開院時間

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~学生向けあましセミナーを開催~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 あましセミナーの様子
当院で行われたあましセミナーの様子

 

8月4日(日)にあじさい鍼灸マッサージ治療院を開けて、あん摩マッサージ指圧師専門学校生を対象にした「あましセミナー」を開催しました。“あまし”とは按摩(あんま)、マッサージ(まっさーじ)、指圧(しあつ)の頭文字を取った略称で、業界用語に近いものです。

 

きっかけは6月、鍼灸あん摩マッサージ指圧専門学校1年生のTwitter上のつぶやき(ツイート)からでした。

 


鍼がメインのセミナー、灸がメインのセミナーはあるけど、あんま・マッサージ・指圧のセミナーてそんなない…

 

 

あじさい鍼灸マッサージ治療院 ある学生のつぶやき
ある学生のつぶやき ここから始まりました

 

 

 

それを目にした私は、「(そういうセミナーを)やりましょうか?」と返して開催する方向に向かいました。


もう一人練習台になってくれる人がいた方がいいので誰か探してくれますかと依頼主にお願いして、他に参加できる学生さんを募ってくれました。

 

 

あじさい鍼灸マッサージ治療院 セミナーに参加する学生を募集するツイート
セミナーに参加する学生を募集するツイート 反応がありました

 

 

結果、鍼灸あん摩マッサージ指圧科(以後、“本科”と表記。一般に鍼灸もしくはあん摩マッサージ指圧のみの資格習得のために学ぶ学科を専科、鍼灸とあまし両方をする学科を本科と言います。)に通う学生さんが合計4名手を挙げていただき、学校が夏休みの時期になる8月に開催することになりました。

 

まず学生さん、まして1年生の方がふとした疑問をネット上に出したこと、その裏にあましのセミナーが無いという不満を感じました。実際に探せばあましのセミナーはあるのですが1年生では探しづらいものでしょう。直接面識は無かったのですがおそらく慶応義塾大学で行われた津田昌樹先生のセミナーに参加していたひとだろうな、と予想していたので私も声をかけてみました。

 

昨年、大塚の鍼灸治療院森空堂で行われた学生向け鍼灸師施術見学会を思い出しました。
これもTwitter上で鍼灸専門学校生が臨床現場で働いている現役鍼灸師の手技が見てみたいとつぶやいたことに、森空堂の野村森太郎先生が場所を提供するから見学会を開催しよう!と賛同したことがきっかけでした。

この施術見学会に私も施術を見せる側として参加しました。そのときに学生さんの声を先輩鍼灸師が拾って実現させる実行力に感銘を受けたものでした。ましてその日は5月15日で当院の開業4周年記念日だったので強く印象に残っています。

 

今回のあましセミナーが無いな、という声に私も手を差し伸べることが業界の未来に繋がるだろうと思いました。昨年の野村森太郎先生の行動を見習って。

 

このような学生さんを手助けするという公的な気持ち以外にも私的な強い願いもありました。
私は元々徒手療法中心でやってきました。本当にここ数年鍼灸に対して本気で取り組むようになりましたが、割とあまし至上主義みたいなところがありました。民間資格のリラクゼーションから数えれば18年くらい、小学校の頃から母親の肩もみを始めた頃から数えれば30年以上、手で揉むことをしてきました。技術、経験、資格免許、知識などが蓄積した自負があり、どこかで教えたいという希望をずっと心に秘めていました

 

また無料ではなく有料で教えること

無料で教えるのは簡単にできます。学生向けで大した額ではありませんが対価を頂いてセミナーをすることは、私にとって大きな一歩でした。開催が決めってからの2カ月弱、色々とシミュレーションを重ねてよい内容にしたいと考えてきました。

 

参加する学生さんは都内3つの専門学校で1年、2年、3年と見事に分かれていました。各学校に特色がありますし、それを理解しているつもりです。学年も違うので授業で習っている進度も異なるわけです。

 

この状況でどのような内容にすれば最適解に近づけるのだろうか?そう自問自答します。

 

私は鍼灸マッサージ専門学校教員免許を持っているので学校講師がどのようなことを教えるかは想像がつきます。やはり現場に出ている人間は臨床で使えるものが良いだろうなと考えました。

 

それともう一つ、学生さんは卒業後のことが分からないわけで(卒業したことがないので当たり前なのですが)、卒業後の進路に役立つ内容にしたいと。
私は専門学校に入る前からどのような進路にするか決めていました。だから学校の勉強に身が入ったし成績も良かったのです。
講師側(私)が知識や技術をひけらかす自己満足的なものにしてはいけなくて、参加した学生さんが「卒業後に役立つ」、「進路がより明確になった」、「授業を受けるのが楽しくなった」という成果が期待できるものにしたいなと考えました。

 

そこで事前にアンケートを取ることにしました。参加者は本科学生ですから鍼灸とあましの両方を勉強しています。現時点での考えというかスタンスを知っておきたいと思いました。

 


大まかに鍼灸寄りかあまし寄り、あるいは完全に均等、かを教えてください。今後の理想でも構いません。
・あまし(のみ)で治療を完結できる、する方針の内容
・鍼灸に取り込むためのあましという内容
・鍼灸とあましを互いに補完して効果を出すための内容
ざっくりとこの3パターンがあるかなと。
セミナーって講師のやりたいことを押し付けてしまうことが多いので先にニーズを調査します。学年によっても考え方は違うでしょうから。

 

 

あじさい鍼灸マッサージ治療院 事前に行ったアンケート
事前に参加する学生さんに行ったアンケート

 

 

 

その結果、見事に異なった回答が返ってきました。


鍼灸のセミナーはよくあるのであまし師による深堀りするセミナーがよい
鍼灸とあましのいい所取りをするやり方を知りたい
鍼灸ができない方にあましでどうアプローチしたらよいのか
将来、訪問マッサージをしたいのでその時に活かせるやり方や、揉み返しを起こしやすい方へのやり方


といった内容でした。

 

これはまたニーズが分かれたな、、という感想でした。どうしようかな、とやや途方に暮れました。
あじさい鍼灸マッサージ治療院は看板に<患者さんのニーズに合わせたオーダーメイドの治療を>という文言を載せていまして、セミナー参加者に合わせた内容にしないといけないという義務感のもと、内容を決めました。

 

 

当日はこのような内容になりました。

 

自己紹介タイム
まず私のこだわりなのですが、セミナーは講師のバックボーンと考えを知らないといけないと考えています。例えば鍼灸師の家系に育った鍼灸師と、突然脱サラして鍼灸師を目指した人では環境が違います。もしも私の娘が鍼灸師になるとなったら、脱サラして突然この道に入った私とではスタートが大きく異なるので前提条件が変わります。

 

また講師が例えば「指圧命!按摩やマッサージなど認めない」という人でしたら指圧以外の技術を学ぶことは難しいことでしょう。初対面の4名の学生さんに私のことを少し理解してもらってから話を聴いてもらいたいのです。
参加者全員の自己紹介をしてもらいました。

 

 

座学
あましについての講義。これは別の機会に書きます。

 

 

実技タイム その1
「基本手技を組み合わせて臨床的な按摩指圧をしてみよう」をテーマにしました。床で行いました。

 

基本的な姿勢、指・手の添え方を説明します。鍼灸よりも運動能力が必要だと考えるあまし。下半身は特に重要で両足で長方形、平行四辺形を維持するように言いました。そして頭を上げて視線を患者の頭や遠くに置くようにします。慣れないとついつい押している部分を見てしまいがちですが、そうすると背中が丸まって圧がきちんと入りません。

 

 

あじさい鍼灸マッサージ治療院 床とベッドに乗るのと2組同時進行
床とベッドに乗るのと2組同時進行
あじさい鍼灸マッサージ治療院 体勢のをどのようにするか
体勢のをどのようにするか

 

 

押圧操作(押すこと)に加えて細かく揉捏動作(揉むこと)や強擦(回すような指の使い方)を入れてポイントを微調整させて効かせる圧を入れていきます。このときに指先にある抵抗する感触で方向を見定めます。この方向が分かっていれば鍼を指すときに方向が明確になります。

 

 

あじさい鍼灸マッサージ治療院 指の細かい使い方を指導
指の細かい使い方を指導

 

 

練習台になっていただいた学生さんの右側の殿部から足までを私が按摩指圧のデモをします。その結果触っていない右腰部も緩んで見た目からも凹んだことが分かります。これを「筋肉の反射」というのか「太陽膀胱経が疎通した」というのかは状況次第ですが、遠隔操作ができることを示しました。この見せ方が昨年の鍼灸施術見学会で行ったことと同じでそのときは鍼を4か所刺してみせました。

 

このように学生さんに実例を見てもらい腰痛の方に殿部下肢を按摩指圧で緩めてメインのところに鍼を使う、あるいは腰部に鍼を刺した状態(置鍼といいます)で下肢の方に按摩指圧をして鍼の効果を高めるなどの双方向のやり方を紹介しました。


世間一般の人には鍼灸は痛い、怖い、熱い、怪しいというネガティブなイメージがあるものです。比べて按摩指圧(いわゆるマッサージ、整体と世間で認識しているもの)の方が、抵抗感が低いわけです。しっかりと按摩指圧で信頼感を得てから鍼灸を提案することで受け入れてもらえる可能性が上がると話しました

 

 

実技タイム その2
続いて、訪問マッサージ現場で使える技術です。訪問マッサージとは医師の同意を得た保険を使った施術という意味です。

 

・対象者はお年寄りが多く、外出困難の方がほとんど。効かせるというより日々の体調チェックやいたわる気持ちが優先させるもの。
・相手の手足を動かすために持つことがあるので指先に力を入れずMP関節という場所で優しく支えてあげること。
・把握といって手全体で包み込む手技を使用するとよい。
・自宅に訪問すると施術するには困難な体勢になってしまう状況であることがほとんどなので、患者さんの負担にならないように、かつ術者もできる範囲で気を付けること。
・中指を使って揉捏、押圧するやり方。
・ご家族がそばにいることが多いので外見からも格好がよい姿勢で行うこと。


などを話しました。

 

あじさい鍼灸マッサージ治療院 訪問マッサージの現場で使える技術
訪問マッサージの現場で使える技術
あじさい鍼灸マッサージ治療院 把握の手技を使って包み込む
把握の手技を使って包み込む

 

  

実技タイム その3
体重移動と重心移動を考えてもらう時間です。

 

体重は「体の重さ」であり大きさがあります。重心は「重さの中心」であり点ですから概念上位置だけで大きさがありません。重心はその人に決まった場所、教科書的には第2仙骨の前方などと言いますが骨盤内のある1点と考えていいでしょう。
この重心が動いていかないと圧が効果的に入っていきません。腕や肩にも重さがあるので寄りかかるような押し方でもそれなりに圧が入るのですが方向が甘かったり奥に届いていかなかったりします。

 

そこで足へのオイルを用いたマッサージで動作を確認してみます。足首から太ももの上の方まで距離があります。下から上まで軽擦(なでる手技)をするとなると、しっかりと重心を移動させないとできません。手先を動かす体重移動だけではできないので意識的に重心、もしくは骨盤を動かしていく意識を持ってもらいます。

 

このとき注意しなければならないのが頭を下に向けると動いた気になるということ。人間は情報の大部分を視覚から得ますし、情報処理は脳で行います。目も脳も頭にあるので頭が動くと体が動いたように錯覚してしまいます。頭を下げずに視線を遠くに定めて下半身をしっかりと使って重心を移動させること。

 

この重心移動が身についてくると術者が座っていても片膝立ちでも重心を意識できて芯に届く圧を入れられるようになります。実技タイムその1の復習にもなります。

 

 

実技タイム その4
最後は実際に按摩指圧を受けてみて復習してもらう時間です。「背中から上の上半身」と「腰から下の下半身」の2つにグループ分けをして、私がやや速いペースですが学生さん普段臨床で用いる按摩指圧を行います。


その際にこれまで話したことを復習を兼ねて話しながら。最初に按摩指圧を受けて、次の学生さんも同じことをするので、そこで外側から見る。受けることと観察することを連続で体験してもらいます。加えて実際の動きや流れも確認してもらいます。


リズムを一定に保つ。
常に相手の体に触れながら移動する。
圧を入れながらも相手の状態を読み取る努力をする。


など細かい話も入れてみました。

 

 

あじさい鍼灸マッサージ治療院 実際に学生さんに按摩指圧を受けてもらう
実際に学生さんに按摩指圧を受けてもらう

 

 

質疑応答&懇親会
基本的に途中で質問を受け付けませんでした。全てやり終えてから神楽坂のお菓子(ACHOのプリンと地蔵屋の手焼き煎餅)を食べながらざっくばらんに話をする形にしました。せっかく電車で暑い中来ていただいたので神楽坂の一品は紹介したかったですね。

 

この場で初めて会う組み合わせも多かったので学生さん同士も交流できたかと思います。専門学校が違えば一緒になる機会は学会やセミナーしかありませんし。交流の場になってもらいたかったです。

 

ここではあましに限らず、卒業後のことや鍼灸の話、将来の展望なども話をしました。これからの未来を担う学生さん達に期待します。

 

終わってみて開催するきっかけとなった学生さんが、良かったという感想をつぶやいてくれました。


あじさい鍼灸マッサージ治療院 参加学生さんのつぶやき
参加学生さんのつぶやき

 

それは素直に嬉しいのですが業界の先輩に対する社交辞令もあるかと思います。それ以上に私が良かったと思うのが

SNSで募って開催は不安だったけど、また何か企画したいなあ楽しかった。

というつぶやきでした。

 

 

あじさい鍼灸マッサージ治療院 終わったあとの感想
終わったあとの感想 企画開催した充実感が伺えます

 

 

今年この業界に足を踏み入れた専門学校1年生が、SNSで行動して企画をしてやり切ったこと。

私が学生だった10年以上前には実現できなかったことでしょう。楽しかったと充実した体験をして、またやってみたいと次を見据える。このことが一番私には嬉しいことです。

 

何年も培った技術を短い時間で紹介し体験しただけのこと。ベテラン臨床家ならまだしも、学生さんでは飛躍的に技術が上達するとは考えにくい。それよりもこの成功体験を持って前向きに挑戦していくようになれば、今後大きな財産になるはずです。

 

私もまたこのようなスタイルでセミナーをしてみたいものです。

 

甲野 功

 

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