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前作しょぼい起業で生きていくがヒットした「えらいてんちょう」氏が新しく出した本があります。
それがこちら。
<静止力 地元の名士になりなさい えらいてんちょう著 KKベストセラーズ>
この本の内容は私が持つ考え、そして反発とほとんど同じ内容でした。
著者はいかにローリスク(少ない出費)で仕事を作り生きていくかを説いている方。実店舗経営に経営コンサルタント、YouTubeも行う現代らしい20代後半の実業家(の一種)です。
本書で、はっきりとホリエモンこと堀江貴文氏の「多動力」に対するアンチテーゼだと書いています。そういった内容も踏まえて「多動力」に対する「静止力」という概念は何かみていきます。
まえがきより抜粋します。少々長いのですがここに全て詰まっていると思います。
『
前略
本書はひと言で言えば、ホリエモンこと堀江貴文氏やキングコング西野亮廣氏らをはじめとする“多動的な生き方”を真っ向から批判して、思想的に乗り換えようとするものです。
私も、いち若手経営者として、堀江氏らの本を大変興味深く拝読し、多くのものを吸収してきました。特に『多動力』は、無意味な慣習を無視して自分の仕事のパフォーマンスを上げるために非常に役立つ本で、私も大きな影響を受けました。
しかし一方で、これでいいのかな、と疑問に思う点も多々ありました。例えば『属さない勇気~まんがでわかる「ウシジマくん×ホリエモン」生き方改革~』(小学館)という別の書籍では、堀江氏は「家族はコスト」と書いています。
私もありがたいことに、最近はいっぱしの仕事めいたことがでくるようになり、自分の食いぶちを稼ぐことができるようになりました。ささやかながら妻子を養ってくこともできるようになりました。
しかし、自分の食いぶちを稼げるようになるまでの二十余年はどうしていたかと顧みれば、周りの大人――親であったり、地域社会であったり、公教育であったり――に食わせてもらってきたわけです。
つまり、周りの大人がコストを払いながら私を養育してくれたおかげで、かろうじて私は現在自分の食いぶちを稼げているということになります。
考えてみれば、我々が“多動”できる期間というのは、至極限られたものです。20歳前後になるまでは、身体も社会性も未熟で、そもそもまともな仕事はできませんし、60歳を過ぎれば、身体も頭脳も衰えていきます。私の自宅の隣に住んでいるおばあさんは、腰や足が痛く、近所のスーパーに行くのもひと苦労ですし、私自身、生まれたばかりの娘を連れて出かける際には、ミルクの在庫や病院の位置を把握しておかなければいけません。いくら航空券が安くなったといっても、世界のどこでも仕事ができるのは、健康な成人の特権だともいえるわけです。
私はありがいことに、現在大きな病気もなく、仕事柄スマホ一台で仕事をすることもできます。しかし、そうした好条件を与えられているからこそ、なるべく自宅を離れず、子どもの世話をして、隣のおばあさんの買い物に付き合いたいと思うのです。
なぜなら、我々は無力な赤子として生まれて、やがて無力な老人として死んでいくからです。
負傷している人間や、小さな赤子や老人は、他者の助けがなくては健康で文化的な生活を営むことはできません。そして、弱者を助ける人は、必然的な健康な成人しかいないわけです。彼らが健康で文化的な生活を送れるようにする責務があると自らに義務を課する者を、私は“大人”だと思います。
考えてみれば、堀江貴文氏は“究極の子ども”になることを説いている人です。それは、ある種の新しさがあり、正しさがあります。誰もがしたいことをし、したくないことを避けた方が、仕事の生産性は上がる、というのももっともです。自分の仕事のペースを乱すような邪魔は入れるな、という論旨もよく分かります。
しかし、赤子は大人の都合を考えず泣きます。そして、赤子の面倒を見られるのは“大人”しかおらず、社会を持続可能にするのは“自分は大人であるから、社会に責任がある”と考える人の数だと私は考えるのです。
社会保障は国の役割であって、税金でなされるべきだというのも分かります。税金を納めてさえいれば、社会的弱者への役割は果たしているというのもひとつの筋が通った理屈です。しかし、税金の使い道は民主的に決定されるわけで、人々の思考が「好きなことが生きていく」ことに集中されれば、当然社会保障など「払いたくないコスト」になっていくことではないでしょうか。
本書は、一つの場所に根付いて、地元の名士になれ、ということを説いた本です。
なぜ地元かといえば、弱者は多動できないからです。移動できない弱者が健康で文化的な生活を送るためには、地元が豊かでないといけません。
後略
』
いかがでしょうか。
私も堀江貴文氏が書いた書籍は複数目を通しています。彼の主張する無駄を省いたスピードある行動が生産性を上げて効果を出すことは理解できます。
これまで、あまりに企業内で無駄なやり取りがあって世界に後れをとっていることは最前線のビジネスマンは感じていることのようです。そのことは私も実体験として十分に経験してきました。えらいてんちょう氏も一定の理解と共感を得ています。
堀江貴文氏の合理主義は更に進み、
家族を持つことはムダ、家を持つことはムダ、子供を産むことはムダ
というところまで行ってしまいました。
親の介護、面倒な親戚の集まり。これらは自分の仕事にとって邪魔な存在。
家を持つことは維持費がかかるからホテルを転々として三食を外食で済ませた方が、モノが少なくて結果的に安くあがる。
子供ほど非合理的なものはない。
意訳的に書いていますが概ねこのようなことを堀江貴文氏は著書の中で説いています。
その考えの基本が「多動力」であり、“永遠の3歳児であれ”というキャッチコピーで「複数の肩書を持ち、同時進行で複数のことに挑戦し、即行動、だめならすぐに撤退する」というキャリア形成を語るのです。なお本書で個人名があがったキングコング西野亮廣氏は似ているようで根幹は違うように私は感じますが。
「家族はコスト」。この点が大いにえらいてんちょう氏は反発する部分であり、私もそこは賛同できません。
あなた自身は親に産んでもらって育ててもらっておいて自らはそれをコストと切り捨てるのは筋違いではないのか。そういう憤りを文章から感じました。えらいてんちょう氏は20代ですが子育てをしていて、小さな子供がいることで仕事や行動が制限される困難をリアルタイムで経験しています。私も同じように子育て世代ですから同感です。
「“子ども”がのびのびとやっていくためには周りの“大人”が必要」。誰もが「多動力」で好き勝手に生きてしまったら社会は崩壊する。また本当に動き回れるのは20~60歳くらいの人生の限られた時期に過ぎず、それ以外は“ばか真面目な大人”のサポートが必要だとえらいてんちょう氏はいうのです。
そのために家庭を守り、地域に根付き、腰を据えてやっていこうというのが「静止力」の言わんとすることです。
ビジネス書籍であるので、本の大半はどのように立ち振る舞うかに割かれています。
地元を設定しそこに腰を据えることを宣言する。地元に馴染んで土地の名士となり、最終的に墓守になることが目標。そこまでいけばまず生活に困ることはない。資本が無くともコネが無くとも暮らしていけます。
大まかにこのような内容です。
私がやっていることもこれと同じです。生まれ育った土地にこだわり、相当なことが無い限り地元を離れることはないでしょう。同じ町内で開業し、子供は私が出た母校に入れる。長い時間をかけて地元に愛される(必要とされる)場所になることを目標としています。
父親は元町会長で、母親は地元小学校の元校長先生。人生で一度も地元を離れたことがない。このアドバンテージを大いに活用しています。まさに「静止力」。地元を離れた小中学校の同級生にも「甲野は引っ越さないでずっと残っている」という認識があります。
興味深いのは世代的に近いのは堀江貴文氏で同じ40代、対してえらいてんちょう氏は20代ということ。世代としては私の一回り以上下である。しかし考え方はえらいてんちょう氏の方が似通っている。
これには既に書いた通り家庭を持ち子どもを育てているという共通点と地元を離れない選択をしていることが関係するでしょう。
また私の本業が鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師という究極の対人業務であることも言えて、ネットで物販すればお金が入るというわけにいきません。リサイクルショップ、学習塾、バーといった対人商売を基本としてきたえらいてんちょう氏と似ている点でしょう。
それと私は東京都新宿区、えらいてんちょう氏は東京都豊島区という都内23区が地元という共通点があります。前作<しょぼい起業で生きていく>も参考にしましたが、23区というまだまだ人口が多い地域だからこそ成り立つ方法で、過疎化が進む地方で同じやり方ができるかは少々疑問であります。
だからこそではありませんが、地方の少子高齢化を見越して若者が地元に根付いて地域を守る方に舵を切った方が勝てるという理屈でもあります。
えらいてんちょう氏はいわゆる勝ち組と言えるでしょう。
20代の若さで海外店舗も持つ経営者。本も売れています。そのような一見派手な成功者が「静止力」という提案をすることに時代を感じます。
おそらくお金をそれなりに稼いでいるのでしょうが、贅沢をしたい、海外に移住したい、もっと稼いで億万長者になりたい、という意思は見受けられません。Twitterやブログ、YouTubeといった現代のツールを活用していますが考えは保守的と言えるでしょう。
地元に残り家族を大切に。
仕事第一で育児は妻に任せればいい、という男性像とはかけ離れています。
このような若者が支持されていくとなるとバブルの遺産を捨てて、新しい“令和の価値観”が生まれてくるように感じます。
甲野 功
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