開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
昨日7月23日、猛暑を通り越して酷暑という記録的な暑さの中、千葉県幕張の関東鍼灸専門学校にて開催された鍼灸業界セミナー、通称「カテンセミナー」に参加してきました。
正式名称は別にあるのでしょうが、司会の新屋翼氏の提案によりカテンセミナーで統一することにします。なお、カテンとは関東鍼灸専門学校(非)公式キャラクターであるカテンくんから取っています。
関東鍼灸専門学校に訪れるのは2回目。前回は業界内において画期的なセミナーであり、私自身大きな影響と新しいで出会いがありました。今回も講義内容もさることながら新しい交流を求める意味で千葉に向かいました。
前回同様zoomによる生配信があり(岡野浩人先生担当)、更に広報担当としてカメラマン(野村森太郎先生)がいました。なおどちらも現役バリバリの鍼灸師であり臨床に出ています。メディア能力を兼ね備えた鍼灸師がいることで従来とは違うセミナーを実現しているわけです。
主催の関東鍼灸専門学校さんもそうですが(手作り料理を用意しておくところまで含めて)裏方のスタッフの能力が高いことで斬新なセミナーが実現していることを最初に触れておきます。
古臭くない
これは伝統医療である鍼灸にとって重要なポイントです。古臭くないために最新器材を使いつつも泥臭い人力でセミナーを成功に納める。元が鍼灸師という職人でありながら、時代の流れを掴む。
こういったところが仕事をしないで私が千葉まで足を運ぶ理由の一つです(仕事の一環といえばそうなのですが)。
そして受講者もセミナーを構成する重要な一員。半数が学生でしたが、半分は現役鍼灸師。神奈川県や遠く宮崎県からも駆けつける先生がいました。顔見知りの先生もいますし、SNSでしか知らない先生もいます。その場に立ち会うことに意義を感じている人達。受講者も相当な顔ぶれでした。
そして登壇者はもちろん相応の方が集まっていました。
前田真也社長、倉内夕先生、川井大輔先生、新屋翼先生(司会)。
一人一人個人的な感想を書いていきます。
●前田真也社長
鍼灸業界ではとても有名な社長です。カリスタ代表取締役社長。本当に稀な、鍼灸師ではない経営者。そうでありながら業界や鍼灸師の事をよく理解しています。私も含めて多くの開業鍼灸師は術者であり、経営者でもあります。どうしても治療の方に優先順位が高くなりますから、業界に精通した経営のプロはありがたい存在です。
鍼灸に限らず治療院業界に入ってくるコンサルタントは多いのですが、あまり現場を分かっている人は多くないように感じています。数字を見たうえで、既存の成功例を集めて、ビジネスセオリーを掲げて、口を出すことが多いように思います。過去のデータを見ているというか。
それが前田社長は将来を見越して話をしています。
また一般企業で本当にマーケティングをしてきた経歴があります。イノベーター理論が講演で出てきましたが、鍼灸業界でこれに触れるのを初めて見ました。個人的にマーケティングやビジネスの勉強をしていますが、あの表を見たときは本当に鍼灸師(学生)向けにこれをするのか!とうなりました。
もう我々はアーリーアダプターとかラガードとか知らなければいけないワードになるのであろう、と感じました。前田社長はおっしゃっていたように専門学校では経営の勉強はしません(できません、暇もありません)。そして私のように独学で勉強しつつ開業して日々何とかやっていくという人間が多いことでしょう。ちょうど当日も行き帰りの電車で経営本を読んでいましたが、必要な分野です絶対に。それは「中の鍼灸師(従業員として働く)」でもこれからは必要。
鍼灸師ではない経営者ということで素直に聴けることがあります。鍼灸業界にこのような人がいることは我々にとって大きな財産です。これから「しんきゅうコンパス」(前田社長が運営する口コミサイト)にもっと手を加えようと決めました。
●倉内夕先生
美容施術の実技デモを行ってくれました。お名前をよくSNS上で拝見する有名な方です。今美容鍼灸がとても業界で流行っていますが、倉内先生の施術は鍼と手技で構成されていてトータルで施術が完成するイメージでした。
先生はあん摩マッサージ指圧師でもあるので手の使い方が繊細で、きちんと「指圧」と「マッサージ」を分けて使っていました。皮膚をなるべくずらさないで圧をいれていく指圧、手指を密着させて滑らせていくマッサージ、使い分けがしっかりしていて、かつする目的もはっきりしている。同じ術者として技術にポリシーを感じました。デモをみて、私はこれまでちょっとなあなあで手技をしているところがあったと反省しました。
私は鍼灸師である以前にあん摩マッサージ指圧師であるというポリシーで、鍼灸よりも徒手療法の方が比重が高いのです。ですから手技療法を実際に見ることができたのは大きな収穫でした。もちろん鍼の打ち方、刺す場所、選ぶ鍼の種類など鍼実技も参考になるのですが、比較的私がやっているやり方に近いものでルーツが近いのかな、と感じたものでした。
あん摩マッサージ指圧師、鍼師、灸師の3つの資格を持つあはき師のまとまった技術。
とにかく手技の方で試してみよう真似てみようという発見が多かったです。顔にアプローチをしてから頭皮に行くという順番も私は逆にしているので参考にしようと思います。
●川井大輔先生
某団体の人間でありながら個人として登壇するというテイ。そのためあまり細かく内容に触れていいのか悩むところです。
一番の収穫と驚いたことが、無資格者マッサージの問題について対策を練っている最前線の話が聞けたことです。今後の私の仕事に大きく影響することなので重要な課題なのですが、厚生労働省の議事録を読んだだけでは理解できなかった内容を知ることができました。この情報を得ることができただけでも行った甲斐があったというもの。
あまり交流がなかった業界団体の人のあくまで個人としての話はとても面白かったです。学生時代だったら、従業員時代だったら、感じなかったであろう驚きでした。あくまで個人の話としてですが、業界団体が行っている取り組みや意義、問題点を紹介してくれた川井先生。このようなことを知る機会に恵まれて良かったです。わざわざ知ろうとしない部分だったので視野が広がりました。
(書いている自分ですらもやもやしてしまう表現ですみません。)
●新屋翼先生
セミナーの司会、仕切り役。三重の先生なのに千葉までやってきて講演もデモもしないというある意味斬新な立ち位置でした。
鍼灸業界のセミナーはどうしても真面目一本になってしまいます。当然それが当たり前なのですが、雰囲気を変えることで集中力を上げる、散漫になった空気を戻す、といった工夫があるわけです。前回、現役の鍼灸師が学生に鍼の施術を見せるセミナーでも裏方の岡野先生や野村先生が中だるみしたことを反省していました。
セミナーをイベントしての視点で見られるところが、古臭くない、感じがします。登壇者がどうしても話す内容で頭がいっぱいになるところを受講者の目線で質問を入れたり、フォローを入れたりする。細かい補完作業が凄いわけです。
前回の関東鍼灸さんのセミナーでも感じたのですが、ただのセミナーではなくイベントであること。参加者(登壇者、受講者、裏方含めて)がみんな楽しめる、それでいて役割を全うするイベントだったと思います。
鍼灸師が鍼灸だけできれば良かった時代が終わり、専門学校は学生に勉強を教えていれば成り立った時代も終わりかけ、ただ受け身でセミナーに参加するだけはいけない時代に、なったのだと。
甲野 功
コメントをお書きください