開院時間
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※本文章は作品のネタバレがあります。ご注意ください。
以前紹介した「はたらく細胞」。細胞を擬人化したコミックでアニメ化もされたヒット作。勉強になると鍼灸専門学校生に話題でした。
その「はたらく細胞」のスピンオフ作品がこちらです。
はたらく細胞BLACK
モーニングKC 初嘉屋一生(著) 原田重光(原著) 清水茜(監修)
「はたらく細胞」の作者清水茜氏が監修に入っており設定は同じ細胞を擬人化したものなのですが、BLACKというだけあって作風は正反対です。
まず原作「はたらく細胞」では主人公が白血球であり男性、ヒロインが赤血球で女性という組み合わせです。「はたらく細胞BLACK」では反対に主人公が赤血球で男性、ヒロインにあたる準主役が白血球と男女が逆転しています。
本作の主人公赤血球はメガネをかけたやや頼りない男性で描かれ、外部から侵入した細菌と戦う白血球は勇ましい女性として描かれています。
以前書いた通り、「はたらく細胞」は全体的にのんびりした雰囲気の作風であり基本的に毎回ハッピーエンドで終わります。そして“世界”を構築する人間のパーソナリティは極力描かれておらず性別も分かりません。
対して「はたらく細胞BLACK」は“細胞たちがはたらく世界”である人間は、男性で、十数年ぶりに喫煙をし、定期的に栄養ドリンクを摂取、運動不足、長時間のデスクワーク、糖尿病を患い、さらにバイアグラを使っています。だいたいどのような人間像か予測できてしまうのです。
生々しいほど体に悪いことを繰り返します。
その体(世界)は細胞たちには、劣悪な労働環境であり細胞同士がいがみ合い足の引っ張り合いを行います。主人公の赤血球は健気に酸素を運びますが動脈硬化が進んだ血管は進むのが困難です。ちょっとくらい休んでもばれやしないよ、という同僚を尻目に真面目に働き続けます。
外敵から体を守る白血球は体調不良により仲間の数は激減し通常ならば問題のない菌が免疫力低下により凶悪化する中、必死に細菌と戦います。
世界観は暗く、とにかく悲壮感が漂います。不摂生を重ねた体の中はこのような問題が起きているのだと、リアルに描かれています。
「はたらく細胞」では描かれていなかった赤血球の死についても「はたらく細胞BLACK」では触れています。
実際のところ赤血球には核が無いため細胞の寿命は120日と短いのです。「はたらく細胞BLACK」の作中では、肝臓で力尽きた年老いた赤血球が死してなお再利用されるために体を食べられてしまいます。
また主人公は劣悪な環境に耐えかねて脾臓に向かい(脾臓は壊れた赤血球を処理する)処分してくれと頼みに行きます(つまり自殺しようとする)。しかし脾臓でのチェックを受けた結果、まだ健康で働けるから現場に戻って働けと追い返されるのです。
現実社会にあるブラック企業さながら、否それ以上に過酷な環境で、逃げることも許されない状況。主人公の赤血球はそれでも働くことを決意し任務を全うしようとします。
ついに最悪の出来事が起きる。回避、そして更なる環境の悪化。
勉強になるはずと買って読みましたが、とてもきつい内容です。
実際にはもの言わず自我のない(ないであろう)細胞たちの苦しみが細かく丁寧に描かれています。生活習慣病になると体内ではこのようなことが起きるのだと実感できます。健康への啓蒙活動になる作品とも言えるでしょう。
健康に携わる職業である私達鍼灸師は読んでおいて損がない作品だと思います。
甲野 功
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