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~相関関係と因果関係~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 相関関係と因果関係
相関関係と因果関係 二つの区別をつけないといけない

 

ちょうど子育て世代真っ最中です。そこで、これはためになりそうだと手に取った本がこれ。

 

まんがでわかる「学力」の経済学 中室牧子著 星井博文シナリオ 松浦はこ作画

 

まんがでわかる「学力」の経済学 表紙
まんがでわかる「学力」の経済学 中室牧子著

 

 

この本にとても大事な事が書いてありました。相関関係と因果関係についてです。この二つが混ざってしまい正しい理解が無いと、とても困ったことになります。理解していたつもりになっていて、実は理解していなかったことに気づきました。子育てだけに限らず多くの場面で応用できることでした。特に本業に関係する場面で。

この本では、
因果関係Aという原因によってBという結果が生じた
相関関係AとBが同時に起きている
 →(つまり)2つの出来事のうちどちらかが「原因」で、どちらかが「結果」であることを明らかにするものではない。と説明しています。

重要な事は相関関係があるから因果関係もあるとするのは間違いということなのです。

 

文中ではこのような具体例を挙げています。文部科学省は、「全国学力・学習状況調査」という学力テストの結果を用いて学力と家庭環境にどのような関係がみられるのかを分析しています。その分析では、『親の年収や学歴が低くても学力が高い児童の特徴は、家庭で読書をしていること』だとされました。この結果を受けて、多くのメディアは「子どもに読書をさせることが重要だ」と報道しています。はたしてこの報道は正しいのでしょうか?

 

✖読書をしている「から」学力が高い
学力が高い学生が読書をしているだけ→この可能性がある


<読書をする>と<学力が高い>には相関関係はあっても、因果関係があると結論付けるのは論理的におかしいというのです。

 

まんがでわかる「学力」の経済学 60ページ
まんがでわかる「学力」の経済学 60ページより

 

 

文中ではもう一つ問題点を指摘しています。見せかけの相関」の可能性を検討していないことです。つまり、読書にも学力にも影響するような「第三の要因」があるかもしれないのに、そのことを考慮していないのです。「第三の要因」としては、たとえば、「子どもに対する親の関心の高さ」などが考えられます。親が勉強をするように促していると同時に本を買い与えている場合。これは容易に想像できるシチュエーションでしょう。そうだとしたら、親の介入が相関関係を生み出しているかもしれません

 

まんがでわかる「学力」の経済学 61ページ
まんがでわかる「学力」の経済学 61ページより

 

本書では
それは「相関」なのか「因果」なのかをきちんと調べる
「見せかけの相関」の可能性を調べる
が大事といっています。

 

ここで数学的な視点で相関関係と因果関係をみていきましょう。デジタル大辞泉(小学館)によれば
相関関係
1.二つのものが密接にかかわり合い、一方が変化すれば他方も変化するような関係。
2.数学で、一方が増加すると、他方が増加または減少する、二つの変量の関係。

となります。

数学的な相関関係で言えば、Aが増えるとBが増える関係ならば「正の相関がある」といい、Aが増えたときにBが減る関係ならば「負の相関関係がある」といいます。つまり相関関係とは、AとBの事柄になんらかの関連性があるものを表します。

因果関係二つ以上のものの間に原因と結果の関係があること。
上のAとBの関係で言えば、因果関係とはAを原因としてBが変動することを指します。

 

2つの事柄に因果関係があればそこに相関関係も認められますが、相関関係があるだけでは因果関係があるとは限らないのです。その逆もまた真なり、とはいきません。因果関係は大枠で相関関係に入りますがイコールではない。数学表現で言えば必要条件、十分条件の話になります。ここを見誤ると大きな勘違いになります。ある2つの事象に注目し実験や統計を取り検定を掛けた結果(数学的統計処理をかけたということ)、相関関係が見つかったとします。このとき2つの事象は相関関係があることは分かりましたが、因果関係があるとは限りません。

 

鍼灸治療を受けている人は、受けていない人よりも高血圧になる確率が低いというデータがあったとします(あくまで例え話です)。統計処理を行った結果、有意水準を満たして証明されたとしましょう。このとき鍼灸治療を受けることと高血圧予防には相関関係があると言えます。ですが鍼灸治療を受けることで高血圧になることを予防できる、すなわち因果関係があるとは言えないのです。鍼灸治療を受けるような人は、元々健康に気にしている人が多く普段から食生活に気を配っているかもしれません。鍼灸治療ではなく、普段の心掛けが原因で高血圧を防いでいるという結果があるのかもしれないのです。相関関係だけで因果関係まで語ることは正しくありません(間違っていると断定もできませんが)。ですが往々にして<鍼灸は高血圧を防ぐ効果があります!調査で判明しました!>などと言ってしまうのです。

 

実際にある具体例を挙げましょう。当院には学生競技ダンス選手が来院されます。学生競技ダンスの大会で優勝経験者も来ます。あじさい鍼灸マッサージ治療院には学生競技ダンス優勝者が訪れる。これは正の相関関係があります。学生競技ダンス選手が来るようなキャンペーンを張ったから当然です。だからといって、あじさい鍼灸マッサージ治療院に来れば学生競技ダンスで優勝できます、と言ってしまうのは間違いです因果関係はありませんまず優勝経験者以外も来院されますし、何より競技会で優勝するような選手は身体のメンテナンスのために時間とお金を費やす意識が高いのです。
あじさい鍼灸マッサージ治療院に来る→だから優勝
ではなく、
優勝するくらい意識が高い→あじさい鍼灸マッサージ治療院に行ってみよう
順番が逆なのです(すなわち因果関係が逆)

 

よく事情が分かっていない、注意深く物事をみない人に向ければ正しくない印象操作で宣伝することが可能です。うちに来れば優勝できます!みたいな。それをしたら(完全に嘘と証明できませんが)正しくは無いことなのでしませんしやってはいけないと考えています。世の中にあふれる医療系の話には巧妙に相関関係を因果関係にまで膨らませて、あたかも効果があると見せかけているものがあります。その罠にはまらないように注意深く観察しなければいけません。「科学的に証明されました!」と言っても、単に同時に起きているだけで原因と結果は関係していないよ、と突っ込む。利用者は相関関係と因果関係が別という頭を持つ。反対に私の様に提供する側は、相関関係に過ぎないことをあたかも因果関係もあると錯覚させるようなことは専門家として行わない。専門知識がある方が知識の乏しい一般の方を思い込ませるのは容易であります。

 

子育ての参考になるかと思って買った本ですが、想定外で重要な事が載っていました。これまで相関関係と因果関係をきちんと考えていなかったので反省しました。医療従事者として踏まえておかないといけないことだと。

 

甲野 功

 

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