開院時間
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住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
先日、驚くべきニュース報道を知りました。
ニュースサイトより
『
「オリンピック選手に提供している」などと嘘のうたい文句で医薬品として無許可でサプリメントを販売したなどとして、柔道整復師の男7人が書類送検されました。
柔道整復師の男ら7人は去年9月から今年4月までの間、無許可で医薬品としてサプリメントを販売したり、鎮痛クリームを製造したなどの疑いが持たれています。警視庁によりますと、「オリンピック選手に提供」「オリンピック選手用に開発」などと嘘のうたい文句で製造・販売をしていました。サプリメントなどは健康食品メーカーから仕入れたり、市販のものを詰替えていたりしていて仕入れ値の7倍から17倍で販売していたということです。過去14年間で約5000万円を売り上げていて、7人全員が容疑を認めています。
』
私は柔道整復師ですが、最近の柔道整復師の逮捕報道に慣れてしまった感覚がありました(今回の医薬品医療機器等法違反の報道では書類送検ですが)。
本来ならば異常な感覚であるはずなのです。
赤の他人とはいえ、同じ職種の人間が半年に何人にも逮捕、書類送検されたとなれば心配する気持ちや不安になるものです。それが自分に関係のない他人事にしている感じです。
今回の事件はこれまでに柔道整復師が起こしてきた主に不正請求に関連するものとは一線を画す事案だと考えています。何が問題なのかきちんと向き合おうと思い、この書類送検のニュースを検証します。
まずこれまでと大きく異なるのは物販に関わることです。
医薬品販売登録者でもないのにサプリメントを医薬品として販売する、薬剤メーカーでもないのに鎮痛クリームを製造し販売した。商品の販売と製造について違法性があるという疑いです。
いまや柔道整復師はお金のためなら何でもする、整骨院は何でも屋という実情とイメージがあります。
骨盤の歪みを解消する、猫背矯正、といった謳い文句は多くの整骨院でみられます。産後の骨盤矯正として回数券を売りつけようとして断ったという患者さんがうちに来たこともあります。今回の件もそうですが、色々な健康関連グッズを販売しているところも多々あります。
そうではないという整骨院・接骨院もあるのでしょうが、患者さんから聞く印象やネットの反応は概ねこのようになっています。
しかし柔道整復師は本来、急性外傷(主に脱臼、骨折、捻挫、打撲、挫傷)を保存療法(手術をしない、メスや医薬品を用いない処置)で対応する職種です。
患者さんへの施術が役割であり、物販は範囲外です。
急性外傷とは関係のない肩こり、慢性腰痛も捻挫だと言い張って保険請求をしてきましたが(もちろん違法で亜急性捻挫という整形外科医は認めていない概念も生み出しました)、物販となると更に本来の業務と離れています。
おそらく最初はケガをした患者さんのために良かれと思って始めたサポーターやテーピングの販売。それがエスカレートして医薬品に手を出したのだと推測します。そこから利益が出るからと自分たちで製品を作って販売することに考えが至ったのではないでしょうか。
警察が押収した商品の量と品種の多さをみても大規模に行っていたことが分かります。個人でできる範囲を超えているように思います。
市販品を詰め替えるというやり方。パッケージは独自のロゴにしているところからブランド化を図っているのが伺えます。(※実名は報道されていませんがパッケージと所轄の警察署によりどの整骨院か特定できます。既にホームページは削除されているようです。)加えてオリンピック選手のブランドも加えたという詐欺行為。
違法販売、違法製造、虚偽の記載。どのような職種でもやってはいけないことです。
私が気になっているのは、本来人の体に施術する柔道整復師がこのように手の込んだ物販商法に手を出していたことです。
元々得意分野ではなかったはず。14年間にわたり続けたというのは相当な労力と時間を費やしているわけです。
そして報道には<柔道整復師の男7人が書類送検されました>とあります。“柔道整復師の男ら7人”ではないのです。7名のうち柔道整復師が含まれていた、という表現ではなく<7名の柔道整復師>ということで全員が柔道整復師だったということ。
この7名という人数もかなり多い印象があります。人数が多くなればばれる可能性が高くなるのでもっと少人数でやっておくに越したことはないと私は思うのですが(私がやるならばという感想です)。
そして全員が柔道整復師。報道によれば全員容疑を認めているということは、違法と認識したうえで行っていたと考えられます。知らないで手を貸していたと容疑を否認していないわけですので。7名もいて全員が止めようとは思わなかった。どのような事情があったのか定かではないですがとても残念なことです。
これまで明るみに出てきた柔道整復師の事件は、多くが2~3名の少人数だったと記憶しています。実際にはより多くの人数が関わっていたのかもしれませんが逮捕や書類送検までいったのはそれくらい。7名という比較的大人数が一度に書類送検ということは目を見張ります。
大人数だから歯止めが効かなくなったのか。「赤信号、みんなで渡れば怖くない」という心理だったのかもしれません。
報道で警察署の映像に
「医薬品医療機器等法違反事件(医薬品の無許可製造、販売・販売目的貯蔵)」
とあります。
書類送検の目的は<医薬品の無許可製造と販売>です。
誰が行っても罪になりますが、柔道整復師という厚生労働省管轄の資格免許を持つ立場と整骨院という販売ルート持っていたという環境が事件を起こす要因になったかもしれません。
私もその現場にいたから分かる部分もありますが、儲けになれば何をしてもいい、患者さんが喜んでいるから良いことをしている、他のところもみんなやっている、という同調圧力があったのではないでしょうか。
これまでと毛色が異なる柔道整復師の書類送検。今後の業界状況がどうなるのでしょうか。
甲野 功
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