開院時間
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あじさい鍼灸マッサージ治療院に来院される競技ダンス選手には
①個人的にダンスや身体(の機能面)について悩みや困っていることはありますか?
②コーチャーや先輩によく注意されていることはありますか?
と質問します。
回答には、肩が上がる、フリーアームがぎこちない、ネックが入る、反り腰になる、などあるのですが、学連選手ですと『足が弱い』という答えが多いです。
足が弱いと言われる。本人も実際にそう思う。
このことは一体どういうことなのか、本当にそうなのか。考えてみます。
●足が弱いとはどのようなことを指すのか?
足が弱いという表現は競技ダンスにおいてよく耳にするものです。踊りを指摘するときによくあります。
具体的には
・足(正確には下肢、つまり太もも、ふくらはぎ、足首、足の指まで全て含めた下半身)の筋力がない
・主にスタンダードで大きく動けない(移動距離が出ていない)
・主にラテンでポイズ(立ち姿)が弱々しく見える
・動きの中で強い緩急をつけられずふらついてしまう
といったところでしょうか。
「足元が汚い」という表現も同様ですが、ダンスがうまくできていないけれど原因は下半身にありそうだね、というときに漠然と使っているような気がしています。
ピンポイントの例では、足が露出しているラテンドレスを着ているパートナーさんで足(股関節から下全体という意味)についている筋肉の隆起があまり見えなくて(筋肉が発達していない、力が入っているように見えない)視覚的に「足が弱そう」ということもあるかと思います。
●足が弱いことの原因は?
足が弱いと言われることの原因で大まかに考えられることが二つです。
1.単純に筋力が不足している
2.筋力を発揮できない状況にいる
まず1.の筋力不足は明確です。十分に踊るだけの筋力が備わっていない場合です。
ジュブナイルや高齢者のダンスを見ると、未発達・衰えと原因は異なりますが単純に下肢の筋力がないな、と思うことがあります。足を出したくても出せない。使いたくても使えない。このような器質的(フィジカル的)な原因です。
たまに学連選手で運動を全くしてこなかった華奢なパートナーさんで立つこともおぼつかない人を見たことがあります。そういう場合は足を鍛えて筋力をつけるところから始めないといけないですね。
次に2.の筋力を発揮できない状況というのは、足を十分に使えないバランス、体勢でステップを踏んでいることです。これはフィジカルよりも技術的(テクニック的)な原因と言えるでしょう。
どういうことかと言えばしっかり足を踏み込める、筋力を発揮できる状況ではないのに動いているということです。
スポーツトレーナーの分野ではサーフェス(surface)といって地面、床、フィールドの状況、そして足の接地面が大切だと考えます。あのウサイン・ボルト選手でも砂浜の上では100mを10秒で走ることはできないでしょうし、専門のスパイクを履かなければ記録は出ないことでしょう。
競技ダンスにおいてもきちん整備されたフロアーでなければうまく踊れないのはもちろんのこと、足元がフロアーを捉えていないとパワーが出せません。
●足の筋力をつけるよりも筋力を出せる状態を作ろう
フロアーを捉えるというのは感覚と経験に頼る部分が多分にあります。しっかり床を掴んだ感覚とそうでない感覚は練習しないと習得できないですし、組んでいる相手もいて、リズムに合わせて、表現をして、アピールをして、と同時に複数のことをこなしながらですと相当難しくなるのです。例え筋力があってもそれを活かせないのであれば宝の持ち腐れ。乗用車の運転に例えるならば、どれだけ馬力のあるエンジンを積んでいてもドライバーが下手ではレースに勝てないという感じです。
そのため、筋力をつけるよりも筋力を発揮できる体勢を保てるようにした方が、効果が出るのが早いように思います。
●ラテンのトップ選手でも筋力が無い人も?
ある程度移動距離がものをいうスタンダードは筋力がダイレクトに関わるのですが、ラテンに関して言えばトップ選手でも足の筋力がさほどない場合もあります。
一般的に筋力は筋線維の太さに比例するのでしっかりと発達した太ももとふくらはぎから推し量ることができます。学連選手は年齢的にそこまで脂肪が付いている人は少なく、脂肪で足が太い人はそう多くはありません。特にリーダーは足の太さは筋肉量と直結します。
リーダーに関して言えば、この足(下半身)でよくあれだけのダンスができるものだ、と感心してしまう足の細さの選手もいました。純粋な筋力よりも筋肉を使う性能が長けているのでしょう。
なお、スタンダードのファイナリストでも華奢な足をしているリーダーはいました。
●そもそも足の筋力をつけるの難しい
下肢の筋力をつけるのは結構大変です。
ボディビルをする人は言いますが、上半身の筋肉をつけるのは比較的簡単で下半身を大きくするのはより大変と言います。常時上半身を支えて歩行しているため、負荷がいつもかかっている状態。下半身に更に負荷をかけてトレーニングするのは体の負担が大きいですし、やりすぎと不調を起こします。全く運動をしてこなかった選手ならばまだしも、恒常的に練習を重ねている選手が更に足の筋力アップを図るのは容易ではないのです。
●結論はこれ
足が弱いという学連選手には、筋力アップよりも今ある筋力を最大限に活かせる方法をまず考えた方がいいですよ、とよく話します。
ラテンの場合ですと、それは動作が止まれる能力が大きいと考えています。動きが素早い分、その動きをコントロールして急激なストップそしてゴー(動く)ができることが大きいと思います。 そのためには股関節の内転筋群と言われる太ももの内側の筋肉が活性化している状態が重要だと考えています。内転筋群は日常あまり意識することがない筋肉なので、筋力があることに越したことはないのですが、すぐに発揮できる状態にしておくと動きやすくなります。
他にも元日本チャンピオンの金光先生は中殿筋が重要だとラジオで発言していました。中殿筋はおしりにある筋肉であり、片足で立つ時に体を支える筋肉です(中殿筋だけで支えているわけでないのでご注意を)。中殿筋などあまり知らない選手が多いと思いますが、そこをきちんと意識できると踊りが変わるというのは理にかなっています。
スタンダードの場合ですと大きく動く(=移動距離を出す)というのが競技会において最低限のことと言えます。大きく動くためにはしっかりと床を使えるバランスで送り足(サポーティングフット)を使える必要があります。
これはほぼリーダーに限った話になりますが、逆説的に言えば床を使えない状態で足を出すことの多くはバランスが後ろ、ヒール側にあるのに使ってしまうことが多いようです。バランスが後ろになってしまうのはネックの位置が大きく関わることが多いです。
パートナーではヒールが高くて細いため自然と前の方にバランスがいきやすいのとネックをより後ろに置いておくので骨盤の傾きが影響してくると考えています。
筋力を発揮できるバランスにいるというのは、支持基底面や重心、体重と重心、頭の構造などが話が細かくなるので別の機会に書きます。
●最後に
足が弱いと悩む学連選手の方。下半身のトレーニングはもちろん行ってください。ただ活動期間に制限がある学連選手では筋力トレーニングも大切ですが筋力を発揮できる状態を作ることを考えた方が上達が早いと私は考えています。
甲野 功
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