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「LIFE SHIFT」(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット(著))という本がヒットしました。
この本ではほとんどの人間が今後100歳まで生きるという<人生100年時代>が到来すると述べています。確かに医療の発展、生活環境の改善により、平均寿命が世界的に伸びています。現在50歳くらいの人は大多数が100歳まで生きる未来が予測されているといいます。
長寿国である日本はなおさらのこと。平均寿命は右肩上がりで伸びているのは確か。
私の実経験からも、どんどん年をとらないようになってきていると感じています。
私が子供の頃、今から30年くらい前の頃、70歳は相当な高齢者で今の感覚だと90歳くらいのイメージでした。子供の目には(悪い表現ですが)よぼよぼ。本当に「お年寄り」という感じでした。それが今の70歳は30年前の50歳くらいのイメージがあります。働いている人も多く、隠居している感じがありません。
他に例を挙げれば、国民的アニメ「サザエさん」の登場人物、磯野波平さんの年齢は54歳という設定。頭頂部には髪がほとんど残っておらず、仕事も引退したような雰囲気。今の54歳とはかけ離れています。奥様の舟(フネ)さんが52歳。今の感覚だと70歳くらいの印象を持ちます。
伝説のアイドルと称される山口百恵さんは21歳で引退しましたが、当時の貫禄は今の30代半ばくらい大人びていました。今の大学4年生の年齢には到底見えません。
故石原裕次郎氏も故美空ひばりさんも50代半ばで亡くなられていますが、私の子供心には、おじいさんおばあさんが病気で亡くなったという印象でした。
確実に、人は以前よりも老けていない、気がします。
理由は身体的、精神的ストレスが減ってきていることが挙げられるでしょう。戦争で生きるか死ぬかの経験をした、厳しい農作業に幼いころから従事してきた、交通網が発達していなかったため毎日長距離を歩いて通学していた、というようなことが無くなってきています。
ハラスメントに敏感になった現在では、子どもにも大人にも、表向き過剰な圧力をかけることは無くなってきています。
私が子供の頃ですら、部活中に水を飲むな、教師に殴られる、というのは珍しくありませんでした。今では発覚したら大問題になることでしょう。
身体の負担が少ないので消耗されておらず、今のお年寄りは30年前よりずっと元気です。
外を歩いていて、腰も膝も曲がって顔は皺だらけという老人が本当に減ったと思います。前はもっと目にしたような記憶があるのですが。仕事も定年がどんどん先送りになり、ゆくゆくは70歳くらいに定年が引きあがるだろうとも言われています。
また感染症対策は進み、画期的な悪性新生物(がん)の治療方法が生まれてきて、再生医療の研究が進み、病気や怪我で命を落とす確率は、戦後よりも遥かに下がってきています。戦争や大災害が起きれば別ですが、不慮の事故死も減る傾向でしょう。乗用車の自動運動技術が進む中、交通事故もより減っていくことが予想されています。
本当に多くの人間が100歳まで生きるようになるのだろうと予測できるのです。
そうなるとこれまでの考え方、仕事の仕方が通用しなくなるというのが「LIFE SHIFT」の主張です。
教育(学生時代)→仕事(社会人時代)→引退(退職後の老後)というこれまで普通だった人生から、何が起こるか分からないマルチステージの人生へと様変わりするといのです。マルチステージとは退職後に新しい物事を始める、同時進行で複数の事を行っていく、というような意味合いで使用しているようです。
100年生きるとなると、例え65歳で定年退職したとしても、あと35年、短く見積もっても30年くらいは生きる計算になります。そうなると、どう考えても年金では生活費を賄いきれないでしょう。70歳になっても80歳になっても自ら仕事をして生計を立てる仕組みを持たないと厳しくなるはず。
何よりそれだけの超高齢化社会を人類は経験したことが無いので実際にどのような状況になるか予測できません。高度な機械文化となり人間は労働しなくて済む未来なのか、高齢者はお金が無いために餓死していく未来なのか、誰にも正確には分かりません。
どうなるにせよ(今でいう)現役世代のうちから第二、第三の人生を送る準備が必要だというのは確かだと思います。
その準備をしていきましょう、と「LIFE SHIFT」は述べています。具体的な方法はここで挙げませんが、大雑把にはこれまで上手くいってきた考えは捨てろといいます。
定年退職まで働いても、そこで終わりではなく次のステージが待っている。だから交友でも趣味でも事業でもいいので、家族・会社の他に第3、第4の居場所を持つことを推奨しています。
これからは副業をしてみる、新しいコニュニティを作ったり入ったりして交友関係を広げる、常に勉強をして新しいことを学ぶ、などの取り組みが必要になります。
そうなると鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師として技術を学び独立開業したことは良かったと考えています。
自分の裁量で物事を決められる立場を得たわけですから。
会社を退職したら何の価値もない人になる恐怖は無くなりました。
私は新卒で半導体商社に入り、その直後にITバブルがはじけた経験があります。個人の実力と関係なく世界情勢によって環境が激変することを目の当たりにしました。
当時は新入社員でしたからバブル崩壊の影響は皆無でしたが、年上の先輩社員や関連会社の上役がリストラや転職を余儀なくされる状況を目の当たりにし、先行きが不安になりました。
麻疹に罹患したことを引き金に脱サラの道を選択するのですが、大学を卒業してから常に<この組織に所属していて大丈夫か>、<組織の看板が取れたらどうなるか>、という懸念がありました。
(実際に効果があるかどうかは別として)4つの医療系国家資格を取得し、自ら個人事業主として職場を立ち上げてそれを4年間継続することまでしました。その気になれば、またどこかの職場に入ることも、別のバイトをして生計の足しにすることも、治療とは別の副業をすることも、できる環境は作っておきました。この事実は大きいのです。
「LIFE SHIFT」には3つの無形資産(直接換金できない人間力のようなもの)というものを提示し、大切だといいます。
それは
・生産性資産(スキルや知識):国家資格やこれまでの経験、知識があてはまる。
・活力資産(健康・友人・愛など):社交ダンスの経験、健康な体、家族、友人などがあてはまる。
・変身資産(変化成長し続けるための意思と能力):現状に満足しないこと、環境を変えることを恐れない気持ちがあてはまる。
の3つです。
どれも私自身にあてはまるものがありました。
これまでの人生で一番の転機は20代前半で脱サラし、のちに鍼灸マッサージ専門学校に入ったこと。それまで浪人も留年もすることなく大学を卒業し企業に就職した安定志向の私が大きく舵を切った出来事。この経験が文字通り「LIFE SHIFT」だったと思います。
鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師という職業・資格・生き様があったことが全ての出発点。手前味噌ながら新しい人生を切り開く力が鍼灸やマッサージにはあると考えています。
人生100年時代に向けて、現在会社員でくすぶっている感じがある方には、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師を目指すという選択肢はありだと思います。そう簡単な道ではありませんが、100年時代を生き抜く大きな助けになるのではないかと私は考えています。
甲野 功
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