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苦しかったときの話をしようか
ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」
森岡毅著 ダイヤモンド社
森岡毅氏は私が気に入っている作家さん(本業は経営者でありマーケター)です。これまでに出した著書は全部読みました。
本作はこれから就職活動に入る大学生の長女に向けた書いたものを書籍化しています。この中で「キャリア戦略」という言葉、概念を初めて知ることになりました。私も二人の娘がいるので彼女たちの将来を考えるとキャリア戦略を考えておく必要があると思っています。
今や3年一昔前どころか1年一昔くらいの感覚で、時代の変化が速いです。
私は世代としてはポスト団塊ジュニアとかSMAP世代とか言われます。その後にゆとり世代だ、さとり世代だと続くようです。子ども達が社会に出る頃には何世代と言われているか想像もつきません。どのような社会環境になっているかもわかりません。
間違いなく言えることは変化が加速度的に進み、私が就職した頃(2000年)はもちろん、現在(2019年)とも大きく異なっているはずです。
テクノロジーや政治、経済、外交の変化で社会がどうなっているのか分からない、ということは確かだと思うのです。
その不確実な未来に向けてどのようなキャリアを進んでいけばよいのか自分と対話をして考えていく。
本書にはキャリア戦略をこのように解説しています。
『
自分の中に基準となる「軸」がなければ、やりたいことが生まれるはずも、選べるはずもない。
キャリア戦略とは、その人の目的達成のために、その人が持っている“特徴”を認識して、その特徴が強みに変わる文脈を探して泳いでいく、その勝ち筋を考えるということだ。
』
父が我が娘に向けて書いた文章です。私的な言葉ながら汎用性を感じます。ある程度汎用性がある内容でなければ編集者も本にしないので当然なのですが。
結局はその人であり、就職活動を親の希望を押し付けても勝ち筋がみえないのです。「軸」、「文脈」といった比喩がありますが、主体はあなたにゆだねられている、という印象です。
筆者森岡毅氏は多くの企業を相手にするコンサルタント会社の経営者。自社に就職させる、関係のある有望な企業に縁故で入社させる、といったやり方ができる立場にあるはずです。ビジネス書籍として一般販売されていますが元々は筆者が長女に向けて書いた個人的な手紙。そういった背景を踏まえてみると見方が変わります。
そしてシビアな現実を書いています。
『
花屋に咲いていた綺麗な花は、すべて相対的に勝ち残ったスターであり、それまでに間引かれたり商品化できなくて処分されたりした多くの花たちがいたという現実だ。オンリーワンとは、ある文脈においてのナンバーワンを指す。
』
これはSMAPの大ヒットナンバー「世界に一つだけの花」の歌詞を踏まえてもの。花屋に出ている時点で競争を勝ち残っているという前提を忘れてはいけないという。歌詞の中ではナンバーワンを目指さなくてよい、オンリーワンであれば、という内容ですが、森岡毅氏はオンリーワンとはナンバーワンであると言っています。競争の原則をしっかり伝えています。
『
大丈夫、不正解以外はすべて正解!不正解とは、自分にとって決定的に向いていない仕事に就いてしまうことである。不正解をつかんだ原因の大半は、自己分析不足に起因している。
』
フォローではないですが、不正解以外はすべて正解、と不正解に陥らなければOKだとしています。不正解を出すのは自己分析不足が原因だとも。
キャリア戦略を考えるときに大切なことは自己分析にある。それが本書が述べる重要なポイントだと思います。本書はこのあと具体的な自己分析方法を挙げたり、森岡毅氏が経験した過去の経験を振り返ったりして内容が続いていくのです。
『
具体的な“こと”から発想するのではなく、“どんな状態”であればハッピーだろうかという未来の理想“状態”から発想すること。
』
この一文が私には一番心に残りました。自己分析をするためには
具体的な“こと”
ではなく
未来の理想“状態”
から発想するという。
売上を含めた徹底的な数字と向き合う森岡毅氏。本人は文系出身ですが数学がとても得意で確率・統計学を加味したビジネス書籍も数学者と共著で出しているくらいです。その彼がが具体的なことではなく“状態”という、いわば曖昧なものを掲げているのです。
年収がいくら、高級外車を購入している、といった具体的なものではなく、ハッピーと感じる“状態”を発想して自己分析に取り掛かる。意外な感じがしました。それは数字・数値ではなく感情にフォーカスしているからだと思うからです。
今後どのような道に進むのか、キャリアを積んでいくのか。就職活動でも受験でも結婚でも多くの選択肢を選ぶときに参考になるのではないでしょうか。
未来の理想状態を見据えて戦略を立てる。
すなわち理想の、ハッピーな状態を、考えるには何があればそのような状態になるのか徹底的に自己を顧みることになることでしょう。それはお金なのか、地位なのか、趣味なのか、遣り甲斐なのか、職種なのか、友人や恋人なのか、家族なのか。社会環境がどれだけ変化して予測がつなくとも、だからこそ、自分の理想とする状態を発想して考えることが重要になるのではないでしょうか。
甲野 功
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