～台風１９号耐記～

 

今も台風１９号及びその前の台風１５号による災害を受けて苦労している皆さんの一日も早い復旧と、日常が戻ってくることを願っています。

 

史上最強、１０００年に一度、世界が注目する、といった形容詞が躍った超大型台風１９号が先週末日本を襲いました。数日経過した現在も被害状況は完全に把握できておらず、拡大する可能性があります。

 

この台風１９号への対策には大変苦労しました。被害はほとんどなかった私がこう表現するのは失礼かもしれませんが、これだけ台風対策をしたことはありませんでした。

 

一月前に千葉県に大停電と家屋の破壊をもたらした台風１５号。あの時東京も深夜に強風が襲いました。私は寝てしまって実感が無かったのですが相当風の音がうるさかったそうです。あくる朝には折れた枝や落ちた葉っぱで家の前が緑色になっていました。週明けの月曜日、鉄道が大混乱している様を出張治療に行くことで経験しました。

そこから千葉県がだんだんと被害が大きいことが判明していきます。最初は成田難民だとか電柱が倒れた、家の屋根が飛んだといったものでした。しかし一向に復旧しない停電、断水がじわじわと大災害になっていきました。メディアも当初そこまで被害が大きくなるとは思っていなかった節がありました。

 

そして一月後。１５号を超える台風が発生し、日本に近づいていると報道がありました。
１５号のこともあり注意深く情報をチェックしていました。当初は日本に上陸せずに大陸側に行くと予想されていたのですが、日が経つにつれて日本に向く進路予想に変わっていきました。体育の日を含む３連休に関東に最接近する可能性が出てきました。

３連休の最終日１０月１４日（月）体育の日に開催を企画してるチャリティーマッサージはどうなるのか？という懸念がありました。
この頃はまだその程度の認識でした。

週の半ば水曜日にはとてつもない規模で大変なことになるという報道が目立ってきました。

木曜日には関東最接近は１２日（土）から１３日（日）になりそうだと。これならば１４日には影響がなさそうなのでチャリティーマッサージはできそうだなと少し安堵しました。反面台風の規模が前代未聞で最大限の注意をしなければならないという感じになってきました。夕方近所のスーパーを除くと水が売り切れていました。

 

金曜日には東京都新宿区に最接近するのは１２日土曜日の夜９時頃というのは確実になり、台風対策をしっかりしなければ危険ということがしきりに報道されて、千葉のこともあるのでさすがに準備が必要だと実感しました。
幸か不幸か金曜日の朝に自宅から一番近いスーパー「まいばすけっと」がオープンしました。次の日オープンだったら悲惨だろうなと思いつつも、開店したばかりの「まいばすけっと」に行きました。当然ながら品揃えは完璧で水や非常食を買い込むことができました。
そこから別のお店に移動して（懐中電灯は売り切れていたので）簡易LEDライトに（養生テープも売り切れていたので）ビニールテープを購入しました。キャンドルやライターはあじさい鍼灸マッサージ治療院に大量にあるので買うものはそれくらいで済みました。

 

金曜日の日中、鉄道の計画運休が発表されて日曜日の各種イベントの中止が発表されるようになりました。そのような状況で治療院や自宅の窓にテープを貼って補強する作業に追われました。こんな事をするのは人生で初めてでした。雨戸が無い窓には段ボールを張り付けて補強。パソコンやプリンターといった電化製品を窓から離して紙のリーフレットなどを押し入れにしまいました。窓が割れて雨が入る前提で対策です。

そして土曜日の午前中に予約が入っていた患者さんには連絡してキャンセルしてはどうですか、と提案しました。大雨になることは確実ですし、来られても電車が止まって帰れない可能性もあります。予約をこちらから断るようにお願いするのは初めてのことでした。患者さんの安全を考えると目先の売上などを考えるよりも重要だと思いました。

 

１０月１２日の土曜日。雨戸も完全に閉めて完全防備で長い一日が始まりました。

朝からスマートフォンから緊急速報が鳴りました。普段音の出ないマナーモードにしているのに警報が鳴ったので驚きました。豊島区からレベル３の避難指示。こんな経験は初めてです。テレビをずっとつけていると台風関連の情報が続きます。レベル５の特別警戒が出るかもしれない。ダムが満杯になって放流するかもしれない。命を守る行動を取ってくださいと連呼しています。

 

我が家の割と近くには神田川と皇居外堀があります。１０年くらい前のゲリラ豪雨では神田川が氾濫して江戸川橋の地蔵通り商店街が床上浸水したことがありました。午前中には母校東京理科大目の前にある外堀にあるカナルカフェは浸水したと情報が入ってきました。最接近するのは夜９時なのに大雨の被害がどんどん深刻になっていきます。

幸い自宅も治療院も土地が高い場所にあるので浸水の心配はほぼありません。それでも知り合いや患者さんが水害に遭われる可能性があるので心配でした。特に神田川がいつ溢れるか時間の問題という感じ。私が子どもの頃、高田馬場は洪水状態になることがありましたし。

 

心配疲れで少し横になって休んでいました。荒川が氾濫する可能性があり、練馬区・荒川区に避難指示が出たとスマートフォンの緊急警報で起こされるのですが。その後は大量に味噌汁を作りご飯を炊いて電気が止まってもいいように料理をしておきました。

 

夕方ごろになると水を貯めておいてと妻に言われ、下水が逆流しないようにとお風呂の排水溝に水嚢が置かれました。当然ながら風呂には水が満タンにためています。
雨はどんどん強くなり風も強さを増してきました。自宅では２か所雨漏りが見つかりました。夜９時のピークに向けてこれは本当に避難する可能性もあるなと危機感が募ります。

 

雨は平気でしょうが風によって電柱が倒れて停電になること、窓ガラスが割れることが心配でした。最近の気象データは正確なので予想通りの時間に台風が通過するはず。
夜８時半くらいから緊張が高まり、９時台はとにかく風が弱くなることを願っていました。

 

高齢者の両親に小さな子ども。非難するよりも自宅待機の方が安全だと思いますが、万一窓が割れたときはどうしようという不安。また千葉県のように停電が起きて復旧に時間がかかるとしたらどうなるか、という気持ちもありました。

 

夜１０時頃には嘘のように雨も風もおさまってきました。小雨になったので治療院に行って中を確認します。何も変わったことはなく、窓から離しておいたレイアウトのまま。胸をなでおろしました。

 

 

翌１３日日曜日は風が強いながらも晴天でした。台風一過というやつです。自宅や治療院の窓からテープを剥がし風呂の水を抜きました。雨戸をあけると外は何も変わらない風景でした。前回台風１５号のときに弱い枝や葉は全て落ちてしまったのでしょう。綺麗なものでした。
あれほど準備して心配したのに被害はほとんどありません。午後から娘とローラースケートに行き、夜はラグビーワールドカップをテレビ観戦しました。

 

 

 

 

 

その何もなかったような日常の裏で各地の被害は大きくなっていました。

 

川の決壊。避難所トラブル。新幹線の水没。各地で甚大な被害がありました。
特に個人的に大好きな観光地箱根では観測史上最大雨量を記録し、芦ノ湖は溢れて箱根登山鉄道は年内復旧は不可能と言われるほどの被害を受けました。
まだまだ各地の被害状況は全容が掴めないのではないでしょうか。

 

反対に先人達の治水事業で被害が抑えられた事例が判明しました。

神田川は新しい施設に放流したことで水位を下げることに成功。
試験使用の八ッ場ダムが守ってくれた。
ラグビーワールドカップが行われたスタジアムが貯水池として守った。

このような大災害がなければ注目されなかったような国の事業もありました。

 

本当にたまたま私は台風被害がなく終わりました。１４日には毎年恒例のチャリティーマッサージを開催することができました。

これまでに起きた東日本大震災、熊本地震、西日本豪雨、大阪の台風、先の台風１５号の千葉県災害。どれも同じ国ですが他人事であった感じです。しかし今回の台風１９号災害は当事者意識があります。運よく影響を受けず、対策の手間と不安な一日だけ済みました。間違いなく幸運で、もしかしたら停電、避難、雨漏りといった苦労を被ったかもしれません。
この日常と幸運に感謝し、同じく台風に耐えて被害に遭われた方へ寄付をしようと決めました。チャリティーマッサージの収益金に合わせた金額を寄付します。

台風がくる直前に停電を想定して現金を多めにおろしていました。台風被害に遭って使ったと割り切ってこのお金を寄付します。微々たる金額ですが同じように台風に耐え忍んだ人の手助けになればと思います。

 

この台風対策で大きな心境の変化がありました。防災対策をしっかりすることを気づかされました。

 

甲野　功

 

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