開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
きちんと学生時代に鍼灸及び東洋医学と向き合わなかった。
鍼灸師になって10年以上。今になって再度、鍼灸とは何ぞやと向き合うようになっています。
昨年後半から気になっている鍼灸師の所を赴き、鍼灸治療を受けています。きっともっとキャリアが浅いうちにすることなのかもしれませんが、元来鍼灸とくに鍼が嫌いで真剣に学んで来なかったため、このような時期に受けてまわっています。
今回、周りの鍼灸師が特に一目おく先生のところに行ってきました。
アイム鍼灸院の横山奨先生です。
横山奨先生とは鍼灸師のイベントで何度かご挨拶させていただいたことがあります。
とにかくいっちょ前の知り合い鍼灸師たちが、鍼灸そして東洋医学のレベルが高いと称する先生です。
特に私が定期的に鍼をお願いしている神楽坂はりいんTの卜部先生も絶賛していたことに幻想が膨らみました。卜部先生は祖母の代から続く鍼灸師の家系。血筋でみればそうそういない方。同じ東京医療専門学校出身であり、学校で学んだ時期も同じ。その卜部先生が言うのだからどれほどのものなのだろうと。
また、私が出た現代鍼灸(西洋医学、現代医学をベースにした鍼灸)の色濃い東京医療専門学校に対して、伝統鍼灸を継承すると言われる東洋鍼灸専門学校は、同じ鍼灸界にあっても離れた位置づけだと考えています。
その東洋鍼灸専門学校出身で、かつ非常勤講師として教壇に立つ横山奨先生とは。大学院まで進学し研究する姿勢。純粋に人間として興味があったのです。
実際にアイム鍼灸院を訪れ横山奨先生の鍼灸を体験してきました。
感想は私の予想を超えていました。
心身が結構疲れています。
後厄ということもあり、決して良い状態ではありません。30代半ばくらいまでは鍼を打たれるなど以てのほか、気持ちが悪くなりました。それが段々と鍼を受け入れる、効果を実感するくらいに弱ってきました。
よく勉強のために熱心にいろいろなところに受けに行ってますよねと言われますが、勉強の意味もありますが本当に心身が辛いので純粋に良くしてもらい気持ちが強くあります。
幸か不幸か患者さんの気持ちが分かる状況になったことで学びと実益の両方できるようになりました。
体調のことで言えば、お腹がとても固いのです。
小学生の頃からお腹を触れることが嫌で、くすぐったいのと不快なのが混ざっていました。お腹全体が緊張しており、他の鍼灸師が腹診(腹を触って状態を診ること)のとき誰もが固いと驚きます。触られているとき、私は苦しくて息が止まり声を出せないことが多いです。同じ鍼灸師なので悪いと思いつつも、「どこか押されて嫌なところありますか?」という問いに「全部だよ!」と心の中で叫んでいます(実際には苦しくて声はほとんど出せません)。
そのためお腹を触られるとその人の技量が分かるようになりました。熟練の先生だと安心していられます。
そして横山奨先生はどうだったのか。
問診を終えてベッドに横たわり、横山奨先生が脈診(手首の脈を診て状態を探る)と腹診をしました。しばし会話したあと、おもむろに
「何か野望があるのですね」
と言ったのです。
はて?と質問の意味がよく分からず答えに困窮しました。
横山奨先生は
「最初はとても真面目な方だと思っていたのですが、脈や腹を診るとそうではない。生真面目で縮こまっている感じではない。活発にしているのだけど求める要求が高すぎてそれに追いつかない状態のよう。だから大きな野望があってそれに向かっているのではないかと。」
と話しました。
それを聞いたときに内心「まじか?!」と驚愕しました。当たっているのです。
よく人は私の外見や行動をみて「真面目な人」とみてとります。
面倒なので特に否定をしないのですが、私の中では真面目であるという感覚は無く、誠実であれという気持ちが強いのですが、結構手を抜いて適当にしてしまう性分だと思っています。これまで大して面識がなかった横山奨先生は脈診と腹診でその内面を読み取りました。
更に
「求める目標が高すぎて努力をしていてもそこに全く追いつかない状態」
というのは自分自身で言語化できていなかった深層心理でした。そうか、そう言われると腑に落ちる、納得だ、という。私も認識できていなかった心境でした。
真面目ならばやらなきゃいけないと義務感になるのでしょうが、本心は別にやらなくても全然かまわないのだけど目指すところに行くために必死になるということ。指摘されて理解できました。
そこまで私のことを理解しているのはおそらく家族を含めてごく少数の近しい人だけだと思います。なんせ本人も分かっていないのですから。
そういうことが分かる人が現実に存在することに驚きました。同じ鍼灸師なのに。達人というか仙人のようというか。
もう一つ驚いたこと。それがお腹の鍼でした。
すでに述べたようにとにかくお腹を触れることが不快なわけです。鍼灸を受けてお腹がどれくらい緩んでいるかは私の指標なのです。私の場合、足の前の方、専門的に言えば胃経ラインに施術をするとお腹はそれなりに緩むことを経験上知っています。ですがお腹そのものを触れているときは緊張で緩むことはありません。まして鍼をされるのは今でも嫌です。
それがお腹に鍼をあてられているその瞬間からお腹が緩むことが実感できました。
繰り返しますが小学生の頃からお腹を触れるのが不快な体質であり、かつ鍼が嫌いな人間でした。それがお腹に鍼をあてるだけで即時効果があることは初めての経験でした。
読み取る力と効かせる力。どちらも突出したものを横山奨先生は持っていました。確かに周りの同業者が言うだけのことがある。うなりました。
横山奨先生とは鍼灸師になったきっかけなども話しました。そのときに仰っていたのが
「あるとき、鍼灸はスケートと一緒だと思った。身体感覚、身体能力でできる。」
といった内容でした。
横山奨先生はスピードスケートの選手をしていました。スケートと同じ感覚だというのです。
分かるような、分からないような。
私も長らく社交ダンス、競技ダンスをしてきてマッサージをするときのバランス感覚や体勢を維持することには社交ダンスの経験が大いに役立っています。しかし鍼灸に関してはダンスが活きている感覚はありません。
どういうことなのでしょう。
一つ分かったことは経験や知識もさることながら自らの感覚を大切にしているようだ、ということです。たくさん勉強したとか、臨床経験から得た勘といった話よりも先に出てきたこと。
ここに自分の鍼灸を向上させるヒントがあるように思います。
鍼灸修行の行脚はまだまだ続きそうです。
甲野 功
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