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~施術記録 鍼とオイルマッサージ~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 患者さんからのコメント
患者さんからのコメント

 

前回の鍼灸施術体験記、被験者となった患者さん本人に好評でした。

またこれを読んだある鍼灸専門学校学生は主訴、検査、見立て、具体的な鍼灸の方法が知ることができてとても勉強になったといいます。

 

さて、この患者さんは足の痛みとともに体型が変わってきていることを気にしており、仕事柄困っているということを聞いていました。
施術後に送られてきたコメントを載せます。

 

患者さんコメント(抜粋)

30代から上半身は痩せているのに下半身だけむくむようになり、マラソンやエクササイズをしましたが、それほど改善せずでした。

40代になるとこれまでのズボンやロングブーツが入らなくなるほど足がむくむようになりました。

 

夏でも下半身が冷えて、ふくらはぎはパンパン。毎日筋肉痛のような感じで運動もしたくなくなり、年々ひどくなっています。
今月中に仕事柄バランスが取れた衣装を着なければいけないので、悩みの下半身を細くし、できるならこの痛みが取れたらいいと思って治療をお願いしました。

 

このことは前から聞いていたので、足の痛みとは別に下半身を細くすることができないかという点に注力して、前回とは違った方法で施術することにしました。

 

患者さんコメント(抜粋)

治療は先生の診断が後で教えてもらえたので、今回もお願いしました。
以前ここで鍼灸治療を受け、随分痛みが取れた事があったので安心して受けました。

 

患者さんは「診断」と記載していますが、これは前回行った鍼灸体験記のレポートのことを指していて
患者さん自身の状態がどういう状態で
私がどのような意図でどのような鍼灸施術をしたのか
が分かったことに納得できたという意味になります。

 

ただお願いしますということでなく、好奇心と研究心が伺えます。

 

今回は下半身を細くすることに注目しているので前回とやり方を変えて行いました。前回と同様に画像に残してレポートにしてもらいたいという要望がありました。

そこで今回も、その日行った施術内容を患者さんが提供してくれた画像とともに振り返ります。

 

・前提として患者さんの要望で行っております。
・写真撮影は患者さんのスマートフォンを用いて私が行いました。
・オイルマッサージを行いましたがそのときの画像は撮影できないので残っておりません。
・撮影した画像のうち患者さんが出してよいと私に送られてきたものだけを掲載しております。
・コメントはこちらが都合よく解釈しないように患者さんから送られたメッセージより引用しています。
・料金を頂いた上で行っています。
・撮影時間があるため若干施術時間が通常よりも長くなっております。
・患者さんは匿名で個人を特定できる情報を明かしませんが、治療方針において必要と思われる内容(性別、年代など)は一部公開しています。
・●は患者さんのコメント、◆は術者である私の主観です。

 

それでは今回もなるべく症例報告に近い記載で記し、専門用語にはなるべく解説をつけて記載していきます。

 

日時:2019年7月9日 10:00~11:55
場所:あじさい鍼灸マッサージ治療院
患者:40代後半女性、自営業

 

●患者さんコメント

30代から上半身は痩せているのに下半身だけむくむようになり、マラソンやエクササイズをしましたが、それほど改善せずでした。

40代になるとこれまでのズボンやロングブーツが入らなくなるほど足がむくむようになりました。

 

夏でも下半身が冷えて、ふくらはぎはパンパン。毎日筋肉痛のような感じで運動もしたくなくなり、年々ひどくなっています。


今月中に仕事柄バランスが取れた衣装を着なければいけないので、悩みの下半身を細くし、できるならこの痛みが取れたらいいと思って治療をお願いしました。

 

◆検査所見:
これまでの治療で熱が上に溜まって下半身が冷えるタイプであると認識していました。
陸上競技経験者ということで元々下半身の筋肉がしっかりしていたとうかがえます。運動不足と年齢により代謝が落ちていると推測しました。前回ほどではないにせよ下腿(ふくらはぎのこと)の浮腫みと足先の冷感が触知できました。

 

◆治療方針:
前回は東洋医学的な観点でアプローチをしましたが、今回は解剖学的な観点で行うことにしました。
鍼で下半身の大きな筋肉を刺激し眠っていた筋肉を活性化させる
その上でオイルマッサージにより求心性(足先から上に向けて)に静脈・リンパの流れを良くする
この2つをすることに。

 

①は経穴(東洋医学的なツボ)や経絡(気の流れ)は意識せずに筋肉に刺すというスタンスです。電極を使って電気を流す低周波鍼通電(パルス)を行うことで筋肉を収縮させ循環作用(ポンプ作用)を促し、血流を良くするように試みます。同時に筋肉に内部(皮下よりも深部という意味)から刺激を与えて活性化を狙います。


②は静脈・リンパといった浮腫みの原因となる余分な水分を上に流す効果を期待します。これは衣服の上から揉むこと(按摩・指圧)よりも短い時間で広範囲にアプローチできることがメリットになります。

 

 

施術 うつ伏せ1:鍼
山正社製で2寸-3番(長さ60㎜太さ0.20㎜)のディスポーザル鍼(使い捨て鍼)を使用。大殿筋(お尻の筋肉)、ハムストリングス(太もも裏の筋群)、腓腹筋(ふくらはぎの後ろにある大きな筋肉)に刺して、鍼に電極を繋げます。全医療器社製のオームパルサーLFP-4000A(電気を発生させる装置)にて鍼通電を行います。MIXモードという筋肉は単収縮と強縮を交互に繰り替える出力パターンで行いました。出力量は患者さんが痛みを感じない程度に調節。通電時間は約10分。

 

あじさい鍼灸マッサージ治療院 オームパルサー
オームパルサー
あじさい鍼灸マッサージ治療院 足の鍼通電の様子
足の鍼通電の様子

  

施術 うつ伏せ2:オイルマッサージ
下半身全体をワールドジェイビー社の水溶性ブレンドオイルを使用して求心性にマッサージを行います。

 

あじさい鍼灸マッサージ治療院 マッサージオイル
使用したマッサージオイル

 
なお厚生労働省が認可する資格免許「あん摩マッサージ指圧師」においてはマッサージとは<皮膚の上から直接、滑剤を用いて行うもの>としっかりと定義されています。衣服の上から揉んだり押したりするのは按摩指圧に分類されます。医療従事者としてのマッサージは慰安やエステ効果だけでなく症状を改善させる目的で行います。


下半身後面全体で10分ほど行いました。その後蒸しタオルでオイルを拭き取り乾いたタオルで再度拭きます。
※下半身に刺激が偏るため上半身にもマッサージをしております。

 

★甲野主観
低周波鍼通電(パルス)の出力パターンはMIXモードを選択したのですが、刺激が強く感じやすいためはっきりと筋収縮するまでに至りませんでした。筋肉に刺激を与えて活性化させる面はそれなりに効果があるでしょうが、筋肉を収縮させてポンプ作用を狙う点は満足できるものではなかったです。技術面でやや不満があり、鍼の長さや本数にも改善の余地があります。
オイルマッサージは広い面で流すことができるため効率が按摩指圧より良い面があります。鍼刺激とは別の刺激となるので体がどのように反応するかを見定めている感覚があります。

 

 

施術 仰向け1:鍼
患者さんに仰向けになってもらい、太もも前面の大きな筋肉(大腿四頭筋、その中の外側広筋)、脛の前外側にある筋肉(前脛骨筋)に対して同じく山正製の鍼を刺入して低周波鍼通電を行います。後面と同じように出力モードはMIXモードで出力量はちょうどいいくらいの刺激量にしています。約10分間通電しました。


大腿四頭筋は膝を伸ばすときに使う筋肉であり人体で一番強い筋肉と言われており、とても大きな筋肉です。前脛骨筋は足首を、つま先を上げる方向に、動かす筋肉です。

 

 

施術 仰向け2:オイルマッサージ
後面と同様に下肢前面もオイルマッサージを行います。特に太もも外側にある腸脛靭帯の部分をしっかりと行いました。
※こちらも下半身に刺激が偏るため、上半身にもマッサージをしております。
※リラックスしてもらう目的で、目の周りをホットタオルで押しました。

 

★甲野主観
後面に比べて外側広筋も前脛骨筋も筋収縮がより認められました。外側広筋は専門学校(鍼灸マッサージ教員養成科)の卒業研究で用いた個所なので慣れていました。既に鍼通電をしたため、筋肉の反応が良くなっていた可能性があるかもしれません。出力を上げすぎると痛くなってしまうのでやはり十分に上げられなかったことは課題です。


鍼→オイルマッサージ→鍼→オイルマッサージとしているので前面のオイルマッサージの段階でかなり筋肉が緩んで温かくなっている感触がありました。表層から深層へと段々と圧を深く入れていくように心がけました。


ただ、客観的に見て直後の効果はよく見てとれませんでした。

 

あじさい鍼灸マッサージ治療院 術後の足の様子
施術後の足の様子

 

 

術後の患者さんコメント


治療後、身体全体がこれまでの自分と違って軽くなったようでびっくりしました。身体中の水分が綺麗に流れているようで、足の筋肉も柔らかく、ふくらはぎと足首のむくみがとれたように思いました。
仕事に戻ってもずっと軽く、快適で仕事進みました。
一日痛みがないのがとても嬉しく、今まで痛みで避けていた運動もできるように思えました。またこの状態を維持したいと思い、日頃の姿勢や生活を見直そうと思いました。

 

あじさい鍼灸マッサージ治療院 患者さんのコメント
患者さんのコメント

 

患者さんの実感としては随分良かったようです。効果も感じられたようです。


シビアな目で見れば、鍼にオイルマッサージと大きく異なる二つの手技をしたことで「お得な感覚」が出て過大評価してしまっているかもしれません

鍼は針先というくらいでまさに点で入ります。対してオイルマッサージは手のひら全体を用いて面が大きくなります。感覚としてよりやってもらっている感じがするのです。それは指圧や揉捏(揉む動作のこと)が多い按摩の手技よりも感じるもの。そういった感覚があるのではないかと予想しています。


良い方に考えれば、私の思惑通り筋肉対するパルス(深い部分の刺激)とオイルマッサージによる表層への刺激が相乗効果を出したのかもしれません。既に述べたように“点”と“面”の効果もあるかもしれません。今後も考察する必要があります。

 

反省点としては低周波鍼通電のやり方を変えていくこと
単収縮と強縮という二つの収縮形態を筋肉に与えた方が良いと考えてMIXモードで行いましたが、刺激が強すぎた感じがあります。これならば単収縮のみで確実に筋肉を収縮できる出力を確保した方がよいのでないかと考えました。患者さんの感受性によるものですが、今回はそう感じました。
また鍼の長さも2寸と長い鍼を使い電極を付けたときにしなってしまいました。そうなると体内で余計な方向に力がかかってしまいます。鍼の長さや電極を付ける場所も変えた方が良いのでないかと勘ですが思っています。

 

 

今回も患者さんの方からまたまとめてもらいたいという要望で行いました。これまで何度か受けた私の鍼灸と違ってとても効果を実感したと言います。良かれと思って試した方法で効果が出たことは嬉しい限り。しかしやってみないと分からないというギャンブル的な要素もあるわけで、精度を上げていかないと単なる人体実験になりかねません。その点は心していかないと。


また私がはり師とあん摩マッサージ指圧師の両方の免許を持つことでできたこと。我々の業界ではあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅうし師の3つを持つ者を、それら資格免許の頭文字をとって「あはき師」と呼ぶ通例があります。単に3つあるだけなく相互に活用できたらなお可能性が広がるはずです。そのことを再認識しました。

 

今回もこのようなチャンスを頂き、ありがとうございました。画像と感想を送っていただいた患者さんに感謝申し上げます。この経験を今後、他の方にも活かせるように努めていきます。

 

甲野 功

 

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