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人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている ふろむだ著 ダイヤモンド社
こちらの本で紹介されていた実験研究でこのようなものがありました。
老人施設において、自分たちで学生ボランティアが来る日程を決められる群(グループ)と学生ボランティアの方が来る日を決める群(グループ)に分けて比較した際に、有意に(たまたま偶然とは言えないくらいという意味)自分たちで日程を決められた群の方が寿命が長かったという。
この結果は、自分でボランティアが来訪する日程を決められないことは大きなストレスとなり比較して死期を早めた、というのです。
実際にそれだけの要因で死期が早まったのかは疑問が残りますが学術的には有名な実験研究だそうです。心理学では認められているそう。
自ら決定できないことは大きな精神的ストレスになる。それを示唆していることは確かなようです。
それまで実感がなかったのですが、社会で働くようになると「自分で決められないストレス」というものが、想像以上に影響することが分かるようになりました。決定権がないこと。それは心身に大きな影響を与えるものでした。
私自身の過去を振り返ってみます。
会社員時代には上司からの課されるレポート、周囲からの雑用を頼まれること、そもそも希望した部署ではなかったことなどが大きなストレスになっていました。新人社会人ならばそれは当然のことだろうと言われるでしょうし、私自身もそういうものだと思っていました。
日報、週報、月報、半期報、会議に議事録。毎日何時間文章を書いていたでしょうか。社内メールで送ってもほとんど読まれない。上司からは大事なことが書いていないからとやり直しをするも、他部署からは長すぎて読む気がおきないと言われる。上司がやろうと決定するも最初にやらなくなる(やれなくなる)のが当の本人。
技術営業という部署だったため、文系の他部署の営業担当から「技術的なことは分からないからよろしくね」と様々な資料作成を頼まれました。取引先の企業からも問い合わせが引っ切り無しに届く。部長からはもっと外に出ろ(営業にまわれ)と指示されるも、溜まった業務をこなすので精一杯。周囲の期待に応えようとするも、新人の私には対応しきれません。
東京理科大学で半導体の研究をし、技術部門のある半導体商社に就職。技術部門に進むものだと思っていたところ技術営業というどちらもする部署に配属。会社の大本は商社である以上、技術よりも営業の方が立場は上。大卒間もない私には勉強してきたことが活かせないと思っていました(実際のところそのようなことはなく、そう信じたかっただけだった)。
自分自身で決定できない。
朝頼まれてやっている作業が午後覆され別の作業が割り込んでくる。その中でレポートは溜まっていくし自己研鑽を積むようにと言われる。
親は上場企業に就職できて一安心。親に心配をかけられない。
どんどんと心身を蝕んでいき、結果は社会人3年目の春に麻疹にかかり入院。ストレスにより免疫力が落ちたことが原因らしい(幼いころかかったことがある)。心のどこかで「大病をして入院したらこの生活から抜け出せる」と願っている自分がいたのでした。
このときに自分で決定できないことが大きなストレスになる、文字通り寿命を縮めるくらいの。そう実感しました。
(入院中、ショック症状で失神したことがありました。のちに看護師経験者に一歩間違ったら死んでいたわよ、と言われたものでした。)
改めて確認することは、思い通りにならないことがストレスではないこと。
願った通りに物事が運ばないのは仕方ないことですし、当然のこと。学生時代競技ダンス選手だった頃はいつも決勝に残りたいと願っていましたが入賞することなどほとんどありませんでした。上手くいかないことでイライラすることはあってもそれが心身に影響を及ぼすほどのストレスにはなりません。
自分自身で決定できないことが大きなストレスなのです。
今、私は子育て真っ最中です。育児は思った通りにいかないことばかり。つい最近も長女の宿題が残っていたことが分かり付きっ切りで一緒に宿題をしましたし、次女の水疱瘡罹患により大いに仕事に影響が出ています。
これは大きなストレスなのですが、前提として自分たちの意思で選んだ環境です。私も数十年前に両親に育てられたのだから育児の大変さは通る道だと思っていました。すんなりと子供ができなかった経緯もあるので育児環境が辛いと思うことは多々ありますが、それは決断した結果ですから受け入れられます。
企業に就職するまでは、私は無難な生活(そこそこしっかりとした企業に勤めて安定した給料をもらう)を求めていたと思っていたのでした。ところが、いざその環境になるとそんなことはなかったことに気づきました。
まずITバブル崩壊という経済状況の変化で上場企業も傾くことを理解しました。2001年にはアメリカ貿易センタービルに旅客機が突っ込むテロがありました。「安定した企業」とは学生の幻想だと知ります。
このまま人に決定権を握られていて大丈夫なのかと不安に襲われます。それならば自ら決定権を持つ状況にしたいと考えるようになりました。人生初の入院生活が引き金になりましたが。
長い物には巻かれろ、という性格だと思っていたのですがどうもそうではなかった。それが短い企業勤めで分かったのでした。
資格免許・能力が上がることで、決定できないストレスは大きくなりました。
鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師の国家試験をパスして鍼灸整骨院に就職しました。最初は修行と思い必死に毎日過ごしました。段々と仕事を覚え患者さんから支持されるようになり、柔道整復師の専門学校に通いながら仕事を続けることになりました。その時期に結婚をし、職場では管理職に昇進しました。
段々ともっとできるのになというストレスが心の中で大きくなってきました。
臨床家として患者さんと向き合う。柔道整復師専門学生として勉強する。管理職として院の運営をする。やりたいことよりもやらなければならないことの方が多くなっていきます。一番嫌だったのは現場よりも経営、人のマネージメントなどの管理職業務が増してきたことでした。
何といってもまだ学生。もっと技術や知識を得る時期だと考えていました。マネージャーになるのは違うと。終電まで行われる経営会議、休日も参加を強いられる自己啓発セミナー。業務時間内の経営コンサルタントとのミーティング。
それらよりも患者さんに向き合いたい。そう願うようになっていました。
自身の立場が上がることで見えてきた新たなストレスでした。当時はもう結婚もして30歳を過ぎていました。職場の意向に従っていては将来後悔することは間違いないでしょうし、心身に悪影響が出始めていました。
今現在私は独立開業しています。誰かに雇われることもなく、自己資金のみで治療院経営をしています。
常に売り上げのことは気にかけていますし今後の展開を思案しています。気がかりは多々ありますし、社会保障は乏しい。ボーナスも退職金もありません。
それでも今のところどこかに就職しようという気になりません。何か大きな理由が生まれれば別でしょうが、自分ですべてを決定できる環境は経済的安定よりも勝っています(ただしこの件は家族の協力と家庭観環境も考慮されています。もしも私が朝8時半~夜22時くらいまで週6日でかつての職場のような働き方をしたら例え収入が増えて安定したとしても家庭が成り立たないと思います)。
その環境に置かれて本当にストレスになることが判明しました。心身に多大なる影響を及ぼすストレスになること。
自身のステージ(能力、資格、役職、家庭環境)が向上することで新たにストレスとなることも実経験で分かりました。
ちょうど今日、あん摩マッサージ指圧師、鍼師、灸師の国家試験合格発表の日です。鍼灸師はとかく独立開業に目が向きやすいものですが、何が本当に自分自身にとって苦痛なのかを知ったうえで進路を決めてもらいたいです。
人によっては毎月給料が安定しないことが大きなストレスかもしれません。
プライベートの時間が取れないことが絶対に許せない人もいることでしょう。
自身の成長が見込めない環境に恐怖を感じる方もいると思います。
私にとって「自分で決められないことは大きなストレス」でした。何年もかかり理解したことです。
これがやりたいという前向きな気持ちだけでなく、これだけは絶対にしたくないという後ろ向きな気持ちも進路を考えるのに大切なのではないでしょうか。
甲野 功
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