開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
先日、あじさい鍼灸マッサージ治療院が寄付金を贈っているSOSIA主催のイベントが行われました。
SOSIAは私の妻が代表を務めるNGOで、ミャンマーの孤児院を支援しております。当院は今年5月に「開院5周年記念ミャンマーチャリティカフェ」を開催しましたが、そこで集まったお金を寄付した団体です。
7月7日に文京区のフミコムにて「多文化カフェ」の第3弾としてミャンマーの格闘技ラウェイのナショナルチャンピオンとなった金子大輝選手を招いての講演会でした。この「多文化カフェ」に子供を連れて参加してきました。
知っている人は知っていますが、私はかなり格闘技を見ます。
元々はプロレスファンで中学校2年生の頃からプロレスを見続けてきました。日本の格闘技が発展するにあたり、プロレスラーの存在は大きく、プロレスラーが格闘技に挑戦することで広まった一面があります。プロレスラーが格闘技と行き来する時代に自然と格闘家もチェックするようになりました。
今から10年くらい前でしょうか。定期的に読んでいたプロレス格闘技雑誌に、日本の空手家がミャンマーに渡りラウェイに挑戦するという記事を目にしました。世界一過激なルールと称されるラウェイ。そこに挑戦しなければならないというものでした。
そこで初めて私はラウェイのことを知りました。格闘技は見ること専門で一切経験がありませんが、素人目にもあまり危険なルールであることは分かりました。
頭突きがルールとして認められている。
どの格闘技でも反則として禁止している頭突きを公式ルールで可能としています。未だにこのようなルールがあること自体考えられません。危険を伴うためラウェイルールで闘うことが大きな挑戦でしょう。
ミャンマーにはラウェイというとてもつもない格闘技が存在する。その認識ができました。
それから年数が経ち、日本人で初めてミャンマー国内でチャンピオンになったという話を妻から聞いて大変驚きました。本国で試合をして勝つことがどれだけ難しいかは、格闘技を長らくみていれば分かります。あのラウェイで日本人が、という想いでした。それが金子大輝選手でした。
今回妻が金子選手を招待して講演会をするという話を知りとても興奮し、是非とも参加したいと願いました。
当日の様子を書いていきます。
まずSOSIA代表として甲野綾子が団体の沿革、活動内容、現在のミャンマーの様子などを話しました。つい先日ミャンマーを訪問し現地の生の状況を仕入れてきました。3回にわたるこの「多文化カフェ」のトリとなりました。
後半から金子大輝選手の登場です。
チャンピオンベルトを持参してくれました。
先月の両国国技館でK-1と契約し主戦場を日本に移すと発表したばかり。これからが注目です。
記事:ミャンマーラウェイ王者・金子大輝がK-1JAPAN GROUPと契約!「K-1のリングでミャンマーラウェイの強さを証明する」 K-1JAPAN GROUPサイトより
動画:【ミャンマーの国技ラウェイから】金子が参戦! AbemaTVより
まず金子選手によるラウェイの説明がありました。
ラウェイは拳(パンチ)、肘、膝、足(キック)の左右合計8ヶ所から繰り出す攻撃に加えて頭(頭突き)が入る計9ヶ所での攻撃が可能です。ちなみにボクシングは拳だけ。2ヶ所のみです。
立ち技格闘技でも肘打ち無しのルールを採用しているところも多く、頭突きOKに目がいきがちですが肘ありだけでもかなりのものです。もしもボクシングに肘ありになれば競技が変わってしまいます。それくらい大きなことです。近距離からの攻撃が可能になるからです。
更に頭突きありとなれば密着した状態からも攻撃できることになり、戦い方は更に変わっていくことでしょう。人体で特に丈夫な前頭骨で攻撃可能というのは繰り返しますがとても危険なことです。当たり所が悪ければ顔を殴った方が指を骨折することがあるくらいです。
肘打ち、頭突きがあるということは鼻が折れたりカット(切れて出血する)したりする確率が格段に上がります。格闘技経験者ならばこの危険性が分かることでしょう。
ラウェイはグローブを着用しません。バンテージを巻いただけの状態で戦います。
ボクシングの場合、バンテージを巻いた上にグローブを着用します。それは相手のダメージに加えて打つ側の負担を考慮してのこと。ラウェイは打たれる方も打つ方も痛いのです。
私は鍼灸マッサージ師で、その業務内容のせいか元プロ格闘家や格闘技経験者の同業者が結構います。経験者曰くグローブ無しなど考えられないと語ります。それだけ原始的な戦い方をします。
金子選手は参加者の様子を察してか格闘技としてのラウェイについて、細かく語りませんでした。写真もなるべく暴力的に見えないものを選んでいました。
服装もしっかりとスーツ着用でした。ただでさえ粗暴なイメージがつきやすい格闘家であるため身だしなみをしっかりする気遣いを感じます。髪を染めて派手にしている分、紳士であることに気を付けているようでした。
実は講演会が始まる前、子供たちとお昼を買いに春日駅のそばを歩いていたときに、路上で金子選手とすれ違いました。初対面で金子選手だと確証が持てなかったのですが(写真では黒髪でしたし)、体格と歩き方、雰囲気からこの人はただ者ではないなと感じて、「もしかしたら金子選手なのかも」と心の内で思っていたのです。会場でお会いしてやはりと。
会場入りしてからスーツに着替えたので身だしなみを整えて登壇するところが垣間見えました。
金子選手が繰り返し話していたことに、乱暴な口をきく選手は残れない、ということがありました。格闘技をしている人は相手を挑発したり粗野な態度をみせたりすることが少なくありません。日本でも海外でも一定数存在しますし、プロモーターやマスコミがキャラクターとして求めることも。
しかしラウェイでは選手が紳士であることが求められると言います。礼儀正しく立ち振る舞う。それが大切だと語りました。
このことを聞いたときにラウェイは格闘技というより日本の武道に近いのかと感じたのです。競技としては危険すぎます。道として追及するものなのかと。
このようなことも話していました。ミャンマーではラウェイの野試合もあると。
町の素人でもラウェイをするというのです。プロの試合もあればお祭りで一般人が行うこともあると。これだけ危険なルールに関わらずやるというのは昔の素養として武芸を学んでいた日本人を彷彿させました。はっきり言って趣味でやるようなものでは無いと考えてしまうのです。
質疑応答の時間で私はなぜこのような危険なルールが残っているのか質問しました。
国が近代化してスポーツ化が進めば選手を守るためにルールは安全な方に変化していくものです。真剣で勝負していた戦いを竹刀に換えて剣道になったように。当て技、逆技、投げ技なんでもありだったものから柔道にまとめたように。ミャンマーでは文化的な背景があってルールを近代化させないのかと予想しました。
金子選手の答えは「ラウェイへの愛」でした。ミャンマーの人々はラウェイを愛しているからだというのです。私には全く実感はわきませんが、予想外かつ実にシンプルな回答にあっけにとられました。
他にも格闘技の戦術的な質問がありました。どのように勝ったのかといった。詳細は秘密ということで書きませんが、なるほどこのように考えるのかと納得しました。
数年前までミャンマーのこともラウェイのことも知らなかったという金子選手。今はミャンマーという国とともにラウェイが好きだと言います。これからミャンマーとラウェイを背負ってK-1のリングに立ちます。
格闘技的な興味から入った今回の講演会。世界一過激な格闘技はミャンマーという国なくして成り立たないものだと知りました。異国の地で戦い、日本の大きな舞台に挑戦する“本物”に接してエネルギーをもらいました。
甲野 功
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