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~広報の大切さ~

「300億円赤字」だったマックを六本木のバー店長がV字回復させた秘密 足立光著
この本を読み広報・PRの重要性を再認識した。

 

 

最近読んだ本がこちら。

「300億円」赤字だったマックを六本木のバーの店長がV字回復させた秘密 
足立光著 WAVE出版

 

業績悪化した日本マクドナルドをV字回復させた立役者の一人、足立光氏。著者が具体的にどのようなことを行ってマクドナルドを立て直したのか。その事実を時系列に紹介するビジネス小説です。小説にすることでストーリーができて話に引き込まれます。「ほぼ実話」とありますから、登場人物の十条銀座にある洋食屋の跡取りは架空だと思いますが、かつて東京都北区十条で働いていた私にはとてもリアルでモデルのお店も何となく見当がつくような。そういった意味でも楽しめるビジネス本でした。

 

2015年には347億円という上場以来、過去最大の赤字額を記録した日本マクドナルド。品質問題に関する報道が出てから、世間から厳しい目が向けられました。更に追い打ちをかけるように、2015年初頭に異物混入の報道が衝撃を与えます。この二度の炎上騒ぎで、マクドナルドの企業イメージは地に落ちました。2015年1月の売上は、前年比約4割ダウンというとんでもない状況になってしまったといいます。その危機的状況を日本マクドナルドマーケティング本部長という肩書で実質組織のナンバー3の立場についた足立氏。どん底状況にあったマクドナルドを見事に再生させた立役者の一人。彼が行った施策をかなり詳細に本書は解説しています。


数々の成功例と失敗例を挙げてどのように回復したのかが分かるのですが、とても興味深かったことが広告よりも広報(PR)に力を入れていたということでした。広告と広報。似たような漢字で似たような意味に捉えがちですが足立氏ははっきりと分けて考えております。このことは治療院経営をする私にも大きなヒントと励みになったのでした。ここでネットの辞書で各用語を調べてみました。

 

広告
①世間に広く知らせること。
②商品や興行などを世間に知らせるために宣伝すること。商業上の宣伝。また、その文書など。

 

広報
政府、行政機関、企業、労働組合、学校、PTAなど諸団体が、国民、消費者、住民など社会のいろいろな人々に向けて、自らの考え方、計画、実際の諸活動を知らせること。広報=PR(public relations)としても用いられる。

 

広告の意味では②の「宣伝、あるいは宣伝する」が重要でしょう。そう広告はほぼ宣伝の意味です。対して広報は「自らの考え方、計画、実際の諸活動を知らせること」がポイントです。宣伝とは少し意味が違うのです。本書で足立氏は広告よりも「何かマックは楽しそうなことをしているな、という空気作りが大切だった」という趣旨の言葉を書いています。そしてその媒体はテレビCMではなく、TwitterなどのSNSが主流。専門の部署を作りSNSでの効果をしっかりチェックしました。広告は「秋から月見バーガーが発売」だとか「バリューセットの値段が変わります」といった言わば事実を告知する。もしくは「マクドナルドがありますよ」と存在をアピールするものです。広告する内容は純然たる事実であり、はっきりしているものを対象にしているでしょう。


広報は考えとか計画といった概念や思想のようなはっきり見えないものも含まれています。マクドナルドの場合、日本で知らない人はまずいないくらい認知されていますから「マクドナルドを知ってもらう」という広告はほぼ必要ないでしょう。そして若者がターゲットのようで、ハッピーセットを楽しみしている子供から散歩の休憩や井戸端会議に利用する高齢者まで全世帯が来店しますから、広告のターゲットを絞ることができません。そのためむしろ広告の打ち出し方が難しくなります。まして<マクドナルドは危険>というレッテルを貼られた状態では何を広告しても厳しかったでしょう。

 

細かい施策や考え方は本書を読んでもらって確認してください。

SNSを駆使して、

マクドナルドは楽しいというイメージを再度持ってもらう

みんなが参加できるイベントを行ってお客さんも巻き込む

他企業とのコラボレーションで新商品を出して世間をあっと驚かせる

などの広報・PRをしてイメージを変えていったのです。

もちろんそれだけではありませんが、マーケティング部門が主導で商品開発から企画、広告まで一括してストーリーを作り上げ世間に届けた結果が回復の起爆剤だったと。

 

この本を読んで広告と広報・PRについて考えました。私の本業である鍼灸、あん摩マッサージ指圧は開業権があり独立して仕事をすることができます。しかし広告規制について大きく揺れています。もともと昭和時代に制定された法律により、広告できる内容がとても狭く、それだけで患者さんや利用者が来院する(気がおきる)のは実質不可能な状況です。値段すら書けないのですから(当時は看板を掲げれば勝手に集客できた時代だったのでしょうか?)。医療は広告で患者を誘引する(あたかも効果がありそうという誘い文句で集客する)ことを禁じています。それでいて鍼灸やマッサージは<医療ではない>という今のところの判断。これまではインターネットは広告に該当しないという判断でしたが、今後インターネットも規制対象になっていきます。そうなると真面目にしている方がバカらしくなり(仕事にならないので)、保健所に申請せずに言わばモグリで施術所を始める国家資格免許持ちが急増することでしょう。実際に「整体院」と称して保健所に開設届を出さないで運営している例はあります。


厚生労働省や保健所が取り締まらないため消費者庁や地方自治体が景品表示法に基づいて取り締まりを強化しているような状況になってきました今後どのように広告規制が進むのかははっきりとしませんが、実質広告が出せなくなる可能性は出てきます。少なくとも初めての方が知りたい情報を載せることができない状況。そうなると広告よりも広報・PRがより重要になると予想できます。個々の鍼灸師が持っている考えや展望。各院が掲げる理想やこのような世の中にしたいという想い。そういったちょっと漠然として理念のようなものをアピールして人や院を好きになってもらう、あるいはあそこは何か素敵なことをしているようだという印象を作る、といったことが生き残る道なように考えています。

 

私は何年も前から「鍼灸をアピールする前に鍼灸師をアピールし方がよい」と考えています。その表現方法としてSNSを中心とした広報・PRが大きな役割を果たすのではないでしょうか。日本有数の知名度とシェアを誇るマクドナルドの低迷と復活劇。そこから学ぶことが大いにありました。

 

甲野 功

 

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