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~生活者1万人アンケート~

日本の消費者は何を考えているのか(二極化時代のマーケティング) 野村総合研究所 東洋経済新報社
日本の消費者は何を考えているのか(二極化時代のマーケティング) 野村総合研究所 東洋経済新報社

 

このような書籍を読みました。

日本の消費者は何を考えているのか(二極化時代のマーケティング) 野村総合研究所 東洋経済新報社

 

こちらは株式会社野村総合研究所(NRI)が行っている生活者1万人アンケートの結果をもとに考察を加えております。

 

生活者1万人アンケートは3年ごとに全国1万人から生活価値観や消費行動・意識など幅広い項目でアンケートを取っています。対象年齢は15~79歳と幅広く、1997年から実施しており最新版が2018年のもの。足掛け21年間に及んでいます。インターネットによる調査を用いず、訪問留意法を採用しています一戸ずつ訪問して調査票への回答を記入してもらう調査方法という。つまり対象者をインターネット利用者に限定していないということです。

 

調査員が訪問して顔を合わせて記入してもらうというアナログ方式で、1万人ものアンケートを得ることは驚異的です。これだけのデータを取るのに相当な人件費や工数がかかることは容易に想像できます。NRIはシンクタンクと言われる情報解析を主とする企業ですが、本業のためとはいえ凄いことだと思います。

 

 

私の仕事は典型的な「木を見て森を見ず」になりやすいもの。患者さん一人一人に向き合い、その方にあったやり方を模索していきます。


全体のデータよりも経験を重視します。


極端な話、100人いて1名にしか通用しない方法を用いても、目の前の患者さんが良くなれば問題ないのです。全く問題がないとは言いませんが、正直なところ、同じようなこと(例えば鍼、例えば指圧、例えばお灸)をしているようで術者の個人差がとても大きくなってしまいます。同じ経穴(ツボ)を取るにしてもかなり差がでてしまうもの。

全体がどうかよりも、その人にとってどうか。臨床に出ている人間は個に注目しやすくなるものです。

 

この生活者1万人アンケートは反対に世間の考えがどのようなものかを理解するのに大変適したものです。木ではなく森を見るためのもの。世代差と21年に渡る時系列の変化を数字として読み取ることができます

 

本書では各世代を以下のように名前をつけて分類しています。
団塊世代、ポスト団塊世代、バブル世代、団塊ジュニア世代、ポスト団塊ジュニア世代、さとり世代、デジタルネイティブ世代です。


各世代の定義は生まれた年代で分けたものです。

団塊世代:1946~1950年生まれ
ポスト団塊世代:1951~1959年生まれ
バブル世代:1960~1970年生まれ
団塊ジュニア世代:1971~1975年生まれ
ポスト団塊ジュニア世代:1976~1982年生まれ
さとり世代:1983~1994年生まれ
デジタルネイティブ世代:1995~2003年生まれ

 

国の公式の分類は団塊世代しかないそうで、他はNRIが便宜上命名したそうです。世間一般の分類とは若干異なるといいます。また団塊世代の前に焼け跡世代というものも定義されています。
なお私の両親はこの焼け跡世代であり、私自身はポスト団塊ジュニア世代に本書の定義では分類されます。
各世代の特徴が記載されており、戦争を体験しているか否か、高度経済成長期やバブル景気を経験しているか、物心ついたときにパソコン、スマホ、タブレットが既にあったかどうか、など外的環境から心情面にも解説が加えられています。

 

いわゆるジェネレーションギャップ、世代間の考えや価値観の相違はとても大きいと思います

私は仕事柄、下は赤ちゃんから上は90歳の高齢者まで接する機会があります。赤ちゃんはさておき、今の大学生とは私が大学生時代の価値観とは大きく離れておりますし、高齢者の「子供の頃に天皇は神だと学校に習った」といった話を聞くことも。
各世代による価値観を認識しておかないと話が合わないことがあるわけで、そうなると問診や治療方針を説明するときに困ったことが起きることがあるのです。患者さんの悩みや問題点は世代特有のものが少なからずあります。

 

私は元々<自分は自分で、他人は他人>という考えだったので他人がなぜこの程度のことで悩むのだろう?と思うことが多々ありました。しかし自分が分からないことは知りませんという態度では臨床に適しません。想像力を駆使し、しっかりと会話することで、目の前の患者さんのことを理解しようと心掛けるようになりました。
昔に比べて間違いなくミーハーになったのもそれが理由で、世間でヒットしているコンテンツにはなるべく知ろうとするようになりました。

 

なお、本書の一番のテーマは消費の二極化という点です。生活者1万人アンケートという膨大なデータを読み取り、マーケティングに必要な情報として<消費の二極化>というワードが浮かび上がったということ。
世代間のギャップと共に消費の二極化とはどのようなものかを知りたいと思って本書を手に取ったのです。

 

あまり詳細に書くのはネタバレになるかと思うので第3章「消費二極化時代のマーケティング」における項目とサブタイトルを記載して軽く内容を紹介します。また私の見解も加えておきます。

 

便性消費VSプレミアム消費
日常は「ラクに買いたい」が趣味には「こだわりたい」

 

この二極化は実感があります。日用品はAmazonをはじめとしたECサイトを利用してスマホ一つで買う。対してこだわりのあるものは電車賃をかけてでも買いに行く。前者がモノだとしたら後者はコトといったところでしょうか。モノからコトへ、というのがよく聞くフレーズ。

 

私の仕事は比較すれば<こだわりの趣味>の方に入ると考えられます。薬局やコンビニで買える市販薬のような手軽さと一般性はありません。鍼灸やマッサージをわざわざ選択する(それには価格面も含めます)のは「こだわり」に入ると考えられるから。そちらの消費側に注目していこうと思います。

 

デジタル情報志向VS従来型マス情報志向
スマホでの情報収集が拡大の一方、折り込みチラシも微増

 

これはデジタルとアナログの二極化と言えるでしょう。スマホという携帯できるスーパーコンピュータにより大量で詳細な情報が手軽に入手できるようになりました。反面誤情報も多く、情報過多とも言えるでしょう。折り込みチラシというリアルな紙で人間によって配布されるアナログ広告やテレビコマーシャルという長い間主流だった広告方法も消えていない。むしろ2015年からやや増えている。デジタル情報に触れない高齢者だけでなく、情報過多による疲労感からチラシやテレビCMといった受動的なコンテンツを重宝していることもあるようです。

 

私のことに置き換えてみてもホームページ、SNSといったデジタル(ネット)ツールから来院される方が多いのですが、看板を見かけて気になってホームページを調べた、というアナログ面が出発点というのも一定数あります。住宅街で車の往来が少ないため犬の散歩中に目に留まって気になったというケースが割とあります。テレビCMは非現実的ですがデジタル情報だけでないものも大切だと思います。

 

ネット通販VSリアル店舗
計画購買はネットで、リアル店舗では五感での体験や出会いを期待

 

これもよく耳にする話です。ネット通販が普及してきて実店舗が軒並み閉店に追い込まれる。特に町の本屋は顕著でAmazonによって本屋は壊滅的なダメージを受けているといます。その分、リアル店舗すなわち現物をみて選べること、店員さんとの会話、店内のレイアウトやデザインと言った雰囲気などの価値が見直されているとも言えます。むしろそこを押し出さないとリアル店舗が生き残れないとも。商品は通販で買えますが、買うという体験は店舗に行かないとできません。先ほども触れた<モノからコトへ>に繋がる二極化ではないでしょうか。

 

私の仕事はネット通販が原則できません。実際に触れないと鍼灸マッサージはできませんので。リアル店舗一択です。その代わりネット上に情報を発信して選択肢に入ってもらうような取り組みを常にしています。そう考えると<計画購買はネットで、リアル店舗では五感での体験や出会いを期待>というサブタイトルはとても頷けます。

 

つながり志向VSひとり志向
つながりたいけど、「つながり疲れ」でひとりにもなりたい

 

これはSNSが普及した現代では顕著なことでしょう。実際に顔を合わせなくともつながりができるようになりました。東日本大震災をはじめとした大災害が頻発する近年、人と人とのつながりを重視する傾向がシニア層でも増えているといいます。その分「つながり疲れ」という現象も起きて「おひとりさま」を選択する人も増えていると。一見矛盾する、相対する価値観が共存している。

 

この項目がとても一番時代をとらえるものだと思います。個人主義が横行しているようで無償で情報を提供してくれる、ということを目の当たりにするからです。これはグループで二極化するのではなく、同一人物の中に2つの志向が共存していると感じています。

 

 

この本は1万人という膨大な人数から調査をマーケティングに活用するために書かれています。消費行動を理解するだけでなく、世代間のギャップや考え方の推移もみることができます。私は臨床に活かすようにデータを見ていきます。

 

甲野 功

 

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