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~ある鍼灸学生の挑戦~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 トップページ8月8日のもの
クラウドファンディング トップページ8月8日のもの

 

今、鍼灸マッサージ専門学校に通うある学生さんがクラウドファンディングで鍼灸アプリケーションを開発しようとしています。

 

鍼灸の可能性を知ってもらい広げる為にアプリを開発したい!!

私はこのクラウドファンディングのパトロン(支援者)になりました

この件について書いていきます。

 

Twitter上でクラウドファンディングの告知を知ったのは少し前でした。
「鍼灸の可能性を知ってもらいたい」

このような謳い文句を見て正直ひきました。本当に申し訳ないのですが、うわぁと思いました。当初は。

 

 

 

クラウドファンディングのページより
クラウドファンディングのページより

 

 

 

鍼灸師はよく「もっと世間に鍼灸の良さを知ってもらい!」と声を挙げるのですがちょっと痛いなと思っています。
それは鍼灸師が言うことのなのか?と疑問があるわけです。鍼灸を受けて効果を実感した一般の患者さんが言うのは分かりますが。客観的に見て、そのことに効果があるのだろうか、と。
どこかに「我々が扱う鍼灸術が世間に相手にされないのは何かの間違いだ!おかしな世間を正したい!」という驕りを感じてしまうのは、私も鍼灸師であるからでしょうか。元々プロレスファンで中学生の頃から世間の「あんなの八百長だろ、ショーに過ぎないだろ」と冷ややかな視線を受けてきた経験からも、言いたい気持ちはわかるが当事者が言っても世間には届かないのだよね、という感想です。

 

何より「鍼灸師一人に一流派」と言えるくらい鍼灸術は千差万別。刺す鍼、刺さない鍼、電気を通す鍼、お灸を付ける鍼、使う鍼という道具だけでも多種多様。
経絡、中医、現代と大きく3つの派閥があり、更に細かい流派があります。全てひっくるめて「鍼灸」と称していることに無理があり、あれも鍼灸、これも鍼灸。内側に目を向ければ「あのやり方は認めない」、「あれで効果が出せるわけがない」と誹謗中傷が互いにあって。
「鍼灸の良さを知ってもらいたい」という言葉の前に()で(私がする)が入って「(私のする)鍼灸の良さを知ってもらいたい」に見えてしまう。

 

マーケティング分野で有名な話があります。
客はドリルが欲しいのではない。綺麗な丸い穴が欲しいのだ。
これはドリルを買いに来るお客さんはドリルが欲しいのではなく、ドリルを使ってできる手早く綺麗に空いた穴という成果物を求めている、というお話。

世間の方は鍼灸がどうかというのは興味が無く、鍼灸術を受けた結果どのような効果があるのかが大事で、リスク(痛そう、熱そう、など)とメリット(痛みが取れる、健康になる)を天秤にかけて判断しています。順序が①患者さん→②鍼灸ならわかるのですが、①鍼灸→②世間となると響かないのでないかと。

 

他にもクラウドファンディングの内容を読んでなんじゃこれと突っ込みたい点がいくつもありました。

 

しかし、発起人は東京医療専門学校に通う直の後輩。3年生でまだ21歳。

業界を立て直すのは「若者、よそ者、ばか者」と言います。しかも先に行った「学生向けあましセミナー」に応募している。頭ごなしに若い人を否定するのはオッサンになった証拠だと考えを改め、SNS上で彼女の動向を眺めていました。


案の定、現役鍼灸師からは「誰に向けてのサービスなのか?」、「あなたのことがよく知らない」などの意見が寄せられていました。その都度、彼女は寄せられた意見に真摯に対応していました。また鍼灸師の集まりに顔を出して色々なことを学び吸収している様子がみてとれました。


その姿は、素直に大したものだなと。

 

21歳の女性が素顔も名前も晒して、アプリケーションを開発したいと行動しているのです。大学で言えば3年生。私のその頃は就職活動も始まっておらず、研究室も考えていませんでした。将来に向けて活動している彼女は、比較にならないくらい凄いです。

 

 

あじさい鍼灸マッサージ治療院 クラウドファンディングのページ
クラウドファンディングのページより

 

 

 

落ち着いて考えれば彼女は鍼灸専門学校生であって、鍼灸師ではない。臨床現場に出ていないため、一般の患者さん・利用者の立場に我々より近い位置にいます。それでいて鍼灸というものを世間のひとよりもはるかに理解している。この時期にしか持てない視点があるのでは、と考えました。


ついつい資格も取っていない若者が何を言っているの、と思いそうなところを、それではいかんなと冷静になってみました。

 

彼女が鍼灸に興味が出たきっかけは祖父を食道がんで亡くした時のエピソード。副作用に苦しむ祖父の姿から「癌 副作用 鍼」というワードにたどり着いたといいます。

 

クラウドファンディングのページより
クラウドファンディングのページより


ここを読んだときに、鍼灸で何をしたのかという“成果”に着目していることが分かりました。鍼灸師として臨床に立つとついつい鍼灸をするという“行為”に着目する方を目にします。先に挙げたドリルの話でいえば、彼女はドリルよりも綺麗に空いた穴に着目している、と感じたのでした。

 

ちょうど8月4日に実際に会うので話をしてみようと思いました。嫌な言い方をすると値踏みしてみようと。

 

学生向けあましセミナーの当日、あじさい鍼灸マッサージ治療院に訪れた東京医療専門学校本科3年の高橋ゆうきさん。アプリケーション開発のためにクラウドファンディングを募る当事者。
思った以上に今どきの感じがする女性、というのが第一印象でした(この時点で自分のおっさん化を証明していますが)。

 

講義をしながらちょくちょく質問を学生さんに投げかけました。解剖学や技術的なことについて。参加者で最高学年ということもあるからでしょうが、高橋ゆうきさんは一番答えていました。年齢は参加者で一番若いのですがよく勉強しているなと感じました。

 

セミナーが終了して懇親会の感じでお菓子を食べながら雑談をする時間を取りました。その場で高橋さんにこのクラウドファンディングについて疑問点や私が感じたことをぶつけてみました。

 

このアプリケーションは誰(どの層)に向けているのか?鍼灸に興味が無い人、それとも、鍼灸に興味がある人?この2つには大きな壁があって、かなり話がかなり変わってくると思うのだけど。
これを使うとその対象者にはどのようなメリットがあるの?既にサイトや本に雑誌、個人で情報発信している人など、たくさんあるけれど何が違うのか。

 

主にこのような質問を投げかけました。しばし話をしました。セミナー後に、他の人にも言われた意見を取り入れて考えをまとめてみます、と言われました。後日、クラウドファンディングのページが更新されました。

 

誰に?という点は
①鍼灸に興味のある一般の方
②セラピスト(鍼灸・学生含む)
の2つでした。


あじさい鍼灸マッサージ治療院 クラウドファンディングのページより
クラウドファンディングのページより

 


共通するのは鍼灸に興味があり関わるということ。つまり「こちらの側の人」ということです。ターゲットが既に鍼灸に興味がある、勉強しているという点をクリアーにしたことでやりたいことが具体的に想像できました。興味がない層を振り向かせるのはとても大変で、それこそ「鍼灸」をアピールしても無理があり、「鍼灸師そのもの」をみせた方が早いと思っています。最初のハードルを越えている人に向けるのならば現実的だと思いました。

 

どのようなメリット?については以下に抜粋しました。

 

【どんな鍼灸師にメリットがあるのか】
・鍼灸×別分野を持っている人は同じ鍼灸師・学生に知識を提供できる!
・鍼灸以外の知識を吸収できる!

 

【どんな一般の方にメリットがあるのか】
・鍼灸師、セラピストが書いたブログを見たい方!!

 

 

あじさい鍼灸マッサージ治療院 クラウドファンディングのページより
クラウドファンディングのページより

 

後半のブログについては既にこのようなサイトがありますが、アプリケーションにすることが差別化になっているなと思いました。クラウドファンディングのページには、なぜアプリケーションなのか?という項目もあり、その根拠となるデータも示してあります。人間は35歳を過ぎてから現れたものを受け入れがたいと言いますが、5年前くらいにスマホを使い始めた私には少々ピンとこないのですが、これからはアプリケーションが重要になるのでしょう。

 

私が特に注目したのが前半で、
・鍼灸×別分野を持っている人は同じ鍼灸師・学生に知識を提供できる!
・鍼灸以外の知識を吸収できる!
といったところ。


鍼灸に限らずアピールしたものがあるならば比較対象がないと難しいわけです

他に比べて鍼灸は何が優れているのか(また苦手なものは何か)を示すためには“他”を知らないといけません。私はあん摩マッサージ指圧師、柔道整復師も持っているから鍼灸を客観的にみることができる面があるわけで。鍼灸、プラスαに注目していることに期待が持てるのです。

 

そういった意味で、鍼灸×〇〇を持っている人の活躍の場(セミナーや勉強会)を作ることができます、という点も鍼灸だけでなく他の視点を入れることで、俯瞰して鍼灸をみるきっかけになるかもしれません。鍼灸師側だけでなく、鍼灸に興味がある人々にもためになる考えなのかと。

 

 

あじさい鍼灸マッサージ治療院 クラウドファンディングのページより
クラウドファンディングのページより

 

 

最終的に支援することを決断したのは高橋ゆうきさん本人によるものでした


まだ完成していないものは希望的観測でいい様にとれて、批判的に見れば問題だらけです。未来の結果は誰にも判断できません。だからこそ人をみました。


彼女は肝が据わっているというか腹を括っているというか。やり切る目をしていたし、やり遂げますと断言していました。

 

私たちの仕事は施術行為以前に「人をみる」職業です。その目をこれまでの経験で養ってきたつもり。

彼女の発想と行動力は手助けしたいと期待に値します。21歳の女性、同じ呉竹本科(東京医療専門学校鍼灸マッサージ科)の後輩。世間に対して、業界に対して挑戦していることを応援しようと思いました。このような後輩がいることに驚きと感銘を受けました。

 

よければこの若い鍼灸学生の挑戦を支援してください。

 

甲野 功

 

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