にも追及していく姿勢を学びました。
のちにあじさい鍼灸マッサージ治療院を開業しますが、鈴廣で学んだことを少しでも体現できるようにと想い今のようなスタイルになっています。
甲野 功
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