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海外で一番人気のある日本のマンガは何でしょうか?諸説ありますが、「ワンピース(ONE PIECE)」、ドラゴンボール(DRAGON BALL)」、「ナルト(NARUTO)」あたりが妥当なところのようです。東洋的なイメージがあるドラゴンボール、そして忍者モノのナルトは人気があるのは納得できるものです。日本人の私には実感がわきませんがやはり海外の人はNINJAが好きなようです。
実は私、これほど有名なマンガ、ナルトというものを最近まで読んだことがありませんでした。少年ジャンプで連載していた時には大学生、社会人となっていて距離を置いていたのです。私の世代ですと一番少年ジャンプで熱狂したのはキン肉マンや聖闘士星矢でした。ドラゴンボールも同世代ですね。ワンピースとナルトは、これだけ有名ですから存在は知っていましたがマンガもアニメも見てこなかったのです。臨床現場に出てから様々な患者さんと話すようになり、世間で流行っている話題は押さえておかないといけないと悟り、ワンピースは30歳を過ぎてから全巻揃えて読むことにしました。今でも単行本を買っています。
ナルトに関してはワンピースほど重要視しなくてよいだろうと判断して手に取らないでいました。最近になって海外の人はナルトの方が好きであるという噂を知ることになりました。それならばナルトもしっかりと触れておこうと思ったのです。なお先月は「ナルト走りでエリア51に突入し宇宙人の存在確認、FBイベントに130万人参加表明」なるどこまで本当か定かではないニュースが出たものです。ナルト走りとかエリア51などは説明しないので流してください。
しっかりとナルトを読むと、東洋医学や東洋思想を知ったうえで描いている!と鍼灸師として興奮する発見がありました。忍者という日本独自の文化を題材にしたので必然なのかもしれませんが、特に五行説を取り入れていることに驚きました。あとで五行説について詳しく書きます。五行説以外にも点穴や経絡、陰陽といった用語が出てきて東洋医学の経穴(ツボ)、経絡(気の流れるルート)、陰陽(そのまま陰陽論)に対応した記述がありました。かつては北斗の拳において、初期設定では陰陽論をベースに描かれていることをこのブログで説明しました。今回はナルトにおける五行説を書いていきます。
改めて作品紹介です。<NARUTOーナルトー> 正式にはアルファベット表記です。岸本斉史作。単行本全72巻。完結済み。集英社から発刊。少年ジャンプにて連載していました。
原作と作画を分けず岸本氏が両方を行っています。集英社の担当が手助けしているとはいえ、相当大変だったことでしょう。これだけの長編を週刊誌で連載したのですから。私も全巻読むのだけで大変でした。
最初に気になったのは14巻での話です。舞台は火の国。そこには「木の葉隠れの里」という忍者の里があります。そこを統べるのが「火影(ほかげ)」という役職につく最上位の忍者。四代目火影まで輩出しているが四代目は過去の戦いで死亡しており、三代目火影が里を統治しています。そこに強敵「大蛇丸(おろちまる)」が襲い掛かり、三代目火影と対峙します。大蛇丸は穢土転生という忍術で亡くなった先代の火影達を蘇らせて戦わせます。四代目VS初代&二代目という世代を越えた新旧火影対決となるわけです。
まず三代目火影が火遁(かとん)火龍炎弾という術を放ちます。
それを二代火影は水遁(すいとん)水陣壁、水龍弾で応戦します。
それに対して三代目火影は土遁(どとん)土流壁を使います。
今度は初代火影は木遁(もくとん)樹海降誕という秘術を使います。
応戦する三代目火影は口寄せ(くちよせ)の術で猿猴王・猿魔を召喚し金剛(こんごう)如意に変化させます。
この一連の忍術の仕掛け合いが<五行>の<相剋関係>になっていると分かる人は分かるのです。
まず五行とは何か。五行とは東洋医学、東洋思想の根幹をなす考え方で木・火・土・金・水の5つを言います。万物はこの5種類の属性に分けられて相互に関係すると考えます。
各カテゴリーに名目毎に分けて表にした五行色体表を覚えることが鍼灸師には必須となるのです。色とつくのは木:青、火:赤、土:黄、金:白、水:黒と配色が決まっているからです。五行色体表について書きだすと長くなるので省略しますがとても奥が深いものです。
さてこの五行には相剋関係(そうこくかんけい)といって勝ち負けのような関係があります。じゃんけんのように優劣が決まっており、関係が巡るのです。
木剋土といって木は土より強い。これは木の根が土を押し分けて根を張る様子からです。
土剋水といって土は水より強い。これは土が水の流れを堰き止める様子からです。
水剋火といって水は火より強い。これはが水が火を消す様子からです。
火剋金といって火は金より強い。これは火が金属を溶かす様子からです。
金剋木といって金は木より強い。これは金属が木を切る様子からです。
どうでしょうか。火影同士の戦いを振り返ると、火遁(つまり火)には水遁(つまり水)を。その水遁(水)には土遁(つまり土)を。その土遁(土)には木遁(つまり木)を。木遁には金剛如意(つまり金)を。出した属性に打ち勝つ属性の忍術を出していることが分かります。これは偶然ではなく五行の相剋関係を知ったうえで描いているのでしょう。読んで驚きました。
そして37巻ではチャクラの五大性質変化について明らかになります。ナルトの世界ではチャクラといって生体エネルギーの概念があり、このチャクラを練ることで超常的な忍術を実現させています。チャクラには5つの性質があり、火・水・土・雷・風の5つです。五大性質としています。これは作品にある五大大国に対応しており、火の国、水の国、土の国、雷の国、風の国の由来になっています。火、水、土が共通していることからもわかる通り五行から着想を得ていると思われます。なおファイブエレメンツ(five elements)といって西洋にも五種類の基本要素という考えがありますが、忍者をテーマにした作品ですから五行の方が妥当でしょう。
作品ではチャクラ五大性質に優劣の関係があるという設定です。例えば、火遁の術に勝つには水遁の術で、火遁に風遁の術で対抗しても風によって火はより強く燃えるというもの。
火 優→劣 風 優→劣 雷 優→劣 土 優→劣 水 優→劣 火
という関係性。版権の関係で画を載せませんが、図のような説明を作品内でしていました。
これはまさに五行の相剋関係と一緒です。それと同時に図の描き方は五行の<相生(母子)関係>と一致します。相生関係は計回りに一つ前の属性から生まれるというもの。
木 母→子 火 母→子 土 母→子 金 母→子 水 母→子 木
と巡ります。
木生火といって木から火は生まれます。これは木が燃えることで火が生じる様子からです。
火生土といって火から土は生まれます。これは火が燃えつきると灰が残り土が生じる様子からです。
土生金といって土から金は生まれます。これは土の中からで鉱物(金)が生じる様子からです。
金生水といって金から水は生まれます。これは金属の表面に水滴が生じる様子からです。
水生木といって水から木は生まれます。これは水の恩恵で木が育つ様子からです。
ナルトの作中では主人公ナルトは風の属性、ライバルのサスケは火の属性となっています。ラストにはサスケの火遁に対してナルトの風遁で術の力を倍増させるシーンが出てきます。優劣関係としていますが協力関係も示しているのです。
東洋医学では、木が弱っていたら母に当たる水に力を与える、という「その母を補う」という基本があります。五行の相生関係までも取り入れて作品を作っていると思いました。
この年齢になって初めてNARUTOという長編マンガを読みました。少年ジャンプにおける新しい発明をたくさん行った作品であるでしょう。
そして東洋医学、東洋思想を少年マンガに巧みに取り入れている。これだけのメジャー作品に鍼灸師が関わるものが使われていることを嬉しく思います。
甲野 功
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A (土曜日, 22 10月 2022 07:48)
五大性質と五行を照合すると
風→木(火を助けてやれるのは木だけ)
火→火
土→土
雷→金(サスケのような革命要素を持つ)
水→水
というのが自然だと思います。
性格的にも
ナルト=木(慈悲深く優しい)
サスケ=金(革命的・決断力あり)
と合致します。
A (土曜日, 22 10月 2022 07:52)
「ナルトの作中では主人公ナルトは風の属性、ライバルのサスケは火の属性となっています。」
サスケは同時に雷属性でもあります。
ナルト(風・木)にとってサスケは相対するライバル(雷・金)であり、
同時に助けてやりたい友(火)
でもあるということかと見受けられます。
またナルトの性格はまっすぐで、木の性質と完全に合致します。