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~「勉強する」ことと「国試対策」の違い~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 鍼灸マッサージ科卒業パーティー
院長が鍼灸マッサージ科を卒業するときのパーティーの様子

 

 

先週はしんきゅうBBQに参加しました。

先月はカテンセミナーに参加しました。

5月には鍼灸専門学生向けの鍼灸施術見学会にも参加しました。

これらの機会を得たことにより、昨年末から現役の鍼灸専門学生と接することが以前よりも増えました。またSNSによりリアルタイムで鍼灸専門学生の心境や状況が耳に入るようになってきています

最近、本当に思うことはもう先輩鍼灸師の話を鵜呑みにしてはいけないなということ。私も資格を取って10年の鍼灸師でありますから、現役学生と話せば“先輩鍼灸師”にあたります。その際に「自分の頃はこうだった」という話が通用しない。環境、状況が大きく変化してしまっている。それを実感しています


例えば「学生時代は勉強しなかったけど、今は立派にやっていますから、学生の皆さん安心してください。」というパターン。セミナー等で講師役の現役鍼灸師がこう語ることがよくあります。今ではこれは通用しないでしょう。私が国家試験(以後、国試と書きます)を受けた頃は一番合格者数が多いくらいの頃。合格率も高かったのです。現役生ならばそうそう落ちる試験ではありませんでした。それが、昨年度(2017年度)の鍼灸国家試験合格率は衝撃的な低さになりました。確実に「合格させる問題」から「落とすための問題」になった感じです。そもそも受験者数も減っています。更に合格率が下がっているので私が国試を受けた頃よりずっと狭き門になりました。更に今年度(2018年度)からカリキュラムが新体制になり、これまでよりも授業数が増えて専門学校の卒業要件が厳しくなりました。現在の1年生が3年生になる頃にはどうなっているのか分かりません。

 

私の頃は本当に勉強していなくても、だいたい合格できました。いや本当に勉強しなければ国試に落ちますから「先輩鍼灸師」になっていませんね。今の鍼灸専門学生には、勉強しなくても何とかなるよ、というのはかなり無責任な発言となり<鍼灸ゆとり世代終了>などという言葉も出ました。それくらい鍼灸資格を取得するのは厳しくなっています。国試に落ちてしまっては3年間の時間と学費が無駄になってしまいます。全体的に、浪人すると合格率が大きく下がることは厳然たる事実であり、年々問題が難しくなっているので現役生で合格しておかなければ後が更にきつくなります。

 

このような現在の状況を踏まえた上で、それでも現役の学生に敢えて言っておきたいことが、勉強すること国試対策をすることはイコールでは無いということです。臨床に出る上で最低限必要な事が国試に出ます。ですから国試に受かるだけの勉強は絶対に必要です。だからといって、国試対策として
4択問題をひたすら解く
過去問題だけに集中する
出題されそうなところだけを覚える
配分の少ない科目は捨てる
といったことが「鍼灸専門学生の勉強」とは言えないと考えています。

確かに勉強ではあるのですがそれは、試験を解くための、国試に受かるための、行為であって、鍼灸師として臨床に出るための勉強とはちょっと違うのではないでしょうか国試本番前になればこういった内容になるのは仕方ないことだと理解しています。基礎を固める1年生の時期からこのようなメンタルなのは違うと思うのです。

 

4択問題は必ず正解があります。試験を解くというのは、出題者とのコミュニケーションと言えます。出題者が想定した最適解を出すためのもの。誰が見ても納得できる正解があることが前提です。対して臨床現場ではそのような正解があることは稀です。確実な不正解ははっきりしていても、正解と思われる選択肢がいくつかある感じです。もっと言えば出した答えを正解にしていくこと、と言い換えることができるかもしれません。患者さんに施した方法が正しいかどうかは、誰にも事前には分かりません。その判断が正しいかなど分からないのです。その不確かなものの精度を上げるために、経験を積み、情報を仕入れ、勉強し、技術を磨き、患者さんをよく観て知ろうとするのです。

 

国試の問題を解くことは大切なのですが、その先を見据えていないと資格を取得したあとに苦労します。というのも、私は鍼灸マッサージ科と柔道整復師科を出て2回の国試(計3日間、4つの資格)を経験していますが、クラスメイトで国試対策ばかりしていた人で、卒業後に活躍している人を知らないからです鍼灸マッサージ科では「ここは国試に出るから」が口癖だった人がいました。1年生の頃から国試対策の勉強会を同期と開いていました。私も一度参加したのですが試験にしか目が行っていなくて、それが不満であり、一度きりで参加しなくなりました。この人が現在何をしているか聞きません。また他の鍼灸マッサージ科の同期に「過去問検討した?」とよく話しかけてくる人がいました。とにかく国試の過去問を研究していましたね。成績優秀者であり、卒業式で表彰されていました。ですがこの人も今何をしているか分かりません。この業界は結構狭いので関連の仕事をしていればどこかで噂を耳にするものなのですが。現在何をしているのでしょう?。

 

柔道整復師科ではいつも国試過去問題集を携えて授業を受けている人がいました。その人はいつも成績上位でした。この人とは卒業後、一日だけある整形外科で一緒に働く機会がありました。そして驚いたことに、全然基本ができていませんでした整形外科ですからかなりの数の患者さんが来院されて、医師の診断を必要としない再来院の人や軽い症状の方を5~6名の柔道整復師がこなしていきます。足首を捻ったというよくある症状の患者さんに対して、かなりずれた事を聞いていました。遠目にそれを見ていて、学生時代あれだけ優秀だったのに?と疑問符が浮かびました。それとなく他の同僚に話を聞くと、「あの人、知識はあるけれど患者さんを目の前にすると機転が利かない」という評判でした。一日一緒に働いてみて確かにそうだと意見に納得しました。その後、噂でその整形外科を辞めたと聞きました。今何をしているのか分かりません。

 

鍼灸マッサージ科、柔道整復師合わせて120名くらいの同期の話です。国試対策をしていても現在活躍する人は多数います。反対に学校の試験は赤点ギリギリもしくは再試験ばかりで学力に難があった同期が院長として活躍している場合もあります。試験対策に集中し過ぎて国試合格がゴールになってしまった人は臨床に出てから大変になるのでないかと言いたいのです。国試合格はゴールではなくスタート地点ですスタート地点にすら立てなければ話にならないわけですから、国試対策に奔走するのは分かります。ですが、あくまで国家試験の先に臨床という本分があることを今の学生に理解してもらいたいです

 

それは国試に出ないからやる意味がない
4択問題さえあればいい
実技は国試に出ないからどうでもいい


現役の学生にそういった意見があることを聞くと、老婆心ながら不安になってしまいます。

臨床現場は誰かが正解の選択肢を用意してくれていません。選べばいいとは限らないです。国試対策は必須ですがそれが目的になった勉強は卒業後が大変だと考えています。

 

甲野 功

 

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