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指圧の大部分を占める押圧操作。これは指や手掌(手のひら)で押す動作のこと。
押圧操作には基本圧法が6種類あります。
その中に基本と言いながらほとんど臨床現場で使わない、いや使えない、使う場面がない、という技術があります。そのひとつが衝圧法です。
教科書における衝圧法の説明です。
『
漸増圧で一定限度まで押圧し、そこで衝圧の圧度を定め、急に押して、すぐ放す圧法である。衝撃圧による患者の防衛反応を少なくし、苦痛を最小限にし、通常圧法に比してよく反射作用を喚起する効果がある。衝圧法が過度であったり、衝圧の方向を誤ると、弊害を来す虞がある。
』
よく分からない書き方ですね。分かりやすい言葉に置き換えると
『ゆっくりと圧を入れていき、そこから更にどれくらい押すか決めて、グッと急に押してすぐに手を放す押し方。強い圧を入れることで起きる患者さんの身体の防衛反応を少なくし、苦痛を最小限にとどめる。通常の押し方に比べて患者さんの身体の反射作用を喚起することができる。入れる圧が強すぎたり、圧の方向がおかしかったりすると、患者さんに害になる危険があります。』
といったところでしょうか。
更に擬音を入れてどのような動作になるか書いてみると
『グーっと押して止まったところから一気にフンっと強く圧を入れてパッと放す』
という感じになります。
この技法は教科書に<苦痛を最小限にし>とか<弊害を来す虞がある>など記載されている通り、割と危険な手技です。私が習ったときは手掌で行って指の先では行いませんでした。衝撃が鋭くなるので面の広い手掌で行うように配慮されていたのでしょう。具体的には両手を重ねて腰骨の上に添えて、圧を入れる方法をしました。
圧が強くいため肋骨骨折を起こす危険があると注意を受けました。
この衝圧法、型もやり方も知っていますし練習しましたが、臨床で使ったことはほとんどありません。
体格がしっかりしている若い人にしかできません。もちろん骨粗鬆症がありそうなお年寄りには絶対にできません。
それでいて受けてみて気持ちの良いものかというと疑問がわくもので、ウっと衝撃が体を貫きます。専門学校の指圧の先生は連続で生徒の衝圧法を受けて体調を少し崩したことがあるそうです。それだけ身体に負担がかかる技法なのです。
このような一見役に立たないような技術がなぜ基本圧法に入っているのでしょうか。
ここからは私の推測ですが、技法として知っておく、そして技術として残しておく必要があるからだと考えています。
指圧はもともとアメリカの整体(カイロプラクティック、オステオパシー、スポンディロセラピー)を取り入れて作られた経緯があります。整体のスラストという関節の遊びを取るくらい関節を曲げてそこから一気に圧を入れる手法と似た力の使い方をします。
指圧に取り入れるときに残しておくテクニックだったのではないでしょうか。
実際に衝圧法を行うと持続の原則とは真逆であり、一瞬で<圧を入れて放す>を終えます。よって術者にも反射神経が必要で運動神経を求められます。
武道にある近距離の突きのような感じでしょうか。表面ではなく内臓に響かせるような。
衝圧法ができれば指圧の技術が向上するのは間違いないでしょう。
臨床では不利益を起こす危険性が高いので、使用することがまずありません。決して素人が真似しては行けないものです。しかし指圧技術を磨く意味では、基本として残してくべきものなのでしょう。
甲野 功
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