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先週の日曜日、2019年5月12日(日)に千葉県鍼灸師会学術講習会で
易とSNS 「問う」ことについての一考察
という題目で
関東鍼灸専門学校副校長 内原拓宗先生
の講演がありました。
この日は私の院でミャンマーチャリティカフェを開催していたため会場に行くことはできなかったのですが、この会を支援することで、録画された講演動画を拝聴する機会に恵まれました。
講演内容にとても驚いたため、私の感想と共にこの出来事を文章として残しておくべきだと考え、書いていきます。
まず講演者の内原拓宗先生ですが、私とはここ2年で関りが深くなった鍼灸師です。
経歴で言えば東京医療専門学校鍼灸マッサージ教員養成科の先輩にあたる方で、5期上になります。現在は鍼灸の母校にあたる関東鍼灸専門学校で専任教員に就き、副校長です。
これまで幾度かイベントで一緒になり、今回の千葉県鍼灸師会で発表する内容に私のことを紹介すると聞いていました。他県の鍼灸師会で紹介されることは光栄であると同時に、どのような発表をするのか注目していました。
後日動画を見て、これはもう研究発表であるな、と強く感じました。
それだけ現代の環境、背景、実際の例、考察、今後の提案、と深く考察しつつまとまったプレゼンテーションでした。私も言わば同じテーマで話をしてきたからこそ、その凄さが分かります。
次にこれを鍼灸専門学校の専任教員が鍼灸師会の場で発表したという「状況」の驚き。発表「内容」の素晴らしさとは別に講演者の立場と話した場所という状況がとても異質であり、鍼灸界に特筆すべき出来事だったのではないかと私は考えます。
これら2つの点について書いていきます。
まず発表内容についてです。
前半は「易と東洋医学」について。関東鍼灸専門学校は鍼灸界でも珍しい「易」を取り入れた学校です。創設者の故小林三剛先生の「易を身に着けた鍼灸師を養成しよう」という考えが理念としてあります。
前半の「易と東洋医学」というテーマは鍼灸師会学術講習会らしい内容です。
問題は後半の「鍼灸師とSNS」からです。東洋医学という伝統的な世界に、更に古くに成立した易。そこに至って現代的なツールであるSNSを内容に入れてしまったのです。今回私が書くブログは主にこの部分について注目します。
講演内容は一般には非公開ですので主だった項目を挙げるだけにとどめておきます。
・SNSの現状
SNSとはソーシャルネットワークキングサービスの略で、ネットを介した交流のようなもの。具体的にFacebook、Twitter、LINE、Instagramの簡単な解説をしました。
・(内原先生が)SNSと関わるようになったきっかけ
クラウドファンディングをして、「革命のファンファーレ」というビジネス書籍を学生達に無料配布する企画を成功させたこと。そこから多くの関係者と繋がりが増えていくことに。
・鍼灸師のコミュニティとSNSの関係
SNSが出てきたことで鍼灸師のコミュニティが従来のものから変化してきた。具体的な活用事例を挙げていきます。
ブログ、LINE、Facebook、Instagram、polca。そこから見えてくることをまとめて考察を加えています。
この部分が重要で、個人(その人)を前面に出している、宣伝よりも広報を大切にする、ネットだけで収まらず現実に行動して交流を広げている、といった共通項を示し、SNSから実績に繋げる過程を検証しているのです。
ロングテール、錯覚資産、ハロー効果といった最近の用語も取り入れて考察しています。
・SNSから見えてくる課題
ここでも鋭い視点で課題をあぶりだしています。説明にヒューリスティックやULSSAS(ウルサス)、認知的不協和といった最近身近になってきている専門用語を使っています。
・まとめの「問い」へ
易、SNS、臨床を「問い」というキーワードでまとめています。
この内容は研究発表といえる内容だと思いました。
これまでに臨床に関係する研究や発表が多数なされてきましたが、はっきり言えば<経営>に関わる部分での調査研究というのは主流ではありません。
今回の鍼灸師とSNSに関わる部分はここ数年にあった内原先生の実体験と他の鍼灸師が行っていることを調査し、ビジネス関連の知識を踏まえて検証し更に課題をあぶりだし、今後の提案までしています。
学術発表に置き換えてみれば症例報告、文献調査、仮説検証、提案と、やっている本質は一緒です。当日は名古屋で全日本鍼灸学会学術大会が開催されていましたが、千葉でも質の高い発表がなされたのではないでしょうか。
次に発表した状況について。
関東鍼灸専門学校の卒業生であり、現副校長という立場の内原先生が「易と東洋医学」について語るのはとても納得がいきます。千葉県鍼灸師会学術大会で採用される真っ当なテーマだと思います。
そこに「SNSを加えてしまう」ところが画期的です。それを内原先生がすること。20代のスマホネイティブ世代(青少年期からネットが当たり前に存在し慣れ親しんできた世代)の先生がするならまだしも、40代の専任教員が扱ったことが凄いのです。易と東洋医学とSNSを同時に語れる人はそういないでしょう。
聞いている側は千葉県鍼灸師会関係者の皆様。鍼灸師会とは基本的に臨床に携わる鍼灸師で形成される会であり、会員はベテラン開業鍼灸師が多いのです。その方々を前にして、易の話は妥当としてSNSの内容を入れることは相当異例のことではないでしょうか。
動画では聴講者の後ろ姿しか映っていないので分かりませんが質疑応答の言葉を聞くと
「Facebookは、登録はしていますが(他人の投稿を)見るだけで発信はしません」
「(SNSって)何か怖くないですか」
「インフルエンサーって何ですか?」
といった声がみられました。おそらく年齢は内原先生よりも上でSNSに馴染みが無い先生が多いのではと推測しました。おそらく後半の内容は聞いていてもちんぷんかんという人も少なくないのではないでしょうか。
内原先生が話した内容についても、話をした鍼灸師会学術大会という状況においても、とても挑戦的なイベントだったのではないでしょうか。
その分やる意義が大いにあったと思います。40代の内原先生が易とともにSNSについて話したからこそ、耳を傾けることができたのでは。
今回の講演内容はとても素晴らしいので他の鍼灸専門学校教員に対してや別の鍼灸師会でも話をしてもらいたい内容だと信じています。古臭いイメージがある鍼灸そして鍼灸師が、もっと古くからある易と、ネット社会の産物であるSNSを融合した内容を知る。はっきり言って内原先生は稀有な存在であり、先生にしかできないことではないかと、本気で思っています。
有意義な内容を(録画動画越しですが)聴くことができてとても勉強になりました。もっと多くの関係者に知ってもらいたい内容です。
甲野 功
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