開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
今週月曜日は溜池山王の橋本鍼灸院を訪問しましたが、次の日火曜日には遠く大阪府河内長野まで行ってきました。
「さまんさ鍼灸院」に鍼灸治療を受けに行ってきたのでした。
「さまんさ」とは院長のあだ名です。本名は新名さんですが、“さまんささん”で通っているので以後さまんささんで表記します。
今年の夏にさまんささんがうちの治療院に来てくれたので、お返しに行こうと考えていました。
さまんささんは社交ダンスを夫婦で始めた関係で、鍼灸×社交ダンスという珍しい組み合わせが私との共通点。更にこれも繰り返しになりますが先月の小児鍼講習会「えみすけセミナー」にも参加されていたので、大阪在住にしてはよく会う同業者です。
さまんさ鍼灸院訪問は、都内や関東ではないので一日がかりの大イベントになりました。そのことを振り返ります。
大阪は会社員時代に何度か出張で訪れた場所。全く観光した記憶がなく、日本第二の都市でありながらほぼ知らないに等しい土地です。大学の後輩を競技会のために応援に行ったこともありますがいわゆる弾丸ツアーで、東京始発新幹線で向かい夕方に新大阪を出発するという感じ。本当に土地勘がありません。
河内長野とはどこら辺にあるのか、どのような場所か全く見当がつきませんでした。調べると新大阪駅から電車で1時間くらい。想像以上に遠い。
そもそも新大阪は京都よりも先にあることも忘れていました。
7月の京都訪問で痛い目を見ているので事前に調べ、欲張って他の計画を入れないように心掛けました。
子どもを保育園に送り(最近はスムーズに行ってくれるので余裕がありました)、東京駅には9:30には到着。10:00発の新幹線に安心して乗ることができました。新大阪駅に着くと一駅隣の大阪駅へ。そこから環状線。大阪にも山手線のような環状線があることをここで初めて知りました。新今宮駅に到着。
ここまで連結が良く一本早い電車に乗っていました。そこから南海線に乗り換えるのですが、東京に比べると以上に電車のドアが閉まるのが早く、確認する暇もなく来た車両に飛び乗りました。行先は間違っていないことは確認済み。しかしそれは各駅停車。途中で準急に乗り換えて結局予定通りの時間に最寄り駅に到着しました。
初めての土地はどうもミスが多い。更に電車内で読もうと思った本は既に読み終えた本が入っており、不必要な荷物を大阪まで運んで東京に持って帰るという無意味さ。細かいミスに気持ちがやや沈みます。
最寄り駅につくと、なるほど結構な田舎でした。
ひとつ前の駅から急に自然豊かになった感じです。こちらで言うと本厚木から秦野に変わったような。田舎ですから、と聞いていましたが、想像よりも少し上を行っていました。
駅ではさまんささんが車で迎えに来てくれてさまんさ鍼灸院まで連れて行ってくれました。
さまんさ鍼灸院に着くと鍼メーカーである「ファロス」(この当時)の営業担当次村氏も合流しました。
事前に次村氏が来ることも知っていたので二人に神楽坂の和菓子をプレゼントしました。第一候補だった五十鈴が臨時休業で第二候補の梅花亭のものになりました。これもちょっと誤算です。
さっそく鍼灸90分を受けることに。
入江FTという私は知らない流派のやり方で脈をみて、特有の装置と臍の箱灸をしてしばらく寝ます。まずリラックスさせるということでした。20分ほど横になります。このとき私は意識が飛んだ覚えはないのですが眠っていたようです。目をつぶっていると目の前に青い光が見えたような記憶があります。
入江FTの脈診は、これまで私が知っている脈診とは異なっており生まれて初めてみるもの。まあまだ鍼灸は知らないことがあると実感。
そこから
置鍼(鍼を刺してそのままにしておく)、
隔物灸(皮膚とお灸との間に空間もしくはものが介在したお灸。暖かい。)、
透熱灸(艾を捻って皮膚の上で直接燃やして熱を体に伝える)、
灸頭鍼(鍼の上に艾を丸めて火を点ける。鍼と灸の同時刺激。)、
刺絡(しらく。伝統的な鍼技術。)、
吸玉(吸角とも。カップを陰圧にして皮膚を引き上げる)
など多くの鍼灸技術が出てきました。
受けるのが同業者であるので、その都度説明を加えて行います。横で見学している次村氏(彼は鍼灸師ではないので技術的な知識はほぼありません)にも解説する意図がありました。
ポートフォリオをいう言葉を投資家が使います。これは株だけでなく、国債、社債、海外通貨など複数の銘柄に投資をしてトータルで運用するような意味。一社の株式に全額投資してこけると大損害ですから、リスクを分散して利益を出せるように工夫するわけです。
治療にも同じようなことが言えて、私は結構異なった方法を使う(複数の刺激を入れる)ことが常です。按摩指圧という徒手手技と鍼、という風に。
複合刺激にして単一では効かなくとも合わさって効果が出る可能性がある、もしくは片方がダメでももう片方が効果を出すかもしれない、という考え。
人によっては、どれが効いたのか分からないからダメだろうという意見もありますが、患者さんに効果が出る確率が高いものを選ぶ意味で採用することが多いのです。もちろん鍼刺激だけでないといけない場合もあります。鍼は絶対嫌だという方には鍼はしません。臨機応変に変えますが。
さまんささんは鍼灸というジャンル内で複数の技法を使っている感じです。東洋医学的な意味の鍼灸、解剖学的な意図で刺す鍼、血流改善に注目した吸玉や刺絡といった感じです。ポートフォリオ的というか。
最初から最後まで経絡治療、中医学、現代鍼灸(3つは主な鍼灸の流派です)のどれかで完結する術者もいますが、さまんささんは組み合わせている。そのような印象でした。
鍼灸師の主義や主張の話になり、何が正解ということはありません。やり方は私と異なりますが考え方は似ているなと感じました。
そして技術面も去ることながら、それ以上に治療にはその人柄や土地柄が出ると考えているので注目しました。
私のような東京都都心部と、目の前に畑や山がある場所とでは、時間の流れが違いますし人の層も異なります。その場所に合わせた鍼灸があると思うのです。私の日常と大きく異なる環境でする鍼灸がどのようなものか体験したかったのです。そういった意味で貴重な体験になりました。同じ鍼灸院という業態かもしれませんが、別物という感覚です。
またさまんささんは今年国家資格を取ったルーキー鍼灸師です。誰もが本当に?と驚きます。それで開業して一人でやっているわけですから。その裏には新人という括りでは見えてこないものがあるだろうと踏んで大阪まで行きました。
治療中もその後もかなり話をしてみて、予想は的中しました。鍼灸を学ぶ前から進路を見据えており、目的のために鍼灸専門学校に入っている。そして学生時代から自ら行動して必要なことを学んでいることを知りました。
また大学や社会人経験があるので鍼灸以前の人としてのベース部分がしっかりしている。
知りたい部分が分かったので答え合わせができたような感覚です。
さまんささんはキャリアがずっと上のしかも教員免許を持っている人に鍼灸をするのがプレッシャーだったようです(しかもわざわざ東京から来る)。ですが、反対に私は学ぶ立場でした。
何度か触れていますが“治療家”としてのキャリアは積んでいると思いますが“鍼灸師としての純度”はさほど高くないのです。今一度「鍼灸」に真剣に向き合うことに決めた私には“鍼灸師の先輩”と言ってよいでしょう。鍼灸を研究しているトータル時間はさまんささんの方が長いと思いますから。
治療後の大阪観光も含めて、とても良い体験でした。先週の金曜から月曜、火曜と3つの鍼灸院に出向いて学ぶ機会がありました。それを自身の力にする作業をしていきます。
さまんささんこと新名悟子先生、そしてファロス営業担当(当時)次村勇人氏、どうもありがとうございました。
甲野 功
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