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~「新・魔法のコンパス」を読んで 「お客さんの一日」をコーディネートする~

角川文庫 新・魔法のコンパス 西野亮廣著
西野亮廣著 新・魔法のコンパス 角川文庫

 

 

先週末から吉本興業の問題が世間を賑わしています。名の知れた売れっ子芸人や企業の社長が会見で涙を見せる事態に。その騒動の中で静観を決め込むのが吉本興業所属、キングコング西野亮廣氏。テレビ出演から軸足を離して独自の活動をしています。その西野亮廣氏の著書「新・魔法のコンパス」を読んで私の実務に応用できる点を考察しています。

これまで
人検索の時代へ
リピーター獲得の方程式
に触れてきました。今回が最後になります。

 

 <第2章 広告 集客したければ、「お客さんの一日」をコーディネートしろ。>

この部分について書いていきます。本文から一部抜粋します

強いコンテンツを出せば集客できるわけではない

吉本興業は全国に10個近く劇場を持っている。
だけど、一年間を通して安定してお客さんが入っているのは大阪にある『なんばグランド花月』ぐらいで、あとの劇場は、お客さんが入っている日があったり、入っていない日があったり。

お客さんが有名人(強いコンテンツ)に釣られてやってくるのであれば、東京の劇場は常に満席のハズだ。
だって、テレビの人気者達が出ているんだもん。
しかし、東京の劇場が毎日満席ということはない。
どうやら「有名人をブッキングすれば、お客さんが集まる」というわけでもないらしい。

だとしたら、『なんばグランド花月』と他の劇場は、どこで集客力の差がうまれているのだろう?
答えは、「お客さんの一日がコーディネートできているか否か」だ。

お客さんの一日をコーディネートしよう

当たり前だけど、大阪にある『なんばグランド花月』に来てもらうには、大阪に来てもらわないといけない。
「なんばグランド花月」の為にだけ大阪に来てもらうのは難しいけれど、
USJに行って、
タコ焼きを食べて、
なんばグランド花月で『吉本新喜劇』を観て、
お好み焼きを食べて、
夜はミナミで呑むことができるのであれば、
「大阪に行こう」となるわけじゃない?

キミがお店を出す時やイベントを開催する時は、キミのお店やイベントの力だけでお客さんを呼ぶのではなく、
「ここに来たら、前後の時間にこんなコトができますよ」
と案内して、一日をコーディネートしてあげるといいと思うよ。

まとめ
お客さんは「時間を持て余すこと」を極端に嫌う。
一つのコンテンツでお客さんを呼ぶのではなく、複数のコンテンツが堪能できる「一日」をコーディネートしてあげよう。

 

このことは今後とても重要になってくると考えています。本業である治療院経営は患者さんが訪れないと成り立ちません以前も書きましたが私の仕事はオンラインや宅配でできるものではありません。実際に対面して行うことが前提です。健康相談や動画やブログといった情報配信はできますが、本分である按摩指圧、マッサージ、鍼灸といった行為は実際に体に触れないとできません。テレパシーを使って電話口で治すというひともいるようですが、私には不可能。対面しないといけません。

そうなると人が来なければ、もしくはこちらから訪れなければいけません

そこで問題になるのが人口減少です。AIやロボットが代わりに働いてくれるという話を耳にしますが、それは労働者の視点。消費者が減るということにはあまり言及していないように思います。そもそも消費者がいなければ商売にならないため、人口が少ない地域から企業は撤退するのが当然です。そうでないのは国や地方自治体といった公的機関が担うもの。利益が上がらない場所に企業は力を入れません。過疎地域は全てが不便になっていきます。

 

最近「東洋経済オンライン」で下記のような記事が出ました。

将来「人口が激変する」500自治体ランキング 2045年推計人口は2015年比で大幅に減少する

これによれば多くの地方都市が30年で人口減少に陥ります。これは分かり切った事実ですが、地方自治体別に見た予測が凄いことになります。予想変動率1位の北海道歌志内市は7割強の人口減少が予測されています。他にもランキング上位には2015年に比べて30年後人口が半分以下になると予測される地方自治体がたくさんあります。具体的な数値予測が出ると現実味を帯びてきます。私の理想は地元の方々に来院して頂き地域に根付いた治療院を運営していくことです。しかし地域に人がいなくなればその理想は根底から崩れます。

私の住む東京都新宿区はそう大きな人口減少が起きるとは考えづらいです。先の記事には人口増加に転じると予測される自治体上位3つには、同じく東京23区の中央区、港区、千代田区が入っています。新宿区と隣接する区は30年で3割人口が増えるという予測。新宿区も大きな減少は無いと思われます。しかし楽観はできず近隣住民が減っていくという想定を持たないといけないでしょう。新宿区といっても狭くないので拠点とする牛込エリアの人口が減ってしまうことも考えられるわけです。


なんにせよ人口が減るということが間違いないので、このことを社会環境の前提条件として頭に入れておかないといけません。この先何十年と仕事を続けるとなると。そうなれば地元住民だけでなく、外の地域からも患者さんを呼ぶ必要に迫られることになりますその際に「あじさい鍼灸マッサージ治療院に来院する」ためだけに電車を乗り継ぎ新宿区牛込まで訪れるのは厳しいでしょう。そう“来院するためだけ”では。うちに遠方からいらっしゃったことのある患者さんで言えば、岡山、栃木、四国、大阪、京都などになりますが、必ず他の目的がありました。第一目的がうちを訪れるという方も稀にいますが、多くは第二、第三目的でした。
・某有名海外アーティストのコンサートのために上京した際に
・仕事の出張で上京したので
・東京のイベントに参加するついでに
など、東京に来る理由が別にあり、それならば以前から気になっていたあじさい鍼灸マッサージ治療院を訪れてみようというものです。また、うちに訪れるために東京に来ると決めたとしても、上野の散策をする、別の場所も巡るといった第二の予定を組み込んでいます。

 

遠方から来る場合は複数の理由があった方が良いのは明白です。となれば、おのずとマッサージや鍼灸といった治療以外にも来院する目的を作ってあげた方がよいでしょう。その観点で考えたのが施術に加えて神楽坂を観光し、グルメも含めたツアーにしてしまう6次サービス。試作として遠方から来ていただいた患者さん(知人、友人で前から面識がある方のみですが)に神楽坂を紹介するようなことをしたりしています。

反対の立場もあります。私は気になった神社仏閣、パワースポットを訪れるのが趣味です。一人旅ができます。そこに鍼灸院訪問を組み込む。ゴールデンウイークのお伊勢参りでは以前から気になっていた「こもの鍼灸院」で美容鍼を受けてきました。昨年の京都旅行では専門学校同級生の鍼灸院を訪れました。神社に行くだけで新幹線に乗るのは躊躇しますが、同時に普段体験できない鍼灸院を巡るのを加えると自身の勉強のため、交流のためという理由が加味されて行動しやすくなります。同様に前から気になっている鍼灸師に会うためだけに一日を費やせないけれど、ついでに観光もするなら時間とお金をかけてもよいだろうと。

 

このような損をしたくない心理。それを解消するためにこちら側から「患者さんの一日をコーディネートする」という考えは大切です。これまでは患者さん自らスケジュールを考えていましたが、この先、来院させる患者さんの一日をこちらでコーディネートする必要に迫られるのではないかと思っています。おそらく東京新宿区にあるうちよりも、地方都市の方が先に。

海外の富裕層が日本に医療ツアーに訪れているといいます。今後東洋医学が注目されて、日本の鍼灸を受けるために来日する人が出てくるかもしれません。否、そのように仕向ける必要があるでしょう。個人で行わずとも旅行代理店やコーディーネーターがしてもいいですし。もう少し身近に考えれば地方の鍼灸専門学校学生が一泊なり二泊で東京(関東)の鍼灸院を巡り治療を受けたり鍼灸師と交流したりし、それに観光もセットにしてしまう。母校では中国に研修ツアーを組みますが、地方の専門学校ならば東京をはじめとした大都市でそれを行うのも手ではないかと。

 

近隣に住む方を大切にするのはもちろんのこと、外にも目を向けて呼び込む工夫が必要になると「新・魔法のコンパス」を読んで改めて考えました。

 

甲野 功

 

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