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先日11月23日に大阪府住吉で
乗り越えよう!産後クライシス ~みんなで考える男女の本音~
というセミナーが開催されました。
講師は以前東京の大塚で小児はりのセミナーを行った長崎絵美先生(通称えみすけ先生)と関東鍼灸専門学校副校長の内原拓宗先生(通称カテンくん)のお二人。
産後に起きる夫婦の問題、いわゆる産後のクライシスについて男女両方の視点から語るセミナーです。
このセミナーは様々な点で大きな可能性を秘めたものでした。
●男性が語る産後クライシス
産後の問題を父親側が語る、講演する。
とても重要な事だと考えています。私自身、現在6歳と3歳の二人の子どもを育てている「子育て世代」真っただ中です。一人目も二人目も産後はそれなりに大変でしたし、今現在も子どもの世話に相当な時間と意識を費やしています。
登壇した内原先生も現在は鍼灸専門学校の専任教員をしていますが、長女が生まれたときは専業主夫として育児と家事を担いました。今もかなり家事、育児を行っています。
現在の日本では共働き世帯が一般的になってきており、専業主婦という概念自体が古臭いものになりつつあります。女性が就職することが当然となり男性に経済的に依存せずに生活できる時代になったにも関わらず、未だに「家庭のことは女性がする・男性は稼いでなんぼ」、という我が国の歴史上わずか数十年続いた続いたにすぎない常識に囚われている状況。先輩世代の言うことが時代にそぐわないことになっています。また時代の変化も急激に進んでいます。
私も育児も家事もしていますが、父親が育児をする壁というか抵抗を感じることがままありました。
産褥ヘルプ(産後1ヵ月の床上げまでの時期を産褥期とよび、この時期に母親はしっかり安静にしないといけません。この産褥期に友人が手助けをする取り組みを産褥ヘルプと言います。)に参加し、産後のママさんのケアをしたり、小児鍼を行ったりしながら、自らの育児と他の家庭の育児環境を比較観察してきました。
そこで感じてきたのは男性が育児をする際の疎外感のようなもの。
女性が産後どれだけ大変かをよく耳にしますし、ネットニュースにも出てきます。知り合いの女性にも、キャリアと出産のことを若い女性に伝えなければ、と活動しているひとがいます。
そこで私が感じているのは、先輩女性(母親になった)が後輩女性(これから結婚出産を考えている)に向けているものばかり。結婚と出産は女性だけするの?と違和感を覚えています。夫、父親になる男性に向けても、しなければ意味がないのではないか。そう感じています。シングルマザーでいいというのなら別ですが。
またその内容も、ママはこれだけ大変なの、パパは使い物にならないから上手く使いなさい、といった印象を受けます。このことは男性で育児・家事をする身になると感じるもの。独身で子どもがいなければ気にも留めないことでしょう。
育児を男もしろ、と主張する反面、パパは子育てには役立たず、ママの方が上、という意識を感じてきました。
内原先生も当日話していましたが、知らない女性に娘の抱っこの仕方を直されたというエピソード。私も似たような経験があります。
我が子を小児科クリニックに連れて行く途中で、知らないおばさんが憐れみを持って構ってくる。あんたじゃできないでしょ、私に任せておきなさい、と言わんばかりに。
はっきいって頭にくるわけです。普段どれだけ子の面倒みていると思っているのだ、と。勝手にうちの子に触れるな、と思いますし。
これが逆の立場で、母親が子どもを連れているところにおっさんが、育児がなっていなあ、と子どもに触れてきたら警察沙汰でしょう。
常にとは言いませんが、私の親世代の女性から男性が育児をすることに対して抵抗を感じます。(ちなみに親世代の男性が、育児は嫁に役割だろ、という人は世間的にまずいのか目にしません)。
このような状況では産後の問題が解決しないでしょう。
男性側からすると女性だけで完結しているように感じます。ネットの意見に「パパは入りたてのバイトくらいの能力しかないからどんどん命令して動かしなさい」というものがありました。このような態度で父親側が率先して動くのか疑問です。家事ハラという新しい言葉が生まれています。
育児経験があり困難を乗り越えて先輩男性が、これから結婚出産を迎える男性に向けて話をしないといけないと、常々感じていました。
ですから今回のセミナーで内原先生が登壇したことはとても大きいことだと考えています。
有名タレントや児童分野の学者などではない、一般人である内原先生が。
自ら経験してきた産後クライシスを踏まえて、男性目線の提案。これからどんどんと男性がプレパパに向けて発信できるようになってもらいたいです。
素直に「育児が大変でどうしたいいのだ」とパパさんが愚痴をこぼせるようになる。「ママはもっと大変なのよ!」「たいして育児なんてしてないでしょ!」と叩かれない。また愚痴れるくらい子どもや家庭について取り組む。先輩パパに相談してもいいのだ、という環境。更には近所のおっさんが育児を手助けしてもらえる未来。そう願います。
そういう世間になっていく流れを、微力ながらこのセミナーは作ったのではないでしょうか。
●ZOOMによる生配信
今回のセミナーはZOOMというアプリケーションにより動画配信されました。私も自宅で子どもにこき使われながら視聴しました。これまでZOOM配信の映る側に立ったことはあったのですが、視聴するのは初めて。大阪という場所でなければ参加したかったので、とても助かりました。
このZOOM配信のおかげで会場に足を運ばなくとも視聴することができた人がいます。誰が視聴しているか分かるシステムなのですが、その多くは男性だったように思いました。全編見ていたのはないので定かではありませんが。
今までは男性側に興味が薄い話題だったでしょうし、(男性側の感覚ですと)男性が立ち寄ってはいけない雰囲気があるセミナー内容だったにも関わらず。
理由は先に述べた男性である内原先生が登壇したことで男性側も他人事に感じなかったことや、内原先生が話すなら視聴しようと決めた人もいるでしょう。またZOOM配信という技術があればこそで、東京と大阪には「3万(円)の壁」と言われる交通費と時間の障壁がありますが、それを取り除いたことが大きいです。
私も自宅で家事や育児をしながらリアルタイムで見ることができて良かった。
ZOOM配信の技術面をカバーしたのが岡野浩人先生です。岡野先生は当日現地入りして配信作業を行いました。それをサポートする大阪のファロス社次村さん(当時、現ユニコ)も現場にいました。
私は今月大阪に行っており次村さんと話をしていますが、その際に今回のセミナーをZOOM配信するか悩んでいるということを聞いていました。さすがに、現地までの往復で交通費だけでも結構な額になりますので、簡単に引き受けるのは厳しい。岡野先生も躊躇しているという情報でした。
岡野先生が動いたことで仲間の男性鍼灸師が注目したという効果があったのではないでしょうか。
●polcaによるクラウドファンディング
金銭的懸念を払拭したのが個人クラウドファンディングであるpolcaを岡野先生が利用したことでした。
polcaにより、目標金額38,000円のところ、174,500円もの支援が集まったのです。これで大阪行きの目途が立ち、自腹で千葉から大阪に向かう内原先生の負担も減らせることになりました。リターンとして「ZOOM配信を視聴できる、録画したセミナーを視聴できる、アフターセミナーに参加できる」があります。
この取り組みが成功したことも大きな可能性を秘めています。これまで実質ボランティア活動のような鍼灸師のZOOM配信が、収益を上げられる事業になるかしれないということ。そうすればもっと大きな取り組みが実現するかもしれません。
また私も支援しましたが、支援することでセミナーが他人事ではなくなり自分も開催した側の一人として視聴できます。何となく見るのではなく。ここに熱が生まれるということが実感できました。
ZOOM配信によりアフターセミナーという、セミナーを聴いたうえで感じたこと、その後取り組んだことなどを語る場が設けられます。一日だけの点だったセミナーを線にすることができるのです。セミナーの在り方を変えるかもしれません。
●他(多)業種の力を結集
内原先生の発表資料の最後に私の名前も載っていました。これは内原先生に微力ながら資料作りの手助けをしたからです。
このように、このセミナーには鍼灸師仲間が多数協力しています。長崎先生、内原先生はともに鍼灸師です。同業の鍼灸師が協力してセミナーを作りました。
更に擬人化イラスト提供をしてくれた一ノ瀬夢子さん、試供品を提供してくれた黒船菓子店さん(よもぎどーなっつ)に(株)カナケンさん(お灸)、現地でサポートをした次村さんと、鍼灸師以外の方のサポートがありました。
どちらかと言うと閉鎖的な鍼灸師業界にあって、このように鍼灸師はもちろん他業種の人々を巻き込んでのイベントを実現できたことは、大きな可能性を感じさせます。
当日はリアルタイムでSNSへ情報を発信してくれた人も多数いました。大阪に訪れる方のために名物料理を紹介してくれた人もいました。
同じ職場でも組織に属しているわけでもない、個人の緩やかな関係と自発的な行動により、「産後クライシス」というやや堅いテーマのセミナーを盛り上げた事実。新しい時代を実感します。
これらのように本当に様々な点で「次」を期待できるイベントだったではないでしょうか。関われたことに感謝居ます。
甲野 功
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