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フレンチパラドックス(French paradox)という言葉を知っていますか?
フレンチパラドックスとは
フランス人は煙草を吸うし脂っこい食事をとるにもかかわらず、かかりやすいはずの病気が何故か比較的かかりづらい
という逆説的な現象をいいます。
フランス人の一人当たりの肉消費量は世界のトップクラスだそうで、一人当たり年間67リットルものワインを飲むといいます(日本は1リットル弱)。これだけ肉を食べてワインをがぶがぶ飲んでいるのに、他の西欧諸国にくらべて心臓病による死亡率が低いというのです。
原因は赤ワインを飲むことにあり、赤ワインに含まれるポリフェノールによって疾患予防になっているのではないかと予測されています。ブドウは皮・種子に多くポリフェノールを含みますが、赤ワインはその皮や種子を取り除かずに発酵させて作られます。ポリフェノールに活性酸素消去作用があることは認められていて、これらが脂質過酸化を防ぎ動脈硬化を予防しているのではないかと。
実際のところ本当かどうかはわかりません。フレンチパラドックスという言葉は仏ボルドー大学の科学者による造語であり、フランス人が「赤ワインは健康に良いよ」と宣伝したいだけでは?という意見もあります。実際にこの話が出て赤ワインやポリフェノールがバカ売れしたそうで。
ポリフェノールとは別にその製造方法に理由があるという意見もあるようです。
自然農法で発酵させ化学物質を使わないで醸造された赤ワインに効果があり、製造過程に用いる化学物資がそもそも健康を害する要因だという。そのため色々な混ぜ物が入ったワインならば健康効果は無いでしょうという仮説。
こちらも良いところのワインを飲めば飲み過ぎても健康でいられますよ(=だから高級ワインを買ってくださいね)、という宣伝の可能性を感じるわけですが。
さてフレンチパラドックスという言葉。私は後者の仮説が気になっていて、もしかしたら米、水、麹のみで発酵させて作る日本酒においても同じことが言えるのではないかと考えているのです。
私はお酒を飲みません。体質的に受け付けないのです。
ビールをコップ3分の1でも飲めば顔が赤くなり頭痛がしてきて気分が悪くなります。お酒を飲んで気分よく酔ったという経験は人生で一度しかなく、飲酒はただただ苦痛でしかありません。
最初にお酒を飲んだのは高校2年生の頃。まだ20世紀の日本ですから、お好み焼き屋に入った高校生でも普通に頼めました。
高校生3名で貧乏旅行をし、旅先で少し贅沢をしようとお好み焼きを食べたのでした。そこでカルピスサワーを飲みました。当時の男子高校生は酒が飲めることがイケているというしょうもない空気があり、頼みました。その結果、カルピスサワー2杯で立ち上がれなくなりました。目が回り歩くのもおぼつかなくなり。そばの宿まで帰る途中、嘔吐。横になっても目の前がぐらぐら揺れていました。
酒が飲めない体質だとよく理解した私はその後も飲酒しないように気を付けてきました。
大学に入ると当然飲み会があり、飲まないといけない場面に出くわします。重ねて言いますが当時は20世紀。アルハラ(アルコールハラスメント)なる言葉など存在せず、男子大学生にとってどれだけ酒を飲めるかが重要だった時代です。
ビール1杯も飲めば顔が真っ赤になり頭が痛くなります。そして寝込んでしまいます。その姿を見て誰もお酒を飲ませることはなくなりました。飲み会の前半を気分が悪くなって寝込み、起きると回復していて泥酔者の世話をするという役割でした。
社会人になってからもお酒の席はついてまわります。当時の酒飲みは「人類みなお酒が好きに違いない」と勘違いしているのが多く、「またまた、本当は飲めるのでしょう?」「飲めなくても鍛えればいいんだよ」など飲酒を強いてきました。令和の今なら逮捕されるでしょう。
それで仕方なくビールを飲んだ私は、しゃべらない動かない食べないの3ないモードに陥ります。気分が悪いのでしゃべることが億劫でかつろれつが回らなくなります。体を動かすと辛いのでじっとしています。食欲もなくなります。つまり生きた人形になるわけです。
妻と初めて二人で食事をしたときも場所が居酒屋で無理してビールを1杯飲んでフリーズ状態。頼んだ食事に一切手をつけないので冷めた料理がテーブルに残りました。当時妻は世界から飢餓を無くそうとしている団体職員だったのに。
鍼灸整骨院に就職した際も、院長が「俺の酒が飲めないのか」という絵に描いたような飲ませめ方をしてきたので無理して飲んだ結果、何を話しても反応しない生きた人形が出来上がりました。帰りの電車でも意識が遠のき、「俺の話を聞いているのか?」と怒る院長と、「おまえが無理に飲ませたからでしょ」という無言のツッコミが周囲からあったようですが、当の私にはそれどころではありません。
以後、私にお酒を飲ませようという人間は職場に現れなくなりました。
料理の隠し味に使ったアルコールにも反応するので、チーズフォンデュに入ったワインも酒蒸しにした貝でも駄目なことがあります。結婚式は神前式で行ったのですが儀式の御神酒でも辛くなるので飲み干しませんでした。
このような体質なので私のことを知っている人は誰もお酒を飲ませようとしませんし、私が酒を飲むことなど考えられません。
今から8年くらい前のこと。
長女がもう少しで生まれるという時期で妻のお腹が大きかった頃。子供が生まれた二人でのんびりできなくなるからとかつて独身時代に行った伊豆へ再び二人で旅行しました。身重の妻のことを考えてほとんど旅館で過ごすような旅。贅沢して部屋に露天風呂が付いていて食事も部屋食にしました。
夕食には日本酒の食前酒がついている和食コースでした。
豪華な料理ですし中居さんが用意してくれるので悪いと思って普段は手を付けない日本酒を少し口にしました。
すると「美味しい」。
お酒を美味しいという感想などでたことがないのに、この日本酒は美味しい。なにより身体が拒否反応を起こさない。
聞けばそれなりのしっかりとした日本酒だそう。酒の知識が皆無なので、どれくらい高品質なのか見当もつきませんでしたが、人生で初めてお酒を美味しいと感じ、全て飲み干しても嫌な気分になりませんでした。
これは一体どういうことだろう?
そこで思い出したのがフレンチパラドックスという言葉。自然製法で余計な化学物質を混ぜない作り方をした日本酒は身体が受け付けるのかも?という仮説でした。
その後日本酒を飲む機会はなく、懇親会などで出される瓶ビールを我慢して少し飲むことしかありませんでした。
年数が経ち、今週はじめに神楽坂で鍼灸師の飲み会がありました。47都道府県すべての日本酒を置くという日本酒売りのお店。
日本酒を頼めばお猪口が付いてくるので味見程度に飲むことにしました。場の空気として少しくらい飲まないと悪いという気持ちもあります。
すると伊豆の時と一緒です。嫌な感じがしない。気分が悪くなる、頭痛がする、といったいつも起きる現象が起きません。何より美味しいと感じます。
同席した先生が日本酒にこだわりがある方で酒蔵まで訪れるくらい好き。その方がすすめる日本酒を飲んでいくと、どれもだいたい美味しい。何より身体が拒否反応を起こしません。
出てくる日本酒をだいたい味見しました。お猪口で6杯くらい飲んだでしょうか。間違いなく人生で一番日本酒を、アルコールを飲んだ日だったと思います。特に気分が悪くなることもなく、ふらつくこともなく、帰宅して子供の世話ができました。
やはり高級なしっかりとした製法の日本酒は大丈夫なのかと。値段を見て、こんなに日本酒って高いのか!?と唖然としました。贅沢な嗜好品です。その値段だけの品質ならば日本酒を楽しめるのかもしれません。
大学時代にたまに居酒屋チェーンで飲んだ日本酒とは値段が違いますし、飲んだ身体の感触も全く違うのでした。
良い日本酒は平気なのかも。
この話をした義理の父は大変驚いて、それだけお酒を飲んで無事だったのか、と言いました。
アルコールで身を滅ぼす人トラブルになる人が多数いて、お酒が飲めないことで助かっていることがたくさんあります。反面、神楽坂でおすすめの居酒屋を聞かれても、一切お酒を飲めない私は情報が乏しくて困ることがありました。何よりお酒が飲めたら世界が広がるだろうとは思っています。今や世界に進出するSAKE:日本酒。知っておいて損は無いのでは。
もしも高品質の日本酒ならば楽しく飲めるかもしれない。そのような期待があります。
甲野 功
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