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~ハトマ。講演 ジェネレーションギャップは何が生んだ?~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 ハトマ。講演 横山先生と松田先生
ハトマ。講演 横山先生と松田先生

 

 

もう一週間前になります。関東鍼灸専門学校で行われた「ハリトヒト。マーケット(通称:ハトマ。)」。のようなイベントでした。3つ行われた講演で、最後の題目がこちら。

鍼灸業界のジェネレーションギャップ/鍼灸師:横山奨先生&松田博公先生

 

恥ずかしながら私は松田先生のことをWEBメディア「ハリトヒト。」のインタビュー記事で知ったのですが、その発言内容の鋭さに感心しました。
自分にしかできない「挑戦」(前編)/鍼灸ジャーナリスト:松田 博公

その松田先生のインタビューについて書いたブログがこちらです。横山先生は臨床家であり、鍼灸専門学校の講師も務め、研究を行う鍼灸師です。近々海外で日本鍼灸について講演する予定です。
オレを拒絶するようなら滅びればいいと思う/鍼灸師:横山 奨

 

松田先生は多くの鍼灸師を取材し『鍼灸の挑戦』という書にまとめ、鍼灸業界の問題を網羅した『日本鍼灸のまなざし』を出しました。横山先生は現在、日本鍼灸を研究しています。

このお二人が語る鍼灸業界のジェネレーションギャップとは何なのでしょうか。ジェネレーションギャップ。直訳すれば「世代間の差」でしょうか。だいたいあまり良いイメージで使われる言葉ではありません。最近の若者はなっていない、と高齢者は愚痴をこぼし、今を知ろうとしないで過去にすがる老害、と若者は切り捨てます。これがよくあるジェネレーションギャップの一般的な悪い面でしょうか。過去にどのような状況だったのかを学ぼうとしない。現在の状況を知ろうとしないで自分の活躍した時代で考えが止まっている。互いが「知ろうとしない」ことでまま生じる軋轢。そして、かつては上の世代から押さえつけられたであろう若者だったこと、時間が立てば下の世代が育ち自然と年寄り扱いされる未来を考慮しないこと。そういった発想力の欠如もジェネレーションギャップを生む土壌かと思います。互いの状況を「知らない」と認識したうえで相手を「知ろう」とすることである程度は埋められるギャップなのかと私は考えます。生きた時代、体験したことが異なるので完全に埋められるとは思いませんが。

 

横山先生と松田先生の対談を聞いて、私がお二人のジェネレーションギャップを感じたのは鍼灸専門学校に対するものでした松田先生は「ハリトヒト。」インタビューで日本の鍼灸業界が抱える問題の一つに「鍼灸学校バブル」を挙げていました。当日の発言にも現行の鍼灸専門学校のシステムに苦言を呈していました。対して横山先生は「職業としての鍼灸師」という言葉を使い、その後の発言からも仕事や経営といった職業人としての鍼灸師を感じさせました。松田先生は<生き様としての鍼灸師>という感じで語っている印象があり、学校に入ったから全員が鍼灸師になれるというのは違うという旨を語っていました。横山先生は経営セミナーのことを挙げたりして、<仕事として成り立つ>ことも考慮していたように感じました。

 

「鍼灸学校バブル」ということについて説明を加えておきます。業界では通称「福岡裁判」と言われる、柔道整復師養成学校が新設されないことを不服とし、職業選択の自由を妨げていると、ある団体が裁判を起こし国に勝訴しました。これにより新設することができなかった柔道整復師養成学校が爆発的に増えることになります。同様に規制がかかっていた鍼灸師養成学校もどんどん新設されることになります。なおあん摩マッサージ指圧師に関しても今も新設することに規制があり増えていません(視覚障害者を守る理由で)。福岡裁判以前からあった学校を「伝統校」、それ以後にできた学校を「新設校」と区別する業界用語があります。新設校の急激な増加を「鍼灸学校バブル」と松田先生は称しているはずです。それによって横ばいだった鍼灸師の数は平成14年あたりからどんどん増加していきます。

はり師試験合格者数と鍼師数の推移 厚生労働省より
はり師試験合格者数と鍼師数の推移 厚生労働省より
きゅう師試験合格者数と灸師数の推移 厚生労働省より
きゅう師試験合格者数と灸師数の推移 厚生労働省より

 

 

それにより日本の鍼灸業界は大きく変わったと言えます。内原先生パートの講演<鍼灸教員が学校では伝えきれないこと>にも関連しますが、鍼灸専門学校の状況も大きく変化したはずです。そして現在は鍼灸学校の募集停止、閉校が出てきています。鍼灸師自身も新しい分野に挑戦して、需要を掘りこさないと生き残れなくなってきたことでしょう。また新卒の鍼灸師の数もピークは過ぎたと言えます。

今回、お二人の対談を聞いて、そして午前中の内原先生の講演を踏まえて、鍼灸業界のジェネレーションギャップは「鍼灸専門学校の増加」が生んでいるのではないかと考えました。良い面、悪い面、双方にあるでしょうが。どちらも大元はここだと思っています。あと10年もして、令和元年の東京オリンピック前夜の鍼灸業界は何だったのだろうか?と議論するときが来るでしょう。あの時代が鍼灸WEBメディア「ハリトヒト。」を生んで、ハリトヒト。マーケットを開催するに至った要因だった、と語られるのでしょうか。

 

甲野 功

 

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